Archive 009|午前1時の写真館
The Photo Studio After Midnight
写真館の前を通ったのは、午前1時を少し過ぎた頃だった。
シャッターは閉まっていた。
店の中も暗い。
もう何年も使われていない店なのかもしれない。
それでも、ショーウィンドウだけは残っていた。
ガラスの向こうに、
古い写真が一枚。
家族写真なのか。
記念写真なのか。
そこまでは分からなかった。
少し色褪せていて、
写っている人たちの顔もよく見えない。
ただ、不思議だった。
こんな時間に、
どうしてこの一枚だけ残っているんだろう。
近づいてみた。
ガラスに自分の顔が映る。
その向こうに写真がある。
しばらく見ていると、
写真の隅に小さな印があることに気づいた。
ウサギと星。
昨日見たものと同じだった。
その前にも、
どこかで見た気がする。
でも、思い出せない。
写真館の扉には鍵がかかっていた。
当たり前だ。
深夜1時なのだから。
だから、そのまま帰ろうとした。
そのとき。
ショーウィンドウの奥に、
もう一枚写真があることに気づいた。
最初は気づかなかった。
暗い店内の奥。
古い額縁の中に、
小さな写真が一枚だけ置かれている。
近づいても、
何が写っているのかは見えない。
ただ、その写真にも――
ウサギと星。
今度は、少しだけ怖くなった。
というより、
「これは偶然じゃないのかもしれない」
と思った。
でも、確かめる方法はない。
店は閉まっている。
写真の中身も分からない。
だから、その夜は帰った。
翌朝になれば、
きっと何でもないことになる。
古い写真館。
古い写真。
どこにでもあるような小さな印。
きっと、それだけだ。
……たぶん。
Noctomo Archive
夜の中には、
誰かが残したものがある。
私たちは、それを見つける。
すべての意味を知る必要はない。
見つけたという事実だけを、
ここに残しておく。
Collect the Quiet Nights.

