虫を食べてみた話
「絶対に虫を食べたくない」という気持ちが別になかった。
これまで食べてきてはいないけれど、機会がなかっただけ。
経験として食べるのもいいんじゃないかと思っていた。
そもそも私には苦手な食べ物がない。
これまで食べたもので、飲み込めないほど苦手なものはなかった。
ドリアンもパクチーもセロリもさんまの肝もゴーヤもナマコもブルーチーズも生牡蠣も苦手じゃない。
食べた時の感想は「これは好みが分かれる味だな〜」とまるで他人事。
コンビニでたまに売ってるよくわからない味のドリンクも、「わざわざリピートはしないかな…」と思う程度。
おいしくないと知っていても、多分もらったら飲む。
ぬるいビールも平気。お酒の注文は他の人が頼んだものを「私もそれで」が常套句。なんでもいいのだ。
すごく好きな食べ物というものがあるわけでもない。
その時その時でハマっている食べ物はあるけど、好きな食べ物なに?と聞かれたら、特にない。
すごく好きな食べ物もすごく嫌いな食べ物もない。
こだわりがない。
ふわふわ派?サクサク派?なんて質問は愚問だ。
カスタード派?生クリーム派?も同じ。
木綿派?絹ごし派?
うどん派?そば派?
朝ごはんはパン派?ご飯派?
挙げればキリがない。
どっちでもいい。どっちも美味しいじゃん。
どっちを選ぶかは気分による。
絶対的な自分の中での正解など持ち合わせていない。
コーヒーはブラック派だけど、健康のことを気にしているだけで、カフェオレも大好き。
常用するならブラックというだけ。
カフェオレが美味しいと評判のお店に行くのなら迷わずカフェオレ。
思えば、子どもの頃からずっと、食べたことのないものを食べることが好きだった。
両親がそうだったので、その影響だと思う。
子どもの頃、旅行先の飲食店で、両親はメニューを見て言うのだ。
「これ聞いたことないね、頼んでみようか。」
肉料理なのか魚料理なのか、メインディッシュなのか汁物なのかすらわからない。
そして、そういう料理はだいたい美味しいのだ。
まだ周りの人が知らないおいしいものを知っている。
子どもの私はそんなちょっとの優越感が大好きだった。
そして、今も。
ここまでの話で十分にご理解いただけたと思うけど、私の食レポはなんの参考にもならない。
だから、これを読んで虫を食べた人からのクレームは受け付けない。
さて、私が虫を食べることになった経緯について。
友達が、絶対に虫を食べたくないと言っていた。
私はそんなに食べたくないと思わなかった。
それなら食べてみようと思った。
本当に、それだけ。
虫という生き物は大の苦手。
生きていようが死んでいようが触れないし、自宅に虫が出たら私は完全に腰が引けている。
逃げる準備万端でスプレーを吹きかけて、ダッシュで逃げる。
ちなみに、倒した虫を触ることができなくて、しばらく同居したこともある。
自分の機嫌がいい日になんとか処分した。
でも、虫という食べ物だったら、食べてみたいと思った。
自分でも理由はわからない。
食べたことのない食べ物だから。
それ以上でもそれ以下でもなかった。
私は虫が苦手だから、いざ虫を目の前にしたら怖気付いて食べられないんじゃないかとも思った。
自分を試してみたかった。
でも、買って食べる勇気はなかった。
背中を押してほしくて、こっそりほしいものリストに虫を入れた。
そうして、ありがたいことに、私の手元に虫がやってきた。
届いた時の感想は、「思ったより食べ物だ」だった。
パッケージが完全におつまみ。
仕事から帰ってきたばかりの腹ペコの私にはとてもおいしそうに見えた。
その後も、小腹が空いて、なにか食べるものないかな〜と思った時、虫のパッケージを見て、ちょうどいいなと思ったりした。
いけないいけない、これは配信で食べなくちゃ。と自分を律して、別のものを食べた。
そうして迎えた虫を食べる配信。
開封する瞬間まで、どっちに転ぶかわからなかった。
ドキドキした。
好奇心と恐怖心に揺れていた。
開封して、虫の姿を見た時。
あ、ダメかも…と思った。
乾燥した大量の芋虫がそこにいた。
けど、お皿に虫を出したら、とってもいい香りがして、お腹が空いた。晩御飯食べてなかったし。
カリカリベーコンを刻んだふりかけみたいな、今すぐ食べたい気持ちになる香りだった。
一口目。自分でも驚くほどになんの抵抗もなく口に入れた。
食感はパリパリ。
味は特にない。
別においしくもないけど、まずくもない。
えぐさもないし、強い旨みもない。
苦くもない。甘くもない。ただ少し味付けの塩味がするだけ。
香りも食べたら特に感じなかった。
おいしいと言うには味がない気がするけど、普通に食べられる。
食べ進めていくと、2つしか入っていない大きい虫が美味しいことに気づいた。
食べた瞬間、素で「あ、これ美味しい…」と呟いた。
自分が食べているものが虫だということを忘れていた。
コメントの皆様によると、この子はサゴワームというらしい。
あと10個入っててもよかったのに。
配信的にはなんの面白味もない配信だった。
虫完食チャレンジと謳っておきながら、なんのハラハラ感もなかった。
ただ、虫を食べるという経験ができてよかった。
今度、誰かが「虫なんて絶対に食べたくない」と言っていたら、食べたことがあると言って驚かせてみたい。
「別においしくもないけど、普通に食べられるよ」なんて言って、ドン引きさせたい。
いい話のネタができた。
そしてまた、私の苦手な食べ物は見つからなかった。
P.S.
きのこvsたけのこ論争はたけのこ派です。
それだけはどっちでも良くない。
追記。
虫配信から1週間が経過して、また食べたい気持ちが高まっている。
サゴワームがおいしかった記憶が空腹になるたびに思い起こされる。
あの香りと、クセのない塩味と、パリパリだけじゃない独特の食感を想像するだけでよだれが出る。
食べたい。食べたい。食べたい。
