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光の旅路

恋だった。

一瞬の濁りもなく。
惹かれていた。
いまも、運命を感じて。

俺はヒカルのことを可愛いと想う。
はつらつとした中に、
色香とは全く違う魅力があって。
きらきらした光が流れる中で、
その笑顔がいっそう輝いていて。

物心がついた頃からずっと一緒。
毎朝手を繋いで幼稚園に通い。
日が暮れる頃、笑顔で手を振った。

それから、
ヒカルは私立の小学校に入学した。
俺は近所の公立小学校。
だが、それでも毎日会っていたような気がする。

雨の日に、
俺の家でファイナルファンタジーをはじめた。
父さんの冒険を消すわけにはいかず、
ふたりで一つのセーブデータ。
あれこれ話し合いながら進めた。

物語にのめり込んだ俺達は、
俺の家のリビングで遊ぶ毎日を過ごした。

黒魔道士の秘密を知った日は、
ふたりで涙を零した。
少しだけ喧嘩も交えつつ、
苦労の末、最後を迎えると、
やさしい気持ちでいっぱいだった。

その日の帰りしな、
ヒカルが玄関で、
ありがとうと言っていたのが忘れられない。
染まった頬は、夕日のせいではなかった。

中学生になると、
ヒカルとはほとんど外で会うようになった。
もう家の玄関を上がることはなかったし、
俺も、ヒカルの家に行かなくなった。

それでよかった。
一緒にいる時間は減ったが、
ふたりの絆も思い出も変わらない。
ヒカルの、ちょっとおしゃれな私立校のバッグ。
あの黒魔道士の縫いぐるみが、揺れている。

俺も自分の中学で友人がいたし、
ヒカルも、俺の知らない友人に囲まれている。

――ふたりで会う日は、ふたりだけがいいな。
……俺もなんとなく、そうありたいと望んだ。

高校受験が迫る頃。
市役所の図書館が、新しいセーブポイント。
働く大人たちに混じって、
別棟の入口で待ち合わせた。

市役所の施設内にあるからか、
地元の学生は滅多に来ない。
お互いの苦手を持ちよった。
勉強の程度に差はあれど、
助け合うことはできた。

この頃からだったろうか、
俺もヒカルも、
ふたりきりの時間を意識していた。

俺にとって、ヒカルは特別で。
ヒカルにとって、俺は特別か?

答えは黒魔道士が、知っているかもしれない。

無事に受験を乗り切り、
お互い望む高校へ進学した。

途中ヒカルの家が引っ越してしまい。
忙しいこともあり、会うことがなくなっていた。

もちろん、LINEでもSNSでも。
いくらでも話すことはできた。
ただ、顔を合わせない。
それだけ。

でも、なぜか、どこか、
ヒカルが遠くに行ってしまったようで。

ふたりのセーブポイントは、
いまは俺のバックパックにぶら下がる、
黒魔道士の縫いぐるみ。

先に合格したヒカルが、
俺の合格祈願に預けてきた。

本当は、進学して会えなくなることを、
わかっていたのではないだろうか?

この縫いぐるみがあれば、
いつかその時の口実となる。
少し毛羽立った黒魔道士を、
俺はまだ、返しに行けていない。

新しい生活に慣れてきた頃、
不意に吹き込んだ花の香りに戸惑う。

クラスの委員長で、
物静かだが、芯の通った少女。
彼女は真剣だった。

なぜ俺なんかのために、
想いをぶつけられるのか?
相当な勇気がいったはずだ。
思わず聞いてしまった。

――だって、君のことばかり考えてしまうから。

だとしたら、
俺は彼女に応えることはできない。
俺の中にはいつだってあいつがいっぱいだ。
進学してからも、ひとときも忘れたことがない。
いつ返しに行くか?
それだけの問題で。

まぎれもなく、
恋だった。

一瞬の濁りもなく。
惹かれていた。
いまも、運命を感じて。

俺はヒカルのことを可愛いと想う。
はつらつとした中に、
色香とは全く違う魅力があって。
きらきらした光が流れる中で、
その笑顔がいっそう輝いていて。

俺たちのこと、
彼女は最後まで聞いてくれた。
少しだけ、泣かせてしまったが、
最後はこう言ってくれた。

――バカ!早く逢いに行ってやれ!

――

木漏れ日が心地よい。

森林公園は、
大学から二駅離れたところにある。
シェアハウスからはほど近く、
たまにこうしてふたりでやってきた。

いい公園なのに、
あまりひとがいなくて。
広い庭のように錯覚する。

俺はヒカルの膝に頭をのせて、
木々のきらめきを眺めていた。

まどろむ時間帯。
目を閉じかけた俺に、
ヒカルが問いかける。

――なあ、本当に、僕で良かったのかな?

なにをいまさら。
俺は体を起こして、
少し不安気なヒカルを抱き寄せる。

ざわめきの中、
唇が重なる。

隣に腰掛ける黒魔道士が、
頬を赤らめて……


本作はFINAL FANTASY IXにインスパイアされた
二次創作的要素を含みます。
FINAL FANTASY IXは、
株式会社スクウェア・エニックスの著作物です。

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