#5 AIソロプレナーとして起業し、1年で上場企業にM&Aグループインするまでの全工程
AIを主役にしない
こうして『BizDevキャリア』というオウンドメディアの運営をはじめた。まずはメディア運用という点からAIを使ったワークフローができたような感じだ。ただ、これは事業そのものをAIネイティブ化したわけではなく、あくまで周辺業務の効率化に過ぎない。本丸は事業の主となるオペレーションをAIありきで構築することだ。
ちょっと俯瞰して見てみよう。いわゆるAIテーマで事業を作るとなった時には、LLMのようにAIそのものを作るか、NVIDIAのようにその原料を作るか、Salesforceのようなアプリケーションレイヤーでサービスを作るか、AI研修や導入支援などのようにコンサルや教育をやるか、いくつかの選択肢がある。
僕は、そのどれも選択せず、あくまで普通の事業をAIで極限まで効率化することを選んだ。そこまで狙いがあった訳ではないが、上記はいずれも大資本の戦いになるだろうから、エンジニア経験のない自分がやるにはハードルが高いと思った。情報をキャッチアップするだけで日が暮れてしまう。
むしろ、AI時代にも価値が残るであろうBizDevという職種領域で、働き方として広がるであろう副業という形態で、裏側がAIでめちゃくちゃ効率化されている状態を目指した。つまりサービスを享受する企業からは僕がAIを使っているかどうかやソロプレナーであるかどうかが意識されない状態を実現しようとした。
ここは若干個人的なポリシーみたいなものもある。AIを使うかどうかは本来ユーザーには関係がない。唯一許されるのは、AIをフロントに出したほうがより良いユーザー体験が提供できる場合のみで、それ以外はAIを主役にしてはいけない。
ソロプレナーという言葉も同様だ。会社という形態を取ってサービス提供している以上、ソロかどうかはどうでもいい。関心ごとは良いサービスを提供してくれるかどうかだけだ。この辺はまたあとで触れると思うが、僕にも設立当初から手伝ってくれている業務委託の人がいる。デザイナー、コーダー、カメラマンの人もいる。フルタイムではないだけで、みんなでチームだと勝手に思っている。客観的に見ればソロプレナーで間違いないだろうけど、僕は別にたったひとりで事業を作った訳じゃない。今回このnoteを書くまでソロプレナーと自称して来なかったのは、この辺がなんとなく気になっていたからだ。
事業オペレーションを作る
話が少し逸れてしまった。talentalの事業における主たるオペレーションは、人材が登録してtalentalデータベースに登録する流れと、企業からオーダーが入りマッチングする流れの2つである。これ以外のオペレーションはあくまで周辺業務である。優先順位は低い。
まず前者のほうから考え始めた。必要なのはサービスサイトとタレント登録フォーム、そしてタレントデータベース。企業側もこれと近いが、サービスサイトがあって問い合わせフォーム、資料ダウンロード、そこから顧客データをCRM化する。
ここをひとりでどこまで作り込めるか。どんなツールをどう組み合わせるか。ここがAIありきの事業オペレーションの核になる。
今ならClaudeCodeで最初からもっと上手くやれそうだが、当時はまだそこまでAIツールの性能も上がっていない。AIというよりノーコードツールを上手く使うといったほうが正しい。
自分の場合は、WordPressでサービスサイトを作り、人材と企業のデータベースはNotionを使う、そのうえでCF7というプラグインをカスタマイズしてフォームとNotionデータベースを自動連携できるようにした。Notionデータベースは当時まだインターフェースに使いにくい部分もあったが、最初は登録者も大した数じゃないからいいだろう。そのうちNotion側もアップデートするだろう。そう割り切った。データベースはスプシでも良かったかもしれないが、下層ページを持てるNotionがベストだと判断した。
結果的にこの選択は大正解だったと思っている。数ヶ月後にはNotionにもAI機能が付き、検索も容易になった。今ではClaudeCodeで独自インターフェースを作り、候補者のマッチ度をAIで判定、推薦ドキュメントの自動化までできるようになり、設立当初に作った仕組みでのオペレーション工数からさらに10分の1になった。当社事業のまさにコア機能となっている。もしここでスクラッチ開発していたり、ニッチな国産ツールを使っていたら結構悪影響が出ていた気がする。
起業の情報収集
いったん僕自身の心情にフォーカスすると、この段階ではまだAIについての学習を深めるために、talentalの事業オペレーションを考え実装しているところ。起業するかどうかはまだフラットである。フラットであろうと思っていた、が表現としては正しいかもしれない。
ただ、当時は7月後半ぐらいのタイミング。5月の退任直後にお誘いいただいた企業へも結論まで時間がかかる旨は伝えていたし了承をもらっていたが、そろそろ回答しないと先方の予算計画にも影響が出てしまうだろうと思っていた。待ってくれているけど、結論は早めに出したほうがいい。
そのため、6月頭ぐらいから、意思決定材料を揃えるために、起業に関する情報収集も並行してはいた。登記や税理士など事業運営以外のコストがどの程度発生するか、オフィスをどうするか、などの部分だ。創業融資などを知るために創業ステーションなどにも行って話を聞いていた。
あまり本論と関係がないが一応記載しておくと、事業承継という選択肢も視野に入れていて、事業承継ポータルなども良くチェックしていた。ただ、やはりポータルサイト上だけで見える情報では意思決定できず、まっさらな法人を新規で立ち上げるほうが良いと判断した。むしろtalentalを通して事業承継の課題にアプローチしようと。
HP開設
前半に書いた事業オペレーションを作るためには、受け皿となるサービスサイトが必要だった。その頃にはオウンドメディアの運用でサイト作りも慣れていたから、HPも特に抵抗なかった。むしろサイトを作る経験をたくさん積みたかった。
サイトが完成し、登録フォームからデータベース登録の流れも問題なく実装できた。それなりに苦労した部分はあったが、ChatGPTにキャプチャを貼れば解決策は教えてもらえる。
いざサイトができると、不思議なものでこのコンセプトが受け入れられるかを早く検証したくてたまらない。オウンドメディアも月2万PVぐらいになっている。BizDevというニッチなジャンルでは悪くない。この土台にサービスを載せたらどう反応が出るのか。
事業計画は何度もチェックして、KPIは明確になっている。達成するためのアクションも明確になっている。PLもCFシミュレーションも、ポジティブ、ミドル、ネガティブの3パターン用意した。たとえネガティブでも事業は継続できる。もともと無職で1年ぐらい過ごそうと思っていた期間だし、リスクなんかない。強いて言えば失敗の烙印を押されるぐらいだが、そんなものは自分以外の誰の記憶にも残らない。
もう起業以外の選択肢はないように思った。
まあ個人プロジェクトのような形でも実現は可能だが、このサービスをしっかり届けるためには法人が必須だ。自分自身が退路を断って起業するからこそ応援してくれる人が出てくるのであって、個人プロジェクトではその熱量は生まれない。もし転職してtalental事業を持ち込んだとしても、たぶんその熱量は薄まってしまう。
何度考えても、起業以外の選択肢はない。
前職を退任した4月の時点では、次はちょっと経営とか起業とかから距離を置いた仕事がしたいと思っていたのに、不思議なものだ。時間がありあまっていたせいで、事業計画を作り込みすぎてしまったかもしれない。
次回予告
起業を決めてから、実際の会社設立までのあれこれを振り返ろうかと思います。
