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世界で勝てるGX_章別サマリー第1弾_プロローグ|脱炭素主義への変革|西和田 浩平

こんにちは、アスエネCEOの西和田です。

2025年12月に出版した著書『世界で勝てるGX -"脱炭素資本主義"が動かす、再エネ×AI主導の21世紀の産業革命-』おかげさまで発売以来、多くの方に手にとっていただき、たくさんの感想やご反響をいただいています。ありがとうございます。

そこで今回、感謝の気持ちも込めて、書籍の内容の一部をnoteで特別に公開していくことにしました🚀 書籍の中から選んだ章やインタビューを、読みやすく再編集したサマリーとしてお届けしていきます。

第1弾となる今回は、本書の全体像がつかめる「プロローグ」のサマリーです。GXとは何か、なぜ今「脱炭素資本主義」なのか? まずはここからお読みいただければと思います。

プロローグ:「“脱炭素資本主義”への変革」


1. 再エネ価格、日本は世界の10倍の衝撃

私が脱炭素やClimate Techや再生可能エネルギーに関する会社を起業したきっかけは、海外赴任中に日本と海外とのギャップを強く感じた出来事にありました。慶應義塾大学卒業後に総合商社の三井物産に入社。

大きな転機となったのがブラジルへの赴任とM&AでPMIを行うための出向です。出向先はEcogen Brasil Soluções Energéticas S.A.(エコジェン)という省エネESCO・分散型電源のサービス事業を行う会社当時三井物産が90%、東京ガスが10%で共同買収したブラジル企業社員200名ほどでほぼ全員がブラジル人、日本人は私を含めて3人だけ。ここでのPMI経験が原体験となっています。

三井物産に在籍していたのは10年半ほど。後半のほとんどは中南米の事業投資やM&A、欧米の投資業務に関わるなかで肌で感じたのは、3Dと呼ばれる「Decarbonization/脱炭素化、Decentralization/分散化、Digitalization/デジタル化」の大きな潮流と、テクノロジーが進歩する圧倒的なスピード感です。脱炭素や再エネに限れば、中南米では当時からすでに政府が補助金を交付する段階は終わり、急速に価格競争力のあるソリューションになっていた日本とは大違いでした。

特に納得できなかったのが再エネ価格の違いです。「なぜ日本はこんなに再エネの価格が高いのか?」――そこには日本独自の課題、商慣習とカルチャーの問題があると認識するようになりました。

2. 脱炭素で遅れる、日本の存在感低下に危機感

私が帰国した2017年ごろの日本では、1キロワット時(kWh)あたり太陽光で約20円。一方、メキシコや中東では2〜3円ほど、米国やブラジルでもおよそ3〜5円。日本の約10分の1だったのです。

どちらも中国製の太陽光パネルを使い、同じ発電のソリューションでした。その理由は、日本では太陽光発電に政府から高い補助金が交付されていたこと。当時は1kWhあたり40円前後の補助金が出ており、太陽光で1kWh発電するだけで約40円の収入を受け取ることができたのです。

補助金があったことで健全な価格競争が生まれず、下請けの多重構造ができあがり、むしろ価格が高止まりしていました。

現在、日本の太陽光の価格はかなり安くなりましたが、それでも1kWhあたり12〜20円ぐらいのレベルで、まだまだグローバルのレベルには達していません。

すでに半導体やIT、DXの分野で「世界における日本の存在感」は低下していました。それが脱炭素や再エネの領域でも繰り返されることに大きな危機感を抱き、特にクライメイトとデジタルテクノロジーの観点でグローバルと日本のギャップを埋めることに大義とチャンスがあると考えて、2019年にアスエネというClimate Tech、いわゆる気候変動×テクノロジーのスタートアップを起業したのです。

3. 太陽光×蓄電池無双の時代へ

太陽光発電には、太陽が出ていない夜や悪天候では発電ができないという課題があります。しかし、決してメインの電源になり得ないわけではありません。そのKEYとなるテクノロジーが蓄電池やデジタル・AIソリューションです。

日中は太陽光でできた電気を供給すると同時に余剰分を蓄電池に貯め、太陽が沈んでからは貯めた電気を供給することで、24時間安定的に使えるようになります。再エネの発電コストが既存のグリッドの電力価格と同等になる状態を「グリッドパリティ」、太陽光に蓄電池を合わせたほうが経済的になる状態を「ストレージパリティ」と呼びます。

米国の調査会社Bloomberg NEF(BNEF)や国際エネルギー機関(IEA)によると、2025年から2030年ごろになるといわれています。環境に良いだけでなく価格も安くなる――太陽光+蓄電池無双の時代は、すぐそこまで迫っているのです。

4. AI時代で再評価される原子力とガス火力

ただし、話はそう簡単には進みません。大きな問題の1つは電力消費量の拡大です。

従来のデータセンターでのグーグルなどの検索システムと比較して、生成AIの電力消費量は数十倍〜100倍になるといわれ、GAFAMなどの巨大IT企業の間で安価で安定的な電気の奪い合いになっています。

再エネだけでは2025年現在まだ完全な安定供給が困難なため、比較的安価なベースロード電源である原子力発電やガス由来の火力発電が再注目されています。

2024年9月、マイクロソフトが電力会社と20年間の電力購入契約を結び、スリーマイル島原子力発電所1号機に多額の投資をして再稼働させるというニュースが伝わってきました。

同発電所は1979年3月に2号機が重大な事故を起こし、残った1号機も2019年に稼働を停止していた発電所です。この1号機に安全対策を施して2028年に再稼働させ、つくった電気を20年間データセンターに供給します。

他にもアマゾンがタレン・エナジーの原子力発電所から、グーグルもカリフォルニア州の小型原子炉(SMR)からの電力購入を世界で初めて合意しています。日本でも2025年7月、関西電力が福井県の美浜原発の敷地内で、次世代型原子力発電所の新設を検討するため地質調査の再開を表明しました。

再エネが理想的なのは言うまでもありませんが、技術や蓄電池が発展途上である今、安定的に発電でき発電時にCO2を排出しない原子力発電、化石燃料の中では相対的にCO2排出量が少ないガス火力発電が、現時点で最適な選択肢として注目されているのです。

5. SMRと核融合は国家安全保障技術

原子力発電というと、日本では2011年3月に起きた東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故が頭をよぎる人も多く、新設はもちろん再稼働のハードルすら高い。日本は解決すべき課題が他国より複雑な状況です。

しかし、2022年に勃発したロシア・ウクライナ戦争によって様相が少しずつ変わってきました。日本は火力発電の燃料としてロシア産の天然ガスにも依存していたのですが、世界情勢の変化によって、より危機感を持って自国のエネルギーは自国でつくること、エネルギー自給率をもっと上げないといけないと、はっきりと認識を強くしたのです。

国家安全保障、エネルギー安全保障のために他国への燃料依存を減らし、エネルギー自給率を上げなければなりません。現実的には既存の原発に最大限の安全対策を講じて再稼働すること、あるいは安全性と経済性に優れた「小型原子炉(SMR)」の新規開発や、夢の発電技術「核融合発電」の実用化が待たれます。原子力は、日本でもしっかり向き合わないといけない課題です。

6. 今ならまだGXで世界で勝てる

2019年の創業当時、再エネや脱炭素をテーマに事業に取り組むと説明しても、周囲の反応は正直言って鈍いものでした。

そんな日本人の認識を大きく変えたのが、2020年10月に当時の菅義偉総理が発した「カーボンニュートラル宣言」です。2050年までに日本国内の温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする〝ネットゼロ〟を世界に向けてコミットし、脱炭素やカーボンニュートラル、GXが「国策」となりました。

2025年現在ネットゼロを政策に掲げた、あるいは検討中の世界の国は約150カ国まで増加ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)に基づきスコープ3(サプライチェーン全体の排出量)の開示要件を導入済みか検討中の国も30〜40カ国まで増え、この大きな脱炭素の流れは不可逆的なものになっています。

日本はシンガポールやオーストラリアなどと共に、アジア太平洋地域では先頭集団を形成していると言ってよい。CO2排出量の可視化や削減のインセンティブを資本主義に組み込み、コスト競争力を持った脱炭素のメカニズムを全産業に実装する――これが今、世界が目指すグリーントランスフォーメーション(GX)です。

7. GXのグローバル潮流をつかめ

残念ながらDXの分野では諸外国に後れを取った日本ですが、今ならGXで日本は世界に勝てる、と私は確信しています。

日本も政府・経済産業省が主導する「GXリーグ」は2022年に構想を発表し、2023年4月から始動しました。企業による自社のCO2排出削減目標の設定、「GX-ETS(排出権取引制度)」によるインセンティブ、期限までに排出枠を償却できなかった場合に「未償却相当負担金」を支払う罰則規定などが盛り込まれた制度です。

世界経済フォーラムが毎年発表しているグローバルリスクでも、長期のリスクのトップ10のうち5つも気候変動の課題が挙げられています2026年も同様で、課題はむしろ深刻になってきている。

2025年にドナルド・トランプ氏が米国大統領に返り咲いたことで揺り戻しは確実にありますが、世界全体のカーボンニュートラルやネットゼロの課題や大きな潮流が変わるわけではありません。

8. CO2削減は企業価値の向上とコスト削減

数年前、アスエネのお客様でもある大企業の役員から、こんな話をうかがいました。

欧州出張で新しい取引先とビジネスミーティングをしたとき、先方から自社製品の製造時のCO2排出量を聞かれたものの、即答できなかった。帰国して直ちに排出量算出を指示したが、誰も正確な計算方法が分からず、最終的にアスエネにご相談がありました。

投資家からの要請や圧力も大きな要因です。気候変動対策に取り組んでいない企業は投資の対象にしないというファンドが、世界でも日本でも少なくありません。逆に積極的に取り組むことで、資金調達のオプションが増えて企業価値の向上につながります

価格がやや高くても環境に良いものを選ぶ「グリーン購入」の意識も高まり、CO2対策は単なるコストではなく、企業価値やブランドイメージ、国際競争力の向上につながるのです。米国のAppleや台湾のTSMCのような企業は、要請した基準に達しない場合は取引を停止すると公表しています。

実際、2025年には欧州の上場企業が、排出量の開示や削減の要請に応じなかった企業との取引を停止し、サプライチェーン企業を数万社から数千社に削減する事例が現実となってきています。

CO2削減に取り組もうとしない企業は、コスト削減の機会を失うだけでなく、投資機会や主要な取引先を失い、企業価値の低下、国際的な競争力を失うことに直結するのです。

続きは書籍と、次回のnoteで

ここまでが、プロローグ「"脱炭素資本主義"への変革」のサマリーです。

今後も、本書の中から選りすぐりの章やインタビューを順次公開していきます。ぜひフォローしてお待ちください。

「完全なFull Versionや続きを今すぐ読みたい」という方は、ぜひ書籍を手にとっていただけると嬉しいです。

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