タイ半導体産業が育たない理由、中国マネー依存の代償

タイの半導体産業が思うように育っていない。就任1年を迎えたタイ首相の焦りの裏には、中国マネーへの傾斜という選択があった。

> ひと言で言うと、育成を急いで中国依存に走った結果、低成長から抜け出せなくなった。

この記事のポイント

・なぜタイは半導体産業を育てられなかったのか

・中国マネーに頼った構造的な理由

・日本経済新聞が指摘する低成長の本質

何が起きたか

日本経済新聞の報道によると、タイの首相は就任から1年、半導体産業の育成が遅れる中で中国マネーへの傾斜を強めている。タイ工業連盟は政府の半導体委員会と組み、 2050年 までの国産化を目指すと表明した。前工程への進出を狙うが、実態は低成長からの脱却が急務という焦りが背景にある。

なぜタイは中国マネーに頼らざるを得なかったのか

タイ政府内部の判断を見ると、半導体の前工程、つまりチップ製造の核心部分に自国企業だけで踏み込む技術力がまだ整っていなかった。工業連盟が政府と連携すると発表したのも、逆に言えば民間だけでは前に進めない証拠だった。

その間、実際に影響を受けているのはタイの製造業で働く人たちだ。周辺国のマレーシアやベトナムが半導体投資を呼び込む中、タイだけ出遅れる構図が続き、雇用の受け皿が広がらない状態が続いている。

規制や政策の観点で見ると、タイ中銀は新総裁のもと利下げの効果を様子見する段階にあり、金融政策だけでは産業構造の遅れを埋められない。政府の半導体委員会が前面に出てきたのも、市場任せでは間に合わないという判断があったから だと考えられる

業界全体の流れで見ると、ASEAN全体でサプライチェーンの存在感が高まる一方、中国は自国の製造能力を武器に東南アジア各国への投資を広げている。欧州でも中国依存を減らせば物価上昇という代償を払うという議論が出ているように、タイも中国マネーを切れない構造に入り込んでいる。

この構造、投資判断に読み替えると

私はコンサル時代、クライアント企業が「自前主義」を掲げながら結局は外部資本に頼らざるを得なかった場面を何度も見てきた。タイの半導体政策も同じ構図だと私は見ている。理念と現実の間に技術力のギャップがあるとき、資金の出し手を選べなくなる。

私が現場で学んだのは、育成計画の「年限」だけを見ても意味がないということだ。 2050年 という目標年より、その間に誰の資本が入り込むかのほうが重要だと私は判断している。

もうひとつ、私が注目しているのはタイ中銀の利下げ判断だ。金融緩和と産業育成はセットで語られがちだが、私はこの2つを別々の時間軸で見るようにしている。金利は数カ月で動くが、半導体の生産体制は10年単位でしか変わらないからだ。

北海道大学が半導体人材育成に本腰を入れる動きを見ても、私は「教育と資本、どちらが先に育つか」という競争が世界中で始まっていると感じている。タイの焦りは、この競争に乗り遅れた側の典型例だと私は捉えている。

半導体と地政学がどう絡み合うか、もう一段深く知りたいなら「日本型モノづくりの敗北」は産業構造の敗因を具体的な事例で追える一冊だ。


中国マネーは救いにも足かせにもなる、その境界線が今問われている。

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