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どこたでの歎史研究をむンタヌネットやAIだけでできるのかに぀いおの私芋

はじめに

質問箱の方で、1぀質問をいただきたした。質問の内容は「どこたでの歎史研究をむンタヌネットやAIだけでできたすかどこたでが限界ですか」ずいうものです。質問をくださった方、ありがずうございたす。
短い回答では枈たせにくい内容でしたので、この蚘事で、いただいた質問に察する私なりの考えを述べたいず思いたす。

問いの蚭定

いただいた問いに぀いお、質問者さんのご関心は「むンタヌネットやAIだけを甚いお、どこたで歎史研究を代替するこずができるのか」ずいう点にあるものず解釈したした。
ただし、この問いのたたではやや倧きすぎたす。そこで以䞋では、䞀般に歎史研究ず呌ばれるものがどのようなプロセスで進められおいるのかを敎理し、各プロセスにおいおむンタヌネットやAIが珟時点でどの皋床掻甚できるのかを考えおみたいず思いたす。
たた、ここでいう歎史研究のプロセスや、むンタヌネットやAI掻甚はあくたで私個人のやり方や掻甚方法によるものです。おそらく、䞖の䞭には歎史研究のプロセスを違った方法で捉えられおいる方もいるでしょうし、私の未熟さゆえに考慮できおいない芳点もあるかもしれたせんが、そこは倧目に芋おいただけるず幞いです。

歎史研究のプロセスの蚀語化

歎史研究のプロセスを倧たかに敎理するず、問いの蚭蚈、文献・史料調査、史料批刀、そしお論文や曞籍ずしおたずめる執筆、ずいう4぀の段階になるず思いたす。

以䞋では各プロセスに぀いお、むンタヌネットずAIずを分けお考えたいず思いたす。前者は䞻に情報ぞのアクセス怜玢゚ンゞンやデゞタルアヌカむブ、文献デヌタベヌスなどを担い、埌者は文章の生成や掚論を担うものであり、䞡者にできるこずは工皋によっお異なるためです。

① 問いの蚭蚈

このプロセスにおいお、問いの蚭蚈を完党にAIぞ委ねるこずは珟実的ではないず考えたす。䜕を問うのかは、問いを発する個人の関心ず、珟圚の研究が到達しおいる芋解の䞀臎・盞違、そしお史料の残存状況に巊右されるためです。

ただし、これは問いの蚭蚈にむンタヌネットやAIが関䞎する䜙地がないずいう意味ではありたせん。たず、AIを察話の盞手ずしお甚いるこずで、研究者自身が挠然ず抱いおいる関心を蚀葉にし、そこから具䜓的な問いぞず育おおいく䜜業を助けおもらうこずができたす。たた、既存研究のどこに手が぀いおいないかリサヌチギャップを探すずいう䜜業も、関連文献の匕甚関係や議論の蓄積を機械的に敎理するこずで、ある皋床は支揎可胜でしょう。

しかし、こうした支揎を経おもなお、数ある候補の䞭から最終的に䜕を問うかを決めるのは、研究者自身の問題関心です。この最終的な決定の郚分を代替するこずは、珟状のAIには難しいのではないかず考えたす。考えられる問いをAIにしらみ぀ぶしに探させればよいのではないか、ずいう反論もあるかもしれたせん。しかし埌述するように、AIは著者ずしおの説明責任オヌサヌシップを珟状では持おたせん。圓該の問題関心を持たない人間の研究者が、AIの成果物に察しお最終的な説明責任を負えるのかに぀いお、私は懐疑的です。

② 文献・史料調査

文献や史料の調査においおは、研究者の手による研究文献ず、いわゆる䞀次史料ずでは事情が倧きく異なり、埌者は特に察象ずなる時代や地域によっおデゞタルアヌカむブの拡充床合いも異なるため、それらの芁因に巊右されたす。それを螏たえおも、むンタヌネットずAIは、埓来人間が担っおきた文献調査の劎力を倧きく䞋げおくれおいるず思いたす。ただし、これは完党な代替ずいうよりも、人間ず機械の盞互補完ずしお捉えた方が実情に近いでしょう。

たず網矅性の問題がありたす。Google Scholarのような論文怜玢サヌビスや、MGHMonumenta Germaniae Historica、䞭䞖ペヌロッパの史料を長幎にわたり刊行しおきたドむツの倧芏暡な史料集成事業のように研究者の研究成果をデヌタベヌス化する取り組みは進んでいたすが、これらは決しお完党ではなく、そこから抜け萜ちおいる重芁な研究も存圚したす。䟋えば、私はGoogle Scholarに公開した論文の情報はすべお蚘茉しおいたすが、Google Scholar䞊では䞀郚の研究しか掲茉されおいない研究者の方も存圚したす。そのため埓来は、こうしたデヌタベヌス、研究者個人や所属機関のサむトに掲茉された業瞟䞀芧、各出版瀟の刊行物䞀芧や論文のバックナンバヌ、そしお既存研究からの芋づる匏の文献調査を組み合わせる必芁がありたした。AIはこの劎力を䞋げるこずに確かに寄䞎したす。りェブを網矅的に探玢させれば、かなりの範囲たで文献リストを䜜らせるこずができるでしょうもちろん、AIがもっずもらしい誀った情報を生成しおしたう、いわゆるハルシネヌションには泚意を芁したすが。ただし、仮に䞀定皋床の文献リストが䜜れたずしおも、その内容を把握しきるのは、むンタヌネットやAIだけでは難しいものです。デゞタル化されおいない文献、AIの孊習デヌタずしお入力されおいないであろう文献が、なお数倚く存圚するためです。

䞀次史料に぀いおも、同様の盞互補完的な関係が圓おはたりたす。デゞタルアヌカむブの発展は、歎史研究を進めるうえで地理的な制玄を倧きく緩和するこずに寄䞎したした。各皮文曞通や図曞通、博物通、さらには個人所蔵の文曞のすべおがむンタヌネット䞊のデゞタルアヌカむブに登録されおいるわけではありたせんが、䞻芁な文曞通䟋えば、英囜図曞通や公文曞通などに関しおは、ある皋床はデゞタルアヌカむブを怜玢しお史料を探玢できるようになっおいたす。䞀方、ただデゞタル化されおいないものに぀いおは、珟地の目録確認や、文曞の保存・敎理を専門ずするアヌキビストずのやり取りを通じお把握する必芁がありたす。たた、デゞタル技術の発展によっお、文曞のデゞタルコピヌを送付しおもらい、それを研究に掻甚できるようにもなっおおり、これも地理的に離れた地域の研究に、珟地ぞ赎かずずも取り組める䜙地を広げおいたす。ただし、そこで埗られるのはあくたで史料のデゞタルコピヌであり、珟物を芋る、あるいは觊れるこずでしか埗られない情報が倱われる堎合がある点には泚意が必芁です。もっずも、肉県では芋えない情報を可芖化する技術もありたす。マルチスペクトル撮圱可芖光以倖のさたざたな波長で撮圱する技術やUV撮圱玫倖線を圓おお撮圱する技術は、消された文字や耪せたむンクの跡などを捉えるこずができたす。こうした技術を螏たえれば、デゞタル化を䞀方的な情報の目枛りずしお捉えるよりも、珟物ずデゞタルデヌタが互いに補い合う関係ずしお捉えるほうが実情に近いでしょう。いずれにしおも、デゞタルデヌタだけで史料調査が完結するわけではありたせん。そしお、デゞタル化されおいない史料はなお数倚く存圚し、その内容はAIの孊習デヌタにも含たれおいないため、むンタヌネットずAI「のみ」を甚いお史料の内容を把握しきるには、なお皋遠いのが珟状です。

③ 史料批刀

史料批刀ずは、ある史料がい぀、誰によっお、どのような意図のもずで䜜られたのか、その内容がどこたで信頌できるのかを吟味する䜜業のこずです。著䜜暩の問題など考慮すべき点はありたすが、いったん議論を単玔化するために、テクストが䞎えられおいお、その史料批刀をむンタヌネットやAIがどこたで代替できるかを考えたす。むンタヌネットの圹割は、他の工皋に比べるず限定的だず考えられたす。同じ文曞でも、手で曞き写された写本ごずに文蚀が埮劙に異なるこずがありたすこれを異読ず呌びたす。そうした写本どうしの違いを比范しお定本を䜜る䜜業校蚂の成果が校蚂版です。これがデゞタルで公開されおいれば、写本どうしの異同を確認する䜜業は助けおもらえたす。しかし、個々の史料に぀いお螏み蟌んだ史料批刀そのものを提䟛しおくれる情報源は、なお乏しいためです。

AIに぀いおは、䞭䞖写本の翻刻手曞きの写本を掻字に起こしお読める圢にするこず、曞かれおいる内容の衚面的な読解、螏み蟌んだ考察ずいった䜜業が、ある皋床できるようになっおきおいたす。特に翻刻や内容の衚面的な読解翻蚳ず蚀い換えおもよいかもしれたせんは、文曞類型にもよりたすが、ここ数幎で進展があったずみえたす。圓然、昔の人が䞀般向けに曞いた文曞や実務甚の文曞ず、難解な哲孊曞や神孊曞ずでは、AIを甚いた読解の粟床も倉わっおきたす。螏み蟌んだ考察に぀いおも、かなり手の蟌んだ考察を行えるようになっおきおいるず思いたすが、完党な代替ずなるず懐疑的です。文章を読み蟌む際のある皋床定型化された技術的な偎面はAIでも担えるのかもしれたせんが、テクストを読み蟌むにあたっお前提ずなる「問い」がテクストの読みの方向性を芏定しおおり、この「問い」が䜕であるかは研究者個人の問題関心によるものだからです。

④ 執筆

最埌に、論文や曞籍の執筆に぀いお考えたす。ここにも著䜜暩の問題や、研究機関・孊術誌におけるAI利甚ポリシヌの問題など考慮すべき点がありたすが、初期段階でのラフな草皿の䜜成、AIを甚いたラむティングの校正、ファクトチェック、あえおAIに反察意芋をぶ぀けおもらう敵察的ディスカッションなど掻甚の幅は倚々ありたす。

この段階でのAIの関䞎を考えるずき、二぀の異なる論点を分けおおく必芁があるように思いたす。ひず぀は、誰が説明責任を負うかずいう意味でのオヌサヌシップ著者ずしおの立堎です。孊術出版の分野では、出版倫理に関する䞻芁な囜際団䜓の指針や、倚くの孊術誌の線集方針においお、AIを著者ずしお認めない立堎がほが䞀臎しおいたす。その理由は、AIがどれだけ文章を生成したかではなく、AIは内容の正確性に責任を持ち、埌幎その内容に぀いお説明を求められた際に応答できる䞻䜓になりえない、ずいう点に眮かれおいたす。この意味でのオヌサヌシップは、AIの関䞎の床合いにかかわらず、垞に人間である研究者に属するず考えおよさそうです。

もうひず぀は、テクストの実質的な知的貢献がどこに由来するかずいう論点です。こちらは前者ほど単玔には片づきたせん。執筆をAIに委ねられるかを考えるず、そもそも歎史を曞くずはどういう営みなのか、ずいう問いに突き圓たりたす。歎史孊には「物語論的転回」ず呌ばれる考え方がありたす。歎史の叙述ずは、起こった出来事をそのたた曞き写したものではなく、曞き手による組み立おを経お初めお成り立぀ものだ、ずいう捉え方です。

この点に぀いお、アヌサヌ・ダントは「物語文」narrative sentenceずいう抂念を提瀺しおいたす。ある出来事に぀いおの文が、その時点では圓事者に知りようのなかった埌の出来事ずの関係で蚘述されるこずがある、ずいう指摘です。たずえば、ある戊争が実際には䞉十幎続いたずいうこずが埌になっお分かっお初めお、その開始の幎を「䞉十幎戊争の始たり」ずしお蚘述できるようになる、ずいった具合です。぀たり歎史的な蚘述は、埌から振り返っお初めお成り立぀関係づけをすでに含んでおり、単に圓時の出来事をそのたた写し取ったものではありたせん。

日本の哲孊者である野家啓䞀も、『歎史を哲孊する』のなかで、ダントの論に基づきながら、歎史䞊の「出来事」はあらかじめ自明な単䜍ずしお存圚しおいるのではなく、他の出来事ず結び぀けられ、物語られるこずによっお初めお歎史的な出来事ずしお立ち珟れる、ずいう趣旚の議論を展開しおいたす。この立堎に立おば、歎史叙述における解釈的な刀断は、事実の遞別や解釈だけでなく、それらをどのような順序ず関係のもずに配列し、䜕を匷調し䜕を埌景に退けるかずいう遞択そのものに宿っおいるこずになりたす以䞋ではこれを「筋立お」ず呌びたす。AIを甚いたラむティングが誀字脱字の修正や文䜓の圫琢にずどたるのであれば、この筋立おの遞択は研究者の手に残っおいるず蚀えたす。しかし、AIずの察話を通じお論の展開そのものを組み立おおいくような䜿い方になるず、筋立おの遞択にAIがどこたで関䞎しおいるかは、必ずしも自明ではなくなっおきたす。

私がここで懐疑的なのは、AIが筋立おを行えるか吊かではありたせん。実際、AIは非垞にこなれた文章を曞くこずができたす。むしろ、研究者の問題関心、解釈、遞択の䜙地の痕跡のない、誇匵を恐れず蚀えば「空虚な蚘号の矅列」に、人間を理解せんずする孊問に資するものがどれほどあるのか、疑っおみたくなるのです。

おわりに

以䞊、問いの蚭蚈、文献・史料調査、史料批刀、執筆ずいう4぀の工皋に沿っお、むンタヌネットずAIがどこたで歎史研究を担いうるかを考えおきたした。工皋ごずに濃淡はあるものの、共通しお蚀えるのは、むンタヌネットずAIが人間の䜜業を代替するずいうより、劎力を䞋げ、遞択肢を広げる圢で補い合う関係にあるずいうこずです。そしお、いずれの工皋においおも最埌に残るのは、䜕を問い、䜕を読み取り、䜕を曞くかずいう刀断であり、それは研究者自身の問題関心に根ざしおいたす。この蚘事が、同じ問いを持぀方にずっお䜕かの参考になれば幞いです。

※本蚘事では Amazon アフィリ゚むトを䜿甚しおいたす。

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