BIM義務化、世界はどこまで来た? ——日本・欧米・韓国・ベトナムの現在地
BIM義務化、世界はどこまで来た? ——日本・欧米・韓国・ベトナムの現在地
「BIM(ビム)」という言葉を、建設の現場でよく聞くようになりました。建物を、ただの図面ではなく、意味と情報を持った立体データで扱う仕組みです。いま世界では、このBIMが「やった方がいい」から、「やらないと、そもそも仕事を出せない」——つまり“義務”へと、静かに変わりつつあります。では、日本は? 欧米や韓国は? そして、お隣のベトナムは? 今日は、BIM義務化の世界地図を、ぐるっと広げてみます。
制度化で早くから動いたのは、ヨーロッパ
BIMの制度化で早くから目立ったのは、ヨーロッパでした。
早期の代表例が、フィンランドです。国有の不動産機関が2007年から、同機関のプロジェクトで、IFC(オープンな共通データ形式)に合うモデルを求めるようになりました。ノルウェーも、2010年ごろから、公共の建物でBIMを標準にしていきます。
大きく流れを決めたのが、イギリスです。2016年、国が発注する公共案件で「BIM Level 2」を要求しました。これが世界の潮目になった、とよく語られます。ドイツも続き、交通インフラを中心に、連邦レベルで、2020年に向けてBIM導入を段階的に進めました。
一方、アメリカは少し事情が違います。国全体で一律に義務化する、というより、GSA(連邦の調達機関)などの連邦機関や、州・発注者ごとに、要求が分かれている。取り組みの歴史は2003年からと古いのですが、「全国一律の義務」ではないのが特徴です。
それを支える、世界共通の“ものさし”
国ごとにルールがバラバラだと、海をまたいだ仕事がやりにくい。そこで重要になるのが、ISO 19650という国際標準です。BIMの情報を、どう管理し、どう受け渡すか。そのルールを世界でそろえたもので、もとになったのは、イギリスの取り組み(PAS 1192)でした。各国の制度や発注要件を考えるうえで、この国際標準が、重要な参照点になっています。
アジアも、かなり本気です
ヨーロッパだけの話ではありません。アジアも、本気です。
韓国は、2023年、国の担当省庁が、一定規模以上(およそ1,000億ウォン超)の公共案件で、BIMを必須としました。さらに「Rail BIM 2030」のような、2030年に向けたロードマップも描いています。かなり戦略的です。
そして、アジアで早くから進んでいたのが、シンガポール。2015年には、延床5,000㎡以上の新築建築プロジェクトを中心に、BIMでの電子申請が求められるようになりました。BIM標準や電子申請の整備が、早くから進んだ国、と言われます。
そして、ベトナムも動きました
ここからが、私がいちばんお伝えしたい話です。
2023年3月、ベトナムの首相が、BIM活用のロードマップ(決定258号)を承認しました。ざっくり言うと——公共投資・国家資本・PPPの大型案件では2023年から(対象は2025年からさらに拡大)、その他の資本(民間など)の案件でも、2024年・2026年と段階的に、BIMファイルの提出を求めていく、という内容です。
「これから伸びる国が、国として旗を立てた」。これは、市場が動き出す、大きなサインだと思います。
義務化は、対応ニーズを生みやすくなります。すぐにすべての案件がBIM化するわけではありませんが、ベトナムで建設に関わる企業にとって、準備を始める理由は、確実に増えてきています。
では、日本は?
日本も、止まっているわけではありません。国土交通省が進める「BIM/CIM」は、2023年度から「原則適用」となりました。原則、使いましょう——という段階まで来ています。(なお、ここでいうBIM/CIMは、主に土木分野の、国交省の直轄業務・工事の話です。建築分野のBIMとは、少し文脈が分かれます。)
ただ、世界のような「全案件でこの形式を義務」という一律のやり方とは、少しちがいます。日本は日本で、現場の実情に合った“独自の道”を模索している、とも言われます。良くも悪くも、まだ発展の途中、というのが正直なところです。

だから、いま「軽く」備えておく
地図にしてみると、流れははっきりしています。公共発注や大型案件を中心に、BIMを求める動きが、世界で強まっている。日本も、その流れの中にいる。そして、ベトナムのような成長市場も、動き出した。
大事なのは、その波が本格的に来る前に、身軽に備えておくことだと思います。いきなり高い機材と専門家をそろえなくても、まずは現場をスキャンして、必要な形でBIMにしていく——とくに既存建物や改修の現場では、Scan to BIMは、現実的な入口のひとつです。私たち One Technology Japan も、日本とベトナムの現場で、この“備え”を、できるだけ手軽な形にすることに取り組んでいます。もしよければ、onetech.jp をのぞいてみてください。
まとめ
BIM義務化、世界はどこまで来たか。欧州が早くから動き、アメリカは機関や発注者ごとに、韓国とシンガポールは本気で進め、ベトナムも動き出した。そして日本は、原則化まで来て、独自の道を歩いている。——地図に並べてみると、それぞれの「現在地」が、見えてきます。
制度の波は、たいてい、少し先に来ます。慌ててからではなく、余裕のあるうちに、小さく一歩。それができる人から、次の景色に立てるのだと思います。あなたの現場にも、ちょうどいいタイミングで、いい波が来ますように。
WHAT A WONDERFUL DAY TODAY!
出典・参考(国・地域別)
欧州(フィンランド・ノルウェー・独)/米国GSA の概観:BIM adoption across the world(Global Outlook, Medium)、geospatialworld「BIM adoption around the world」
英国(2016・BIM Level 2)/国際標準 ISO 19650:BSI(ISO 19650)、上記Global Outlook
韓国(2023・公共案件でBIM必須/約1,000億ウォン超/Rail BIM 2030):Global BIM Network(Republic of Korea)
シンガポール(2015・延床5,000㎡以上でBIM電子申請):BCA/CORENET 通達
ベトナム(首相決定 258/QĐ-TTg・2023年3月17日):Decision 258/QĐ-TTg 英訳
日本(2023年度・BIM/CIM原則適用/主に国交省直轄の土木業務・工事):Global BIM Network(Japan)、国土交通省「BIM/CIM」関連資料
※各国の制度は改定されることがあります。年次・対象範囲・数値は、公開時点で最新の一次情報をご確認ください。
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