大根役者はいらない W杯で見たいのは世界最高の技術と一流のフェアプレーだ
いよいよサッカーワールドカップが始まる。
世界最高峰の選手たちが集まり,国の誇りをかけて戦う大会だ。私はサッカーが好きなので,今からとても楽しみにしている。一流選手たちのプレーを見るだけで胸が躍る。
しかし,試合を見ていて毎回すっきりしないこともある。
サッカーにはフェアプレーという言葉はないのだろうか
そんな疑問を抱く場面が少なくない。
例えばコーナーキックの場面だ。
ゴール前では平気で相手のユニフォームをつかみ,引っ張る選手がいる。テレビで見ていても明らかな反則に見えるのに,審判は笛を吹かないことがある。
また,競り合いのあとに大げさに倒れたり,いつまでも痛がったりする選手もいる。もちろん本当に痛い場合もあるだろう。しかし,明らかに時間稼ぎにしか見えない場面もある。
さらに,リードしているチームによる遅延行為だ。
なかなか立ち上がらない。ゆっくり歩く。ボールを遠くへ蹴る。
見ている側としては実に見苦しい。
アメリカンフットボールやバスケットボールのように時計を止めればよいのではないかと思うこともある。
もちろん,こうしたことにはサッカーなりの理由がある
コーナーキックでは攻守の選手がお互いに押し合い,引っ張り合っているため,多少の接触は「競り合いの範囲」として流されることが多いらしい。また,すべてを厳密に反則にすると試合が止まりすぎてしまう。
大げさなアピールについても,選手からすると「倒れなければファールを取ってもらえない」という事情があるという。
時計を止めないことにも理由がある。サッカーは攻守が絶えず入れ替わる「流れのスポーツ」であり,その連続性こそが魅力だという考え方だ。
なるほど,理由は分かる。
しかし,それで本当に良いのだろうか。
私には,これらはルール以前にモラルの問題のように思える。
審判が見ていなければ何をしてもよい。
審判をだましてでも有利な判定を得たい。
どんな手を使っても勝てばよい。
そんな考え方はスポーツの本質とは少し違うのではないか。
興味深いことに,今回のワールドカップに向けて導入された新しいルールの多くは,競技そのものを変えるものではない。
むしろ,フェアプレーに反する行為への対策と言える。
例えば,
ゴールキーパーの時間稼ぎに対する新たな罰則
主審に抗議できるのは原則キャプテンのみ
VARによる判定対象の拡大
交代時の遅延行為への対策
治療を利用した時間稼ぎへの対策
などが導入されている。
サッカー界自身が,「このままではいけない」と感じているからこその改正なのだろう。
こうしたルール改正そのものは歓迎したい。
ただ,本来であれば罰則がなくても守られるべきことではないだろうか。
スポーツ選手として。
いや,一人の人間として。
フェアであることは,ルールブックに書かれているから守るものではなく,自らの誇りとして守るもの
サッカーワールドカップは,世界で最も多くの人が注目するスポーツイベントである。
だからこそ,世界最高レベルの技術だけでなく,世界最高レベルのフェアプレーも見せてほしい。
華麗なドリブルや豪快なシュートに感動したい。
仲間のために走り続ける姿に胸を打たれたい。
大根役者の演技を見たいわけではない。
きな臭いニュースばかりが流れる世の中だからこそ,スポーツの世界くらいは,見終わったあとにすがすがしい気持ちになれるものであってほしい。
ワールドカップ開幕を前に,そんなことを思っている。
