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【三国志の話】【レトロゲーム】1980年代の三国志ゲーム(前編)

 本記事の主な内容は無料です。おまけの部分だけ、有料です。 

はじめに

 今回は、このマガジンで進めている「硬派な三国志ゲームを作る。」というテーマに関わる話です。


 いくつもの記事で書いているように、三国志ツクールは、コーエーの初期の作品「三国志Ⅱ」がベースです。

 その三国志Ⅱに登場する人物の数は、約350

 今思えば、それはものすごい数なのでした。

 同作の発売は1989年ですが、それまでにあった三国志のゲームは軒並み250人前後で、それを一気に上回ってきたのです。

逆に言えば、

 それまでのゲームでは、250人前後の中に「誰を入れて、誰を落とすか」を決めていたわけです。

 その選考結果を眺めることで、「それぞれが、どのような特徴のゲームを目指したのか」を知ろうという試みです。
 (サッカーの国別代表チームを見るような気分!)

1980年代を代表するゲーム一覧

 まずは、筆者が認識している限りで、1980年代のゲームタイトルを列挙してみます。

筆者調べ。カードゲームや、シミュレーションに分類できないゲームは除く。
(注)エポックの226は通常版147と拡張版79の合計。

バンダイifシリーズの三国志では、

 曹操そうそう劉備りゅうびなどの重要人物のみ、実名で登場したらしい。
 その他大勢の人物は「+2」など、能力値が書いてあるだけだったようです。

 後で出てくる「英雄三国志」の作者である今野千尋氏が、タクテクス誌39号にこのように書いています。
 (今のところ、これが筆者の手元にある唯一の情報源。)

 この『三国志』は、三国志のシミュレーション・ゲームにおける草分け的存在と言える。
 :
 英雄・武将コマには+2から-2までの能力があり・・・
 :
 英雄コマには一応8人の群雄の名前が記してあるが、武将コマには通し番号しか記されていない

タクテクス誌39号 p.52

 この文を見ると、個人名があるのは8人の群雄のみだった、ということになります。

 実はこの仕様は、ゲームの作り方としては至って妥当なものです。
 筆者がこちらの記事で考察しているところの「テンプレート武将」のことですから。

 今野氏も同じ意見でした。先ほどの続きがあります。

 武将コマには通し番号しか記されていないので、「三国志演義」の読者には物足りないかもしれない。
 しかし、これは時代や史実等の背景を無視した「実名武将のごった煮」を造るよりは、より合理的な考え方だと言えよう。

タクテクス誌39号 p.52

 つまり、ゲームとしては合理的な設計だが、推しキャラを見つけて楽しみたい人向けにはなっていない。

 そこに、二百人以上のキャラクターが登場するゲームが出てきた。

 そのインパクトは、特大でした!

光栄 三國志(1985年)

 この作品はデジタルゲームですから、ソフトウェア仕様による制約を受けます。
 8bit整数で表せる数は2^8(2の8乗)=256までなので、この作品の登場人物の数は255人になったようです。

 本作のテーマは、(筆者が考える限りでは、)「信長の野望」の中国版。
 つまり、「劉備が中国を統一するためのゲーム」です。

 「三国志演義」(以下、「演義」)のストーリーに沿って、劉備が安熹県の尉だった想定の一八九年のシナリオから始まり、益州を奪って三国鼎立が実現した二一五年のシナリオで終わる。

 つまり、劉備死後のシナリオがないのです。
 実際に、三国時代後半の人物が、極端に少ない。

 このことは、頭に入れておきたいところです。

エポック 三国志演義(1986年)

 この作品はアナログゲームなので、ソフトウェア仕様の制約はありません。

 ただし、箱入りボードゲーム製品として適切なコストやサイズ感、プレイヤーが管理しやすいコマの数など総合的な理由から、200人前後が適切という判断があったようです。

 この作品では、まず単体ゲームとして147人が入っていました。
 それでは物足りないという声があったらしく、後に拡張版(エキスパンションキット)で79人が追加されました。
 合計で、226人です。

 前述のタクテクス誌39号の記事には、このエポック(以下、EP)版の批評もあります。

 このゲームには4つのシナリオがあるが、うち「官渡の戦い」と「成都入城」の2つはヒストリカル(と言っても、たいていのプレイヤーは鰻の寝床のごとく線状にエリアを取るので、ヒストリカルには成り得ない)、残りはフリー・セットアップとなっている。
 :
 フリー・セットアップのシナリオの前にはお待ちかねの「桃園の誓い(*)」を行うことができる。これはシミュレーションという観点から見れば随分おかしいのだが、ゲームとしては変化に富んでいて優れていると言えるだろう。
 :
 ランダムな要素を余りに多く重ねてしまっているこのゲームが、ヒストリカルな結果を辿るということはまず有り得ない。

タクテクス誌39号 p.53-54
(*)5人の武将をランダムに引いてきてうち1人を君主、3人を臣下とする

 今野氏が主張するポイントは、「ヒストリカルな(史実通りの)展開にはならないよね」です。

 それは、そうでしょう。

 今野氏も評価している通り、フリー・セットアップ(の、「桃園の誓い」ルール)が面白い
 むしろ、そもそも、それが狙いだったと考えられます。

 ゲームのコンセプトとして、ヒストリカル・シナリオ(史実通りに配置する)がおまけであり、フリー・セットアップ(各人が自由に戦力を配置する)がメインだったわけです。

 そうすると、史実通りのバランスを保つ必要がない。
 地味なキャラクターたち、具体的には「五丈原以降に活躍する人物」とか、劉備曹操の対立軸から外れる「の人物」、戦場で派手な活躍をしない「後方任務の文官」などは、登場させるモチベーションが低くなります。

 このことは、頭に入れておきたい点です。

ホビージャパン 英雄三国志(1987年)

 この作品も、箱入りのボードゲーム製品です。

 はじめに、プロトタイプとして、旌旗蔽空せいきへいくうがありました。

この「旌旗蔽空」は、

 ホビージャパン(以下、HJ)社のゲーム専門誌タクテクスが募集したコンテストの受賞作で、同誌39号(1987年2月号)の付録となりました。

 EP版との差別化のため、ヒストリカル・シナリオのみにする。
 その結果、EP版で軽視された「地味なキャラクターたち」も多く入ってきた・・・のですが、「旌旗蔽空」の120人には、致命的な偏りが見受けられました。

 その考察は、別の記事で詳しく書いていますが、簡単に言えば「董卓とうたくの過大評価」です。

 董卓は三国時代の前に退場してしまう人物であり、彼の配下たちを多く採用した結果、三国時代後半の人物が不足することになりました。

 本作は、インパクトはあったものの、いろいろな点で、単体の商用ゲームのレベルにはなかったと思います。
 筆者は、別の記事では(失礼を承知で)試作品と見なしました。

 HJ社自身も同じ考えだったようで、同作をベースにして完成度を高め、別途単体ゲームとて発売したのが、この「英雄三国志」です。

「EP版=演義、HJ版=正史」か?

 おなじみの小説「三国志演義」は「事実七割、虚構三割」を目指したものだから、作り話が多い。
 史実通りの展開を目指すということは「演義ではなく、正史をベースにする」ということです。

 そのことは、先述のタクテクス39号の記事に、今野氏自身が、EP版の章には「演義の場合」、旌旗蔽空の章には「正史の場合」と副題をつけていることからも分かります。

 しかし、正史を題材にするということは、

  1. 呉の滅亡(西暦280年)までをカバーする

  2. 登場人物も、目安としては、『魏書』三十巻・『呉書』二十巻・『蜀書』十五巻という『三国志』の構成に近いバランスになる

  3. その中には、戦場には出ない文官たちも多く列伝されているので、彼らも重要人物として扱う

ということです。

 それらの課題を、クリアできたのか。

 少なくとも「旌旗蔽空」の時点では、今野氏自身も課題を認識していました。

 『旌旗蔽空』には5つのシナリオとキャンペーン・ゲームを設定し、董卓討伐に諸侯が立ち上がった時の189年から、諸葛亮の第4回北伐直前の230年までをシミュレートすることにした。
 今回はユニット数の関係で無視せざるを得なかったが、このシステムおよびマップは黄巾賊討伐時代から三国の滅亡時までシミュレート可能なので、機会があればそれらの時機のための追加ユニットを発表したいとも思っている。

タクテクス誌39号 p.56

 ということで、『英雄三国志』の発売という機会を得た今野氏が、正史をベースにするという課題とどう向き合ったのか。

 120人から245人に大幅に増えた登場人物の中身を見れば、答え合わせになるのではないかと思います。

後編では、

 これら三作品(光栄、エポック、ホビージャパン)の登場人物を比較します。

 誰がどの作品に登場して、どの作品には登場しないのか。
 そしてそれは、コンセプトに合っているのか、いないのか。

 などの視点で、感心したり、突っ込んだりしたいと思います。

ちなみに、

 「ナムコ 三国志 中原の覇者(1988年)」も人気が高い作品で、筆者も遊んだ記憶があります。

 ただ、「登場人物数が241」という情報のみで一覧は分からないし、そもそもシナリオが一つ(200年)だけなので、今回は比較対象から外しました。

おまけ

 AIに尋ねて自信満々に返ってきた答えが、実はウソだったということ(ハルシネーション)は、誰もが経験しているでしょう。

 今回「バンダイ三国志の武将数」についてAIに訊いたら、「分からない」という答えがほとんどでしたが、一つだけ、推測して答えてくれたものがありました。
 (正解はこの記事の上の方を確認してね)

合計:魏15 + 蜀13 + 呉12 + 群雄23 = 63名

「バンダイ ifシリーズ」 を精査した上で、Copilotが「実際のゲームに登場したであろう武将数」を推測した結果

 これは「実在した他のゲームのデータを引用したもの」ではなくて、「ifシリーズの設計思想を分析し、三国志SLGの定石を組み合わせて“最も妥当な構成”をオリジナルで再構成したもの」なのだそうです!
(創作ではなく復元だ、と言い張っております)

 この63名の能力値も作ってくれており、それはそれで、なかなか興味深い。

 筆者がAIと対話して作ったデータなので、著作権は筆者にあるとして、有料で提供したいと思います。

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貴重なお時間を使ってお読みいただき、ありがとうございました。有意義な時間と感じて頂けたら嬉しいです。また別の記事を用意してお待ちしたいと思います。