なめてかかったボクシングジムで「ワンハンドレットマン」に鍛え直された話
これは、当時バギオ(フィリピン)で留学中の私が、友人から紹介されてボクシングジムに通った時のお話です。
紹介してくださった方は、私より年上のごく普通の女性だったこともあり、「女性でも通えるくらいだし、エクササイズ程度でしょ。私だってダンスもやってたし、イケる!!」
——この、完全になめきった気持ちで足を踏み入れたのが、地獄の入口だったことを、このときの私はまだ知りません。
初回・子鹿が生まれた日
エクササイズのつもりで、軽い気持ちでジムへ。
すると、初回からとんでもない量の筋トレが始まりました。ざっと覚えているだけで、こんな感じ…
両手に10kgのダンベルを持ってフロントランジ:100回
スクワット:100回
10kgのダンベルでフロントレイズ:100回
バーピー:100回etc…
もう一度言いますね。全部、100回です。
他にもいろいろやらされたはずなのですが、あまりに必死すぎて記憶が飛んでしまいました。人は本当に限界を超えると、記憶を保存する余裕すらなくなるらしいです笑
そうして足が完全に子鹿になった頃、「やっと終わった……」と息も絶え絶えにへたり込んでいたら、コーチがおもむろにグローブを取り出しこう言いました。
「リングおいでー(笑顔)」
(え……、まだやるの?)
本気でそう思いました。この時のコーチの笑顔が悪魔に見えたのは内緒です笑
子鹿の足で始まったのは、ミット打ち。3分1セットを、何本も。正直、どれがジャブでどれがフックなのか何も分かっていません。だって立っているのがやっとですから。ただ、コーチのミットに目掛けて、とにかく必死に腕を振り続けました。小鹿の足で笑
すべてが終わったころには、足がガクガクと震えていて、「よく無事に家まで帰れたな」というレベル。案の定、その後2〜3日は、階段の上り下りをするたびに激痛が走り、動きが完全にスローモーションになっていました。
断ったはずが、断れていなかった
初回が月曜。次の予定は、水曜でした。
この激しい筋肉痛の体で、またあれをやるなんてどう考えても無理。そう判断した私は、コーチにやんわりと、お断りの連絡を入れました。「すみません、ひどい筋肉痛で……今日はちょっと厳しそうです」と。
すると、返ってきた返事がこれです。
「OK!筋肉痛でもできるメニューにするから、おいで!」
……断ったつもりが、まったく断れていない。むしろ来る前提で話が進んでいる。スマホの画面を見ながら、私は二度目の絶望を味わいました。
2回目・悲鳴とともに気づいた、コーチのすごさ
泣く泣く、ジムへ。
「筋肉痛でもできるメニュー」として用意されていたのは、腹筋まわりを重点的に攻めるメニューでした。なるほど、たしかに足は使わない。でも普通にきつい。
そして途中、コーチが「これ、筋肉痛に効くから」と言いながら、ダンベルで私の足をゴリゴリとほぐし始めたのです。
これがもう、悶絶する痛さで。私は文字どおり、悲鳴をあげてしまいました。ジムに来ていた人が驚きながら私を見ている中、涙する私。あの痛さはいまだに覚えています笑
ところが、不思議なことにそのゴリゴリのおかげで、翌日からは嘘みたいに普通に歩けるようになっていたんです。あんなに上り下りが苦痛だった階段も、スイスイ。
「コーチ……すごい……」
痛みと引き換えに、私はプロ(コーチ)の凄さを知りました。
ワンハンドレットマンの誕生
とにかく何をやるにも「100回」。筋トレは基本全て100回。「〇〇100回やっといてー」が口癖の方でした。
あまりのスパルタぶりに、私たちはいつしか、コーチのことをこう呼ぶようになりました。
「ワンハンドレットマン」(100回の男)。
あれだけしごかれれば、もはや畏敬の念すら湧いてきます笑
ちなみに、その後しばらく通ううちに、コーチも私の筋力のなさをだんだん理解してくれたようで、メニューはずいぶんと優しくなりました。最初の「100回×無限」は、新人へのウェルカム・ショックだったのかもしれません笑
おわりに・地獄には、なぜか中毒性がある
あんなに地獄のようなスタートだったのに。不思議なことに、私はこう思うようになっていました。
「休むのが、怖い」と。
なぜなら、一度でも間を空けたら、またあの初日レベルの筋肉痛からの再スタートになるかもしれない。あの子鹿の日々を、もう一度繰り返すなんて、絶対に嫌だ。
——その恐怖心が、逆に私をジムへ通わせ続けたのです。地獄なのに、休めない。地獄なのに、通ってしまう。人間の心理とは、よくできているものです。
なめてかかって、盛大に返り討ちにあったボクシングジム。
一体何を目指していたのかは謎ですが、ワンハンドレットマンにしごかれた日々は、今ではすっかりいい思い出です。(ちなみに、日本に帰ってきてから一度も筋トレをしなかった結果、あれだけ鍛えた筋肉は脂肪へと変わりました笑)
海外滞在記、これからもゆるゆると書いていきます。よかったらまた読みに来てください。
