私の人生の半分を知っている、オーブンとパウンド型
私のキッチンには、長年連れ添った2つの大切な道具があります。
「リンナイ ガスコンベック RN-006CZ」という1996年製のガスオーブンと、30年以上使い続けているブリキのパウンド型です。
目の病気、緑内障がわかり、何度か手術を繰り返したものの、いずれは見えなくなるだろうと言われました。
お菓子作りが好きだった私は、見えなくなる前にどうしても好きなことをしたくて、主人に頼み込んで、パンやケーキ教室に通わせてもらいました。
当時は、長男が6歳、次男が1歳くらいだったと思います。
そもそも私がお菓子作りに興味を持ったのは、高校生の頃に森村桂さんの小説『天国に一番近い島』を読んだことがきっかけでした。
その本の中で主人公が出会う「カトルカール」というパウンドケーキに、ものすごく心を惹かれたのです。
結婚や出産を経て、念願の教室に通い始めた私は、そこで推奨されていたオーブンとパウンド型を購入しました。
特にオーブンは、当時10万円もする、我が家にとってはとても高価な買い物でした。
こちらも主人に頼み込んで、半ば強引に買ってもらいました(笑)
それからは、何度も何度もパンやケーキ作りに挑戦しました。
当時は社宅に住んでいたので、ママ同士の集まりがある時には、必ず手作りのケーキを持参したものです。
そして十数年が経った頃、年月をかけて徐々に視力が落ち、全く見ることができなくなりました。
見えづらさから、今までできていたことができなくなり、そんな自分が許せない日もありました。
子どもたちに怒鳴ってしまうこともあり、今となっては、取り返しのつかない後悔ばかりが残っています。
そして、大好きだったお菓子作りも、すっかり諦めてしまいました。
道具のほとんどを処分し、オーブンも粗大ゴミに出そうとしました。
しかし、何しろ30キロもある重いオーブンだったため、捨てることもできず、キッチンの横に置かれたままになっていました。
それから何年もの月日が流れ、息子たちも家族を持ち、孫が生まれました。
2024年のお正月に、還暦のお祝いでiPadをプレゼントされた私は、操作に慣れていくうちに、ChatGPTでレシピを検索するようになっていました。
去年の夏前、まだ2歳だった次男の孫が、ぞうさんとバナナが大好きだと聞きました。
「そのバナナで、ケーキを焼いてみようかな」
そう思った瞬間、もう一度ケーキを焼いてみたい気持ちが湧き上がってきました。
作るのは、もちろんバナナケーキです。
お菓子作りをやめてから随分と年数が経っていたので、焼き加減などはすっかり忘れていました。
けれど、なぜか使っていない間も時々掃除をしていたオーブンと、奇跡的に処分を免れて残っていたパウンド型がありました。
次男の孫が好きなバナナ。
手元に残ったオーブンと型。
パウンドケーキを焼くためのストーリーが、見事なまでに揃っていました。
久しぶりに使ってみると、ガスオーブンとブリキ型のコンビは、思いのほか「暴れん坊」でした。
熱が素早く強力に伝わるため、レシピに書かれている通りの温度設定や焼き時間では、うまく焼けないのです。
何度も焼いては調整を繰り返し、少しずつ教室に通っていた頃の感覚を、取り戻していきました。
オーブンが古いのは百も承知です。今時丸いつまみで、温度や時間を合わせるようなアナログなものはないと思います。
それでももう買い換えることはないと思います。
あと少しケーキ作りを楽しんだら、きっと「オーブンじまい」をするはずです。
私の人生の半分を共に歩んでくれた、大切な道具たち。
一時期は一切使わない時期もありましたが、自分なりに大事にお手入れをしてきました。
今年の5月、5年に一度のガス機器の法令点検を受けた際、点検員さんから、
「綺麗にお使いですね。ガス屋泣かせですよ」
と褒めていただきました。
奇跡的に残ってくれた道具たちと一緒に、こんな嬉しい言葉をもらえたことが、本当に誇らしくて嬉しかったです。

・バナナ 2本
・薄力粉 120g
・ベーキングパウダー 3g
・バター 60g
・太白ごま油 30g
・きび砂糖 80g
・たまご 2コ
・ヨーグルト 20g
(焼成)
170度余熱、160度38分で焼き上げ。
*私のバナナケーキは、バターとオイルのw使いがポイント!水分の多い配合なのでベーキングパウダーの働きを助けるために、ヨーグルトも入れます🥣
バターのコクと太白ごま油のしっとり感、ヨーグルトの爽やかさが絶妙な黄金比レシピです🍌
