韓国ミュージカル「ドラキュラ」あらすじ①|公演を観る前に物語を予習
2026年7月、韓国ミュージカル『ドラキュラ』の新たな公演が始まりました。
ジュンスが演じるドラキュラを観るため、これから韓国へ行く予定の方も多いのではないでしょうか。
韓国公演でどうしても立ちはだかるのが、言葉の壁です。
歌や表情、舞台演出だけでも十分に楽しめますが、
「今、何が起きているのか」
「なぜこの曲を歌っているのか」
「このとき、登場人物は何を感じているのか」
を知っていれば、一つひとつの歌やセリフがさらに深く心へ届くはずです。
そこで今回から、ジュンス『ドラキュラ』完全予習シリーズを始めます。
第1回は、舞台の進行と主要ナンバーに沿って、物語の第1幕の前半を追っていきます。
この記事は、完全ネタバレ版です。
なお、以下の内容は、過去の韓国公演の歌詞やセリフ、公開されているトラックリストを参考に、物語と人物の感情を整理したものです。
再演ごとにセリフや演出が変更されることがあるため、2026年版では細かな違いがある可能性があります。
第1幕 止まっていた400年が、再び動き始める
Scene 1 Prologue
御主人様を待ち続けるレンフィールド
①何が起こる?
物語は、精神病院に収容されているレンフィールドから始まります。
彼は虫や小さな動物の命を自分の中へ取り込もうとしながら、まだ姿を見せていない存在を「御主人様」と呼び、その到来を待ち続けています。
一見すると、意味の分からない言葉を繰り返す狂人のようです。
しかしレンフィールドは、これからロンドンへやって来るドラキュラの存在を誰よりも早く感じ取っています。
②人物は何を感じている?
レンフィールドがドラキュラに抱いているのは、単なる恐怖ではありません。
自分は御主人様に選ばれた存在であり、忠誠を尽くせば永遠の命を与えてもらえる。
そんな期待と信仰が、彼を支えています。
③ここを観るともっと泣ける
レンフィールドの異様な言動の奥にある、
「御主人様に認めてほしい」
「自分を見捨てないでほしい」
という切実さに注目したい場面です。
物語の冒頭からドラキュラを待ち続けた彼の願いが、最後にどのような形で裏切られるのか。
レンフィールドの結末を知ってからこの冒頭を見ると、不気味な歌がとても悲しく聞こえます。
Scene 2 Solitary Man
孤独なドラキュラとジョナサンの来訪
①何が起こる?
若い弁護士ジョナサン・ハーカーは、不動産契約のためトランシルバニアにあるドラキュラ城を訪れます。
ドラキュラはロンドンで新しい生活を始めるため、屋敷を購入しようとしていました。
城の主であるドラキュラは、長い年月を生きる中で、親しい人々をすべて失ったことを語ります。
そして荒れ果てた城を離れ、新しい土地へ向かおうとする思いを「Solitary Man」で歌います。
②人物は何を感じている?
この時点では、ドラキュラはまだミナと再会していません。
ロンドンへ向かう理由は、愛する女性を捜すためではなく、あまりにも長く続いた孤独と退屈から抜け出すためです。
何百年も生きてきた彼には、かつて愛した人も、憎んだ人も、語り合える相手も残っていません。
強大な力を持ちながら、ただ終わらない時間に耐え続ける存在として、ドラキュラは登場します。
③ここを観るともっと泣ける
「Solitary Man」で描かれるのは、恐ろしい吸血鬼ではなく、世界から取り残された一人の男の孤独です。
このあとミナを見つけた瞬間、ドラキュラの目的は一変します。
ミナと出会う前の、希望を失った表情を覚えておくと、その後のドラキュラの変化が一層鮮明に見えるはずです。
Interlude 運命の再会
ミナは遅れてドラキュラ城へ到着します。
ジョナサンとの再会を喜ぶミナでしたが、その姿を見たドラキュラは思わず「エリザベサ……」とつぶやきます。
400年前に失った最愛の女性。
目の前のミナは別人であるはずなのに、その姿はエリザベサと重なって見えました。
この瞬間、ドラキュラがロンドンへ向かう理由は、「新しい人生を始めるため」から、「ミナを追うため」へと変わります。
ドラキュラの400年間止まっていた時間が、再び動き始める瞬間です。
Scene 3 Whitby Bay
不安な城で確かめる、ミナとジョナサンの愛

①何が起こる?
ドラキュラ城に到着したミナは、城や伯爵に不気味な違和感を覚えます。
ジョナサンも、ここに来たときから不吉な気配を感じていました。
彼はミナの身を案じ、翌朝すぐにロンドンへ帰るよう勧めますが、ミナは「久しぶりに会えたのに」と寂しさを隠せません。
二人は不安な現実から少しだけ離れ、初めて愛を誓った思い出の場所「ウィットビー・ベイ」を心に描きながら歌います。
②人物は何を感じている?
ジョナサンは、理由は分からなくても「ここは危険だ」と直感しています。
一方ミナは、不安よりも、久しぶりに会えたジョナサンと一緒にいたい気持ちのほうが強くあります。
二人にとってウィットビー・ベイは、愛が始まり、未来を約束した心の拠り所です。
③ここを観るともっと泣ける
この曲は、ミナとジョナサンが本当に愛し合っていることを描く大切な場面です。
ジョナサンとの愛が弱かったから、ミナがドラキュラへ惹かれたわけではありません。
確かな愛と未来を持っていた。それでも説明できない感情に揺れていく。
ここで二人の幸福を知るほど、後のミナの葛藤とジョナサンの苦しみが深く胸に迫ります。
Scene 4 Forever Young/Fresh Blood
若さを取り戻し、ミナを追うドラキュラ

①何が起こる?
ミナが城を去った翌朝。
ジョナサンは首についた傷を気にしますが、ドラキュラは城には鏡が一つもないことを明かします。
さらに、ミナが急な用事でウィットビー・ベイへ向かったことを知ると、ドラキュラはロンドンへの移住を急ぐと告げます。
ジョナサンには「もう一つ頼みたいことがある」と言って城へ引き留め、自分が戻るまで部屋から出ないよう命じます。
その後、ジョナサンはドラキュラの花嫁たちに襲われますが、ドラキュラは彼女たちを制止し、自らジョナサンの血を吸います。
若い血を得たドラキュラは老いた姿から若さを取り戻し、「Fresh Blood」で新たな力を手に入れます。
そして、ミナを追ってロンドンへ向かうことを決意します。
②人物は何を感じている?
ドラキュラの目的は、この場面ではっきり変わります。
もうロンドンへ行く理由は、新しい人生を始めるためではありません。
エリザベサによく似たミナを追い、もう一度愛を手に入れるためです。
そのためには、ジョナサンを城へ閉じ込めることも、彼の血を利用して若さを取り戻すこともためらいません。
愛を取り戻したいという願いが、ドラキュラを再び動かし始めます。
③ここを観るともっと泣ける
ドラキュラは愛によって、生きる力を取り戻します。
しかし、その愛はすでに他者を犠牲にし始めています。
「Fresh Blood」で若さを取り戻したドラキュラは、愛する人を追う一人の男であると同時に、目的のためなら人間を利用する怪物でもあります。
ここから、愛することと所有することの境界が崩れ始めます。
Scene 5 The Master’s Song/Last Man Standing
動き始める二つの執念
①何が起こる?
ドラキュラを乗せた船がイギリスへ向かいます。
レンフィールドは御主人様の到来を感じ取り、興奮します。
しかし、当初のロンドン移住計画とは異なり、ドラキュラの行動がミナを中心に変化していることに戸惑い始めます。
一方、ヴァン・ヘルシングはレンフィールドの言動から、吸血鬼ノスフェラートの存在に気づきます。
ドラキュラは、かつてヴァン・ヘルシングの妻ジュリアを奪った敵でもありました。
「Last Man Standing」で、ヴァン・ヘルシングはドラキュラとの戦いを決意します。
②人物は何を感じている?
レンフィールドは、自分だけがドラキュラの計画を理解していると信じていました。
しかしミナの出現によって御主人様の関心が変わり、自分の知らないところで物事が進み始めます。
ヴァン・ヘルシングにとって、ドラキュラは正体不明の怪物ではありません。
最愛の妻を奪った、憎むべき相手です。
ドラキュラが失った愛を取り戻そうと動き始める一方で、ヴァン・ヘルシングもまた、失った愛のために復讐へ向かいます。
③ここを観るともっと泣ける
愛する人を失ったのは、ドラキュラだけではありません。
ヴァン・ヘルシングも、大切な人を失った悲しみに囚われています。
一人は失った愛を取り戻そうとし、もう一人は愛を奪った者を倒そうとする。
この二人の執念が、やがて正面からぶつかることになります。
Scene 6 How Do You Choose
それぞれが未来を選ぶ日
①何が起こる?
舞台はウィットビー・ベイ。
ジョナサンから便りが届かず、不安を募らせるミナは、彼へ手紙を書きます。
そこへ若い姿のドラキュラが現れます。
二人は初めて自然に言葉を交わしますが、ミナは彼にどこか懐かしさを感じ、「どこかでお会いしたことがありますか」と尋ねます。
ドラキュラは答えず、「必ずまた会えると信じています」と言い残して去っていきます。
入れ替わるように親友ルーシーが現れ、三人の男性から求され、同時に返事を求められていることを打ち明けます。
「How Do You Choose」では、それぞれ異なる魅力を持つ三人の男性の間で揺れながらも、最後には幼なじみのアーサーを選ぶルーシーの気持ちが描かれます。
②人物は何を感じている?
ミナはジョナサンを深く愛しています。
しかしドラキュラと出会った瞬間、自分でも理由の分からない既視感を覚えます。
一方ドラキュラは、目の前の女性がエリザベサであると確信し、「また会える」と迷いなく信じています。
ルーシーは三人の男性の間で迷いながらも、最後は条件ではなく、自分の心が向かう相手を選びます。
③ここを観るともっと泣ける
この場面のキーワードは、「選択」です。
ルーシーは、三人の男性から一人を選びます。
ミナはこの先、ジョナサンとの穏やかな人生と、ドラキュラへの抗えない思いの間で揺れます。
そしてドラキュラ自身も最後には、愛する人を永遠に自分のものにするのか、それとも彼女の幸せのために手放すのかという究極の選択を迫られます。
軽快で楽しいこのナンバーは、実は作品全体を貫く、
「人は何を基準に愛を選び、何を手放すのか」
という問いを、最初に観客へ投げかける一曲なのです。
それぞれが"未来"を選び始めたところで、第1幕前半は終わります。
このあとドラキュラはミナへ自らの正体を明かし、物語は一気に悲劇へ向かっていきます。

