銀紙色のアンタレス~夜に星を放つ~読書記録~直木賞受賞作⑧
アンタレス…蠍座のことです。星にまつわるエピソードが物語に素敵な”彩り”を与えてくれる窪美澄先生の直木賞受賞作であり、短編小説集「夜に星を放つ」の2篇目です。
※以下小説の内容にふれますので、ご注意ください。
高校一年生の夏休み、「真(まこと)」は、素敵な海が近くにある祖母の家へ泊まりに出かけます。真は獅子座生まれ、夏が大好きな少年です。
大好きな海に行ったある日の夕暮れ、海岸で出会った蠍座生まれの「たえさん」に一目惚れしてしまいます。「歩くん」という小さなお子さんを子守唄であやすその姿に、ほのかな哀愁と恋心を覚えるのでありました。実はたえさんは、祖母の友人の娘さん。偶然たえさんが祖母の家に訪問した際、その事実を知ります。
中学校まで同じ中学校に通っていた幼なじみの「朝日」という女子高生。以前この祖母の家にも遊びに来たことがあり、今年も真に数日遅れでやって来ました。祖母も、この朝日のことが大好きで、ふたりは実の祖母と孫のように接します。
ある夜2人で花火をしながら、真は朝日に想いを告げられます。
たえさんが心の中を埋め尽くしている真は
「朝日は大切な幼なじみだから」とやんわり断り、朝日は翌日自宅に帰ります。
ある暑い日、祖母が熱中症で倒れてしまいます。その時も偶然に居合わせていた、たえさんが機転をきかし、迅速に病院へ搬送。その後、祖母は順調に回復します。
退院が決まった日の夕方、たえさんと真は一緒に海に出かけます。夜になり、星を眺めながらたえさんは…
「あそこに見える星、あれってアンタレス?」
たえさんは急に空を見上げ、指を指して言った。東の空に強く光る星が見えた。銀紙のような光を払っている。
「あぁ、・・・あれは、アルタイルです。わし座の。アンタレスは南の方に見える赤い星ですね・・・蠍座の、ここからだと、よく見えないけれど」
夏の夜空に浮かぶ三つの星を結ぶとできる大きな三角形のこと。その一つが銀色のアルタイル。南の空の低いところに赤く輝く星がアンタレス。
「私は蠍座なの。蠍座は嫉妬深くて執念深いらしいね」 そう言って、たえさんは息を吐くように笑った。
たえさんは、夫の浮気が許せず、実家に戻っていたようなのです。
真の告白の後、しばらく二人で静かに星空を眺めた後、「ありがとう」…の言葉を残し、たえさんは幼い歩くんを連れて、再び夫の元に帰るのでありました。
男性であれば、年上の女性に想いを寄せたことがあるのではないでしょうか。
私は何度も失恋を経験しました。それでもひと時、想いを寄せたことがある人のことを今も大切に、懐かしく思い出すことがあります。
「銀紙色のアンタレス」を読了した昨夜の夢にも、ある女性が夢の中に出てきました。それも不思議な設定でした(笑)。人の深層心理についても、もう少し学びたくなるのでありました。
16歳の真にとって、この夏の経験はとても大きなものになったでありましょう。数年後の真、たえさん、朝日のことも知りたいです…窪美澄先生、いかがでしょうか(笑)。

