【🎨展覧会レポ】武蔵野市立吉祥寺美術館「版画の魅力 技法の共演」ほか
【#325、約3,900文字、写真約15枚】
武蔵野市立吉祥寺美術館(以下、吉祥寺美術館)に初めて行き「所蔵作品展 版画の魅力 技法の共演」を鑑賞しました。その感想・レビューを書きます。
※ 本展示の会期はすでに終了しています。
▶︎ 結論
吉祥寺美術館は、小規模で存在感が薄かったです。しかし、版画について新しい魅力や気づきが得られました。観覧料は数百円と安価なため、吉祥寺に行った際、コピス7階まで足を運んでみることをオススメします。
おすすめ度:★★★☆☆
会話できる度:★☆☆☆☆
混み具合:★☆☆☆☆
展覧会名:「所蔵作品展 版画の魅力 技法の共演」ほか
場所:武蔵野市立吉祥寺美術館
会期: 2026年1月17日(土曜日)から2026年3月1日(日曜日)まで
休館日:月1回程度
開館時間:午前10時から午後7時30分まで
住所:東京都武蔵野市吉祥寺本町1丁目8−16 コピス吉祥寺A館 7F
アクセス:吉祥寺駅から徒歩約5分
入場料(一般):300円
事前予約:ー
所要時間:約1時間
撮影:ロビーも含め、すべて不可
巡回:ー
URL:こちら
▶︎ 訪問のきっかけ

ジブリ美術館を目的に、約10年ぶりに吉祥寺駅へ行きました。その際、ネットで「吉祥寺 / 美術館」を検索。吉祥寺美術館の存在を知ったため、寄ってみました。
▶︎ アクセス

吉祥寺美術館へは、吉祥寺駅から徒歩約5分です。


商店街の中にある、商業ビル(コピス吉祥寺A館)の7階に位置する珍しい美術館です。
コピス6階にはサンリオなどを扱う「キャラパーク吉祥寺」があります。エスカレーターは1階から6階のみ。A館6階で「美術館はどこや?A館にはないんか?」とウロウロした結果、7階に続く階段を見つけました。これでは「吉祥寺美術館に行こう!」という明確な意思がないと、辿りつきづらい構造だと思いました。

▶︎ 武蔵野市立吉祥寺美術館とは?

武蔵野市立吉祥寺美術館は2002年2月、日常生活と文化・芸術を結び親しむ場として、 多くの人々で賑わう吉祥寺の街中に開館しました。 収蔵作品は、(略)油彩、版画、写真など約2600点にのぼります。(略)“観る・創る・育てる”をモットーとしてた美術館活動をめざしています。
(公式HPに「モットーとしてた」と誤字を発見…)吉祥寺美術館は、比較的小ぶりな美術館でした。企画展示室(市民ギャラリーA・B室)は147.6㎡。それに萩原英雄記念室と浜口陽三記念室を含めても、約250㎡(テニスコート約1面分)と推測されます。
また、美術館と同じフロアに音楽室もあります。ロビーに座っていると、歌謡の練習をしている声が漏れ聞こえてきました(作品鑑賞に支障はありません)。
評議員会 議事録を見ると、音楽室の移設も検討しているようです。しかし、練習場所が少ないことから、実現は難しいとのこと。また、評議員からは、以下のような直裁的な意見も出ていました。
改めて美術館に行ったところ、文化都市武蔵野と言えるような美術館ではないと感じた。事業団がそれを改修することはできないが、事業団も実際に運営を携わっているものとして、ぜひ要望を出していただきたい。
初めて訪問した私も、同様の印象を受けました。収蔵作品数が少ないことから、新しい市立美術館を立ち上げるのは、相当難易度が高いでしょう。
実施できることは限定的ですが、美術館の宣伝や導線、写真撮影の可否には、改善の余地があると思いました。知られていないのは、存在していないのと一緒です。
なお、完成度の高い三鷹の森 ジブリ美術館がオープンしたのは2001年。吉祥寺美術館は、その翌年に開業しました。結果として、三鷹市と武蔵野市の力の差をまざまざと感じました。
その後、理事から以下のような率直な発言もあるなど(成果はどうあれ)、評議会ではガバナンスが発揮できる環境だと思いました。
コンセプトの響きに本当に魅力がない。このようなことを言えるとは恥ずかしい。
▶︎ 「所蔵作品展 版画の魅力 技法の共演」感想

2,500点を超える所蔵品の中には、約1,600点の版画作品があります。今回の所蔵作品による企画展では、さまざまな技法による版画作品を紹介いたします。(略)版画は、版の形状から凸版、凹版、平版、孔版の4つの形式に分類されます。
吉祥寺美術館は、ロビーも含めて、すべてが撮影禁止です。ロビーにあった展覧会のパネルはわかりやすく、勉強になるため、撮影したかったです。
展示室では、さまざまな技法を用いた版画作品とともに「原版」も紹介していました。
凸版:木版
平版:リトグラフ(石版)
凹版:銅版
孔版:シルクスクリーン
以下、簡単な感想を記録します。
✔️ 南桂子

私が「原版」(複製のもとになる版)を見たのは、ほぼ初めてでした。作品と同時に原版にも価値があり、収蔵される対象になるのは興味深かったです。なお、エッチングによる銅版は、刻んだ傷にインクを詰めるのはわかりますが、それをどうやって紙に転写しているのか、ピンときませんでした。
✔️ 清水昭八

リトグラフ(石版)の原版が置いてあったものの、制作工程がわかりませんでした。「版画」と言っても、学校で習った木版以外にさまざまな手法があるのは、改めて発見がありました。
✔️ 織田一磨

抽象的なモティーフが並ぶ中、一般的な街の風景を描いた版画は、作品として鑑賞しやすかったです。
✔️ 一原有徳

彼は「モノタイプ」を使います。この技法は、1つの原版から1つの作品しかつくれません。作品はかなり抽象的でした。そこにどのような「考え」があったのか知りたかったです。
▶︎ 「浜口陽三記念室」感想
技法「メゾチント」は、17世紀にヨーロッパで生まれた銅版画技法です。(略)繊細な色彩表現と暗闇の空間および細部にまで神経を行き渡らせたモチーフの配置からは、浜口の研ぎ澄まされた感性やこだわりをうかがうことができます。

メゾチントは、写真技術の普及に伴って19世紀末に廃れました。しかし泰斗である浜口陽三は、それを独学で復興。また、4枚の単色のメゾチント(黄・赤・青・黒)を重ねて刷る、新たな技法を生み出したそうです。
銅版全体にベルソーと呼ばれる道具で、微細な傷をつけて下地をつくります。その傷部分を磨いたり、つぶすことで、原版をつくります。作品を多色にするためには、その分の原版が必要です。印刷機で多色刷ができる現在、版画はとても非効率な手仕事だと思いました。
なお、メゾチントができるまでの展示を見ても、私はピンときませんでした。文字と道具だけでなく、動画がないとイメージしづらいです。
吉祥寺美術館は、浜口陽三の版画作品180のうち、150を所蔵しています(原版も80所蔵)。彼は晩年、武蔵野市に住んでいたことから、作品などを寄贈したそうです。
この展覧会を通して、さまざまな版画作品を見ていると「版画にしかない良さ」が何となく見えてきました。市場では値段が熟れているため、版画は「買うアート」としては良いですネ。
浜口陽三の作品の中で《暗い背景のぶどう》《1/4のレモン》《19と1つのさくらんぼ》《ざくろ》などは、かわいいし、おしゃれだと思いました。
▶︎ 「萩原英雄記念室」感想
萩原は、入院の翌年、病院の庭に転がっていたベニヤ板の切れ端を拾い、木版の牛の年賀状を摺り上げます。その年賀状が思いがけず好評を博したことで、萩原は版画と向き合い、本格的に木版画制作の道を歩むことになります(略)既成の枠にとらわれず、独創的で革新的な版画技法で制作された作品の数々をどうぞお楽しみください。

萩原英雄の展示室には、小学校で習った「the 木版画」の道具が並んでいました。彼の作品の多くは、かなり抽象的だったため「どういう思いが入っているんやろう。文部大臣賞が取れた理由を誰か教えてくれ」と思いました。
一方で「三十六富士」シリーズは、実写的な描写だったため、心地よく見ることができました。抽象的な版画作品も、たくさん鑑賞することで見どころがわかってくるのでしょうか。
▶︎ その他 感想
ロビーでは、凸版、木版、平版、凹版をつくる工程(それぞれ3〜5分)が、町田市立国際版画美術館 普及係がつくった映像を使って紹介されていました。これが、とてもわかりやすかったです。YouTubeを探しましたが、見つかりませんでした(版画普及のため、是非アップしてほしいです)。

映像を見ても、端倪できない点がありました。シルクスクリーンは、感光剤が取れた部分を、インクが透過する仕組みです。しかし、どうやってインクを通すのか、わかりませんでした。後日、以下の動画で理解できました。
▼ スクリーンプリント ※横浜美術館
ちなみに、他の版画技法は以下です。
▼ エッチング(銅版)※国立西洋美術館
▼ リトグラフ(石版)※国立西洋美術館
なお、ロビーで長尺の動画を流す場合、立ったまま見るのは辛いため、チェアを置いてほしかったです。
▶︎ まとめ

浜口陽三 《暗い背景のぶどう》
いかがだったでしょうか?「版画とは何ぞや」「版画にはどのような種類があるのか」「どのような表現があるのか」興味がわき、知識や経験も増やすことができました。小ぶりで存在感の薄い美術館でしたが、吉祥寺に行った際は、寄ってみてはいかがでしょうか?

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