ビルドアップvsプレスでプレスが強い理由①
「サッカーってパス回しが魅力なのに…」
「あのときのバルサのサッカーが好きなんだよね!」
なんて声も聞こえてくるほど、現代においては「パスをまわしてボールを前進」することを防ぐ、それどころか奪う「プレス」が優位に立っています。どうして、パスを中心としたサッカーが変化してしまったのでしょうか。その最大の理由は、「予測の精度」と「物理的制限」の逆転にあります。
パターン化
かつてビルドアップは、相手を動かしてズレを作る「能動的なアクション」でした。しかし、配置(ポジショナルプレー)の概念が一般化したことで、ビルドアップから前線にボールを届けるためのルートはある程度パターン化されました。
「ここに立てばここが空く」というセオリーが明確になった結果、守備側はその「次の一手」を予測するのではなく、立ち位置によって「誘導」できるようになりました。奪う側は、ボール保持者が次にどこへパスを出したいかを知っています。なぜなら、保持者が「教科書通り」にプレーしようとするからです。守備側はあえて特定のパスコースをあけておき、そこへボールが入った瞬間に網をかける「プレス・トラップ」を仕掛けます。
ビルドアップ側が論理的・教科書的に動けば動くほど、守備側にとってその行動は読みやすくなるというパラドックスが生じているのです。
アスリート能力の向上
物理的な側面も見逃すことはできません。近年のサッカー界全体で見られるアスリート能力の向上により、選手がカバーできる範囲が広がりました。ビルドアップ側が足元でボールをこねる1秒の間に、プレス側は2~3メートルの距離を一気に詰めることができます。思考の論理化が進んだ一方で、身体的な圧迫がそれを上回った。これが「プレス強者」時代の正体です。
プレスの方が仕込みははやい
サッカーにおけるビルドアップの構築は、例えるならば「オーケストラの指揮」に似ています。味方同士の11人が頭の中で共通の絵を描き、ミリ単位の立ち位置とタイミングを合わせなければなりません。
一方で、プレスは「狩り」と言えるでしょう。ビルドアップを完璧に機能させるには、以下の要素を同時に成立させる必要があります。
・保持者のキック精度と判断力
・受け手の予備動作(マークを外す動き)
・周囲のサポート(ひし形・星型・三角形の形成)
・相手のプレス強度に応じた可変
これらをチーム全体に浸透させるには、膨大なトレーニング時間と、実戦での「失敗の積み重ね」が必要です。しかし、プレスは異なります。プレスには「基準点」があります。
「ボールが出たら寄せる」
「誰が誰を捕まえる」
というタスクが明確であり、ビルドアップに比べてチーム全体で合わせなければならないシンクロ率の難易度が低いのです。
情報量が増えたことは、守備側に「何を破壊すればいいか」のチェックリストを与えたことと同義です。ビルドアップの構造が分かれば、その構造に一つでもエラーを発生させるだけで全体を機能不全に陥らせることができます。「作る」苦労に対して「壊す」理屈がシンプルであるため、プレスの仕込みはビルドアップよりも圧倒的に早く完了します。
【宣伝】みたいな話も入っている書籍
書籍の宣伝だけをしたいわけではないんですが笑
ただ、やっぱり、今回のビルドアップvsプレスも含めて、以前とはサッカーの質や内容が変わってきているんですよね。
5人交代制という大きなルール変更からも数年経過していますが、ポジショナルプレーの一般化に伴う、パスルートの封鎖網構築というのはかなり大変化だと思います。プレスで封鎖もそうですが、サポートの質を高めたり、封鎖網の裏をかくパスルートの構築などをおこわなければ、ビルドアップがうまくいく確率はかなり下がっています。
ファッションのトレンドのように、戦術やフォーメーションのトレンドはぐるぐる変化していますが、選手や監督・コーチたちが試合中に対応しなければならないIQ的な面は年々レベルが上っています。
サッカーを”学ぶ”という考えは、我々、ファンが趣味で見る上では必要な意図の考えもあるかもしれません。ただ、プレーの質や判断の質がせっかく向上して興味深いものになっているのに、我々ファンがその高まり続けるサッカーの質を享受できないままでいるのはもったいない状態です。
食に対して、材料やシェフのバックボーン、作り方への理解を深めるのと同様、サッカーに対しても学んでみるというのは、今後の観戦の時間をより興味深いものにできるのではないでしょうか*
ぜひ、書籍もお手にとってみていただけたらと!
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