【🎨展覧会レポ】秋田市立千秋美術館「<視線>で楽しむ美術」「岡田謙三記念館 4期」
【#303、約4,300文字、写真約20枚】
秋田市立千秋美術館(以下、千秋美術館)へ初めて行き「<視線>で楽しむ美術」「岡田謙三記念館 4期」などを鑑賞しました。その感想・レビューを書きます。
▶︎ 結論
小ぶりでしたが、行って損はない美術館でした。それは主に、丁寧なキュレーションにより、普段の美術鑑賞では気にしなかった部分や、写真撮影にも参考になる気づきがあったためです。秋田出身作家の作品も多く見られたため、秋田旅行のお出かけ先にオススメだと思いました。
おすすめ度:★★★☆☆
会話できる度:★★☆☆☆
混み具合:★☆☆☆☆
展覧会名:①「<視線>で楽しむ美術」、②「岡田謙三記念館 4期」
場所:秋田市立千秋美術館
会期:①令和7年11月22日(土曜日)から令和8年1月18日(日曜日)まで、②11月22日(土曜日)から令和8年1月18日(日曜日)まで
休館日:年末年始ほか
開館時間:午前10時から午後6時
住所:秋田県秋田市中通2丁目3−8 アトリオン1階、2階
アクセス:秋田駅から徒歩約7分
入場料(一般):500円
事前予約:ー
所要時間:約1時間
撮影:すべて不可
巡回:ー
URL:①こちら、②こちら
▶︎ 訪問のきっかけ

1人の時間が2日できたため、秋田旅行を企画しました。秋田県には、目ぼしい美術館が少ないことに加え、千秋美術館は、秋田駅から近いため、行き先としてはマストでした(秋田県の主要な美術館は以下)。
秋田市
秋田県立美術館(設計:安藤忠雄)
秋田市立千秋美術館
秋田市立赤れんが郷土館 勝平得之記念館
秋田県立博物館
横手市
秋田県立近代美術館
横手市増田まんが美術館
▶︎ アクセス

千秋美術館は、秋田駅から徒歩約7分。中央通りを抜け、千秋公園方面の商業ビル・アトリアオンの1階、2階に位置します(入り口は1階のみ)。
▶︎ 秋田市立千秋美術館とは?

秋田市立千秋美術館は、1989年に開館した公立美術館。千秋美術館の前身は、1958年に設立した千秋公園内の秋田市美術館でした。
秋田市美術館はオープン当初、収蔵作品ゼロでスタート(まさにハコモノ!)。その後、元・秋田銀行頭取で美術コレクターの奈良磐松から、秋田にゆかりのある作家の作品を中心に寄贈を受け、徐々に収蔵作品を拡充しました。


秋田市制施行100周年(1989年)に、現在のアトリオンに移転。元々の秋田市美術館は、1990年に佐竹史料館に生まれ変わりました。
美術館の移転により、所蔵していた版画家・勝平得之や練金家・関谷四郎の作品は、秋田市立赤れんが郷土館に移転しました(私は同日に訪問)。

千秋美術館の収蔵品数は、約1,600。その中には、洋画家・岡田謙三の作品約100点が含まれます。

千秋美術館は、2022年6月に休館、2024年6月にリニューアルオープン。新しい展示室は、鑑賞しやすい環境だと思いました。特に、低反射ガラスは快適でした。
なお、歩いて数分の場所に秋田県立美術館があります。こちらは、1967年に開館した、旧・秋田県立美術館(平野政吉美術館)の収蔵品を移転、2013年に開館しました。旧・秋田市美術館(現・千秋美術館)の方が先輩です。





▶︎ 「<視線>で楽しむ美術」感想

「美術」と「視線」。(略)作品鑑賞、つまり作品を見るという行為や、語りかけるように私たちに眼差しを送ってくる作品、私たちの視線をさりげなく誘う構図上のテクニックなど、様々な例があるでしょう。 本展では(略)5つのテーマを通して約40点の所蔵品の魅力をご紹介します。
観覧料は500円とお安い。展示フロアはすべて撮影不可。土曜日でも、観覧者は、ほぼいませんでした。
ちなみに「目線」という言葉は、NHK内で「<視線>の意味で<目線>が使われる傾向があるが、部内用語なので、放送ではなるべく使わない」とされています。
以下、5つのセクション順に感想を記します。
1)視線と感情
パッと絵を見た時、まずは人物の目を見ることが多いです。「目は口ほどに物を言う」という諺もあるくらい、目は重要なパーツです。フェルメール《真珠の耳飾りの少女》も、瞳孔に白い点を入れただけで、後世に語り継がれています。

「目の動き」と言えば、歌舞伎の「睨み」。改めて、この表情が「格好いい」と思うのは、日本独特だと思いました。また、展示作品で気になったのは「毛抜きのチラシ」(1896年)でした。毛抜きの形は、今と全く変わらないし、その後ろに描かれている歌舞伎は、毛抜きと全く関係ないのが、少し可笑しかったです。

途中から、伊藤若冲の作品も展示されるなど「これは<視線と感情>とどう関連があるのか…?」と、一部、振れ幅が大きいと思いました。

ギャグみたいな視線の龍が新鮮。
この子はどういう感情なのか…
なお、本展覧会には、すべての作品に、タイトルやキャプションが丁寧に記載されていました。それを見ていると、横手生まれの金子義償、男鹿市生まれの紺野五郎など、秋田県出身の作家が多かったです。
2)導かれる視線
鑑賞者の視線がどう設計されているのかは、あまり考えたことがありませんでした。作家は、鑑賞者がどこに視線を落とすかまで計算し、構図を決めています。
例えば、村上隆は、鑑賞者の視線を想定して、雷神図の雷や雲の形を何度も手直ししたと、インタビューで語っていたのを思い出しました。

このセクションでは、大きな風景の中に、松がちょこんと一本ある作品も展示されていました。視線は自動的にそこへ集中するため「なるほどなぁ」と思いました。また、私は写真撮影で構図を決める時、自然とこのような考えが浮かぶこともあります。そのため、この展覧会では、写真撮影においても、参考になる発見がありました。
3)視線を注ぐ

高橋萬年(秋田市出身)が印象に残りました。ほんわかしたタッチで描く1920年代の大正ロマンな様子は、朗らかな気持ちになりました。
4)作者の視線

絵画だけでなく、佐藤忠良のブロンズ像もありました。下を向いており、どこか悲しげです。佐藤忠良の作品は日本中で見かけます。そして、宮城県美術館(現在休館中、2026年夏にオープン予定)には佐藤忠良記念館があります。是非、リニューアル後に訪れてみたいです。

また、この展覧会で異彩を放っていた三浦明範《再生一月》も良かったです(秋田県大館市出身)。偶然にも翌日、秋田県立近代美術館で個展を見れました。
5)視線の先
描かれている人(動物)の視線によって、鑑賞する人の視線も自然に誘導されます。視線は、何かしらの意味をもちます。ここでも作者の意図に気付かされました。
日本画では、見つめている先が、絵の外にある場合を多く見かけます。

《新撰名誉鏡》では、矢の勢いと、楠木正行の視線により、敵を想像させる仕様になっています。このように、鑑賞者に余白をもたすような間接的な表現に、改めて奥ゆかしさや魅力を感じました。
▶︎ 岡田謙三記念館 感想
千秋美術館内には、常設の岡田謙三記念館があります。岡田謙三は横浜生まれ。1920年代のパリ、1950年代以降のニューヨークをベースとした洋画家として知られています。
岡田謙三のきみ夫人が、約100点を寄贈したことから実現した記念館です。なぜ、きみ夫人が岡田謙三と縁もゆかりもない秋田に作品を寄贈したのか?千秋美術館のリニューアルの時期と、寄贈先を探していた時期が偶然重なっただけだったのでしょうか。
美術館には、作家個人の「記念館」が併設されていることがよくあります。その作家の故郷が、美術館のある市内(県内)であれば理解は早いです。しかし、そうでない場合は、ストーリーが欲しいです。その点を千秋美術館に補足してほしいと思いました。
▼ 川越市名誉市民・相原求一朗の記念館がある川越市立美術館

岡田謙三の画風は、1950年以降、ロスコを意識した画風へ一気に振れます。これを「幽玄主義」、ユーゲニズムと自称していたのはお茶目だと思いました。一方で、ロスコのようなドッシリした印象ではなく、日本の美意識、侘び寂びを加えたように見えました。

中には、淡く朗らかな色が多く、日本の春や秋の花のような印象を受けました。岡田謙三は藤田嗣治とも友達だったらしく、フジタ的な乳白色の影響も見て取れました(藤田嗣治は秋田県立美術館とも関係が深い)。

ニューヨークの風潮に触れたことで「絵は自由でええんや!」と吹っ切れた様子が、少し微笑ましくもありました。1960〜80年代は、自由な時代だったんだなぁと改めて感じました。
なお、2026年2月から、目黒区美術館で「岡田謙三展」が開催予定です。
◾️ 運営方法もリニューアルすべし
多くの観光客は、まず秋田県立美術館に行くと思います。一方で、千秋美術館では、秋田出身作家の作品を見られるため、旅先のお出かけには向いていると思いました。小ぶりながら、キュレーションには丁寧さと工夫を感じました。
なお、運営方法も、設備同様にリニューアルした方がいいと思いました。低反射ガラスに変更したことに伴い、数点は撮影可能にしてはどうでしょうか。そのほか、写真スポットのパネル設置なら低コストで実施できます。
また、千秋美術館は、移転前を含めると、公立美術館の中で歴史がある方だと思います。その歴史をパネルや模型を使って、場所を持て余している1階ロビーで紹介してはどうかと思いました。

▶︎ まとめ

佐竹曙山《竹に文鳥図》
いかがだったでしょうか?秋田にゆかりのある作家の作品をたくさん知ることができ、秋田旅行にもぴったりの展覧会でした。また、絵画の視線には、写真撮影にも応用できる部分が多くあると気づきました。小ぶりな美術館でしたが、丁寧なキュレーションだったため、いつ行っても新しい発見があると思います。
▶︎ 今日の美術館飯

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