冬助の四十九日、家族記念日
日本列島が梅雨明けしつつある。夏の合図で蝉の合唱が始まる今日この頃、バレーボールの世界大会が開催されている。ネーションズリーグだ。男女ともにメダルが期待される今大会の日本、とくに男子は破竹の勢いで予選リーグを無敗で突破。なんと12連勝でトーナメントに進出した。
何を隠そう、夫は生粋のバレーボーラーである。そんなわけで、部活時代の後輩や先輩と集まってネーションズリーグの観戦会をした。スポーツの放映を観れることでお馴染みの、あのアイリッシュパブに集おうというわけだ。
その日は予選リーグ11戦目の対ベルギー。試合はセットカウント3対0、危なげなくストレートで日本が勝った。こんなに余裕のある試合運びになると思っていなかったので肩透かしを食らった気分だった。
わたしは予定があったので顔を出すころには試合はとっくに終わっていた。それでも、まだ飲んでるよ、と夫が連絡をくれたので足早に店に向かった。
店に入り、数人が囲むテーブルをひとつずつ確認していると、店の一番奥のテーブルで夫が手を振っている。いた。
テーブルに近寄るやいなや「結婚記念日おめでとう!」と夫に言われた。言われて初めて、はたと気づいた。昨日、結婚記念日だった。
その日は、夫も何年も会っていなかったバレー部のマネージャーも来てくれていた。きっと「結婚して何年くらい経つの?」などと聞かれたのだろう。そして夫も、そこではたと気づいたのだ。昨日、結婚記念日だった、と。
わたしは驚いた。昨日は、冬助の四十九日だったからだ。わたしはそのことで頭がいっぱいだった。手帳にも『冬助』と大きく書いてあるばかりで、結婚記念日をすっかり忘れていた。
4年前、役所に出したA3サイズの紙の余白には冬助の写真が印刷されていた。わたしたちが家族になるための手続き。冬助も家族だから、と言ってデザインを特注した婚姻届。ちいさくて可愛い、わたしたちの冬助。
冬助は知ってくれていたのだろう、4年前に自分もきちんと家族になったことを。四十九日ぎりぎりで、ちゃんと一緒に祝えるように待ってくれていたのだ。記念日が悲しい思い出にならないよう、喪に服する時間をくれた。
結婚記念日、ではなかったのか。7月16日は、2人と1匹の『家族記念日』だったんだ。来年はきっと忘れずに祝おう、冬助と、わたしたちが家族になった日を。
