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NHK『気になる家』で紹介された洋館住宅、根岸の西宮邸

台東区根岸の西宮邸がNHKのTV番組『気になる家』に取り上げられました(『気になる家(5)路地裏のホワイトハウス 東京・鶯谷』NHK総合2026年6月20日放送)。
JR鶯谷駅からほど近くに建つ西宮邸は、現存する洋館住宅としては都内最古の建物のひとつ。震災や戦災でも大きな被害を受けることなく、所有者の西宮さんご家族が今も大切に使われておられます。
番組でも紹介していただいたとおり、私たち根岸子規会は西宮さんご家族と交流を重ねながら、地域の歴史資産である西宮邸を見守ってきました。

陸奥宗光邸から、ちりめん本を出版した長谷川武次郎の社屋兼住まいへ

TV番組『気になる家』でも語られていたとおり、西宮邸の住み手の歴史には興味深いものがあります。
明治16年ごろ、のちに外相として活躍する陸奥宗光が根岸に自邸を構えました。それが現西宮邸の洋館を含めた家屋です。当時の敷地は広大で1200坪もあったといわれています。
陸奥は数年でこの邸宅を手放しましたが、その後、明治40年ごろに出版業をいとなむ長谷川武次郎の社屋兼住まいとなりました。長谷川の経営する「長谷川弘文社」は、西洋人をターゲットにした「ちりめん本」を世に送り出したことで知られています。
ちりめん本について詳しくはこちら→ちりめん本倶楽部

下の写真は、1980年代前半ごろの西宮邸。かつては左側に和風建築が付属していました。(根岸倶楽部 市川任三編集・発行/1983年『東京下谷根岸及近傍 第二輯』54頁より転載)

私たち根岸子規会は、以前から西宮邸内部やちりめん本の資料を見学させていただき、西宮邸をテーマにした講演会(2011年)を根岸小学校で開催するなど、地域の文化資産として注目してきました。
2017年には、地域の方々から募った寄付をもとに、西宮邸の歴史的価値を伝える説明板を作成して現地に掲示しました。説明板の文章の一部を以下にご紹介します。


西宮邸 説明板より

 明治期の外務大臣として日清戦争の講和条約締結や欧米列強との条約改正など日本の外交史上に大きな足跡を残した陸奥宗光(1844~1897)の最後の住まいは、現在の西ケ原の古河庭園です。
 しかしそんな華々しいスポットライトが当たる前の雌伏の時代に、宗光はこの邸宅に住んでいました。

 陸奥宗光は、西南戦争時に反政府的な行動をとったとして禁固5年の刑をうけ1883(明治16) 年1月に出獄したあと、同年9月に彼が「一邸地を購得した」のがこの邸宅です。まだここ根岸が、東京府北豊島郡金杉村という地名で、上野の山の下を鉄道が開通したばかりのころです。
 1884(明治17)年4月から1886(明治19)年2月まで宗光はロンドンに留学しますが、その留守中、後年「鹿鳴館の華」と称される妻の亮子と子供たちがこの家に暮らしました。そして宗光は留学から帰国して1887(明治20)年4月に六本木に転居するまでここで過ごしました。

 この建物は住宅用建築として建てられた洋館の現存例としては都内で最も古いもののひとつです。もともとは現存の洋館に和風(内部は洋式)の建物が付属した接客部と、母屋に付属した離れと土蔵2つを持つ生活部とからなる和洋館並列型住宅でした。現存する洋館部分はコロニアル様式で建築されており、正面側の1、2階に大きな開口が連続して配置され、各部屋には暖炉が備えつけてあります。陸奥家とのかかわりという点からいうと、玄関を入るとすぐに階段があり、その階段の手摺の親柱には陸奥家の家紋である「逆さ牡丹」が彫刻されています。
 1888(明治21)年、宗光は借金返済と息子・廣吉のロンドン留学費用の捻出のため、この家を売却します。
 
 その後1907(明治40) 年ごろ、「ちりめん本」を出版していた長谷川武次郎が、自らの住まいと社屋(長谷川弘文社)として買い取ります。
 長谷川弘文社による出版事業は、大正、昭和と引き継がれました。現在も、この家には長谷川武次郎のご子孫の西宮氏ご家族がお住まいです。建物内への立ち切りはできません。静かに敷地外部からご見学ください。

根岸子規会


西宮邸、陸奥宗光、長谷川武次郎と根岸に関する年表(根岸子規会作成)

不便もいろいろあるけれど…改修を重ねて大切に住み続けていく西宮さんご家族

TV番組『気になる家』は、こうした歴史的価値だけでなく、西宮邸の現在の姿もしっかりと紹介してくれました。西宮さんご家族が古いものを大事にしながら暮らしやすくリノベーションしてきたこと。老朽化した玄関まわりを、谷根千工房の川原温さんの協力によって改修したこと。
番組の最後のほうで、息子さんがソファの後ろの木の床に寝そべるシーンがありました。放送後に西宮さんに裏話をお聞きしたところ、
「子供たちが小さい頃は家族4人がダブルベッド1台で寝ていたのですが、成長してからは、息子はソファの後ろの床に布団を敷いて寝るようになりました。番組では、自分のお気に入りの場所で寝るところを再現したんです」
個別の寝室がないワンルームのため、日常生活で何かと不便もあるそうですが、ひとつの空間で家族と寝起きした経験もこの家の記憶に大事に刻み込まれていくのでしょう。
実際に住み続け、維持してこられた西宮さんご家族の思いがあるからこそ、今も根岸に残る路地裏のホワイトハウスなのでした。


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