鳩摩羅什と玄奘
昨日、曹洞宗で唱える『伝灯歴代仏祖』について書きましたが、そういえば、有名な鳩摩羅什や玄奘三蔵の名前がなかったな、と思い、調べてみました。
鳩摩羅什
(くまらじゅう、梵: Kumārajīva [クマーラジーヴァ]、344年 - 413年、一説に350年 - 409年とも)は、亀茲国(きじこく)(現在の中華人民共和国新疆ウイグル自治区クチャ市)出身の西域僧、後秦の時代に長安で約300巻の仏典を漢訳し、仏教普及に貢献した訳経僧である。最初の三蔵法師。のちに玄奘など、多くの三蔵法師が現れたが、鳩摩羅什は玄奘と共に二大訳聖と言われる。また、真諦と不空金剛を含めて四大訳経家とも呼ばれる。三論宗・成実宗の基礎を築く。

玄奘
(げんじょう、602年 - 664年3月7日)は、唐代の中国の訳経僧。玄奘は戒名であり、俗名は陳褘(ちんい)。諡は大遍覚[1]で、尊称は法師、三蔵など。玄奘三蔵と呼ばれ、鳩摩羅什と共に二大訳聖、あるいは真諦と不空金剛を含めて四大訳経家とされる。

なぜ『伝灯歴代仏祖』には鳩摩羅什や玄奘三蔵は入っていないの?
鳩摩羅什(くまらじゅう)と玄奘三蔵(げんじょうさんぞう)は、中国仏教史において極めて重要な人物ですが、禅宗でいう「伝灯歴代仏祖」には通常含まれません。
理由は、「伝灯歴代仏祖」が何を重視するかにあります。
『伝灯歴代仏祖』とは?
禅宗では、
釈迦牟尼仏・摩訶迦葉・阿難・商那和修・優婆鞠多…というように、
師から弟子へ悟り(仏法の心印)が直接伝えられた系譜
を重視します。
そしてインド二十八祖の最後が達磨大師で、
達磨が中国へ渡り、
慧可・僧璨・道信・弘忍・慧能
へと続くのが禅宗の伝灯の系譜です。
なぜ鳩摩羅什は入らないのか?
鳩摩羅什は、
・法華経
・金剛経
・阿弥陀経
などの優れた漢訳を残しました。
彼は
「経典を翻訳した偉大な学僧」
として尊敬されており、禅宗が重視する「師資相承(ししそうじょう)」の祖師系譜には位置付けられていません。
なぜ玄奘三蔵も入らないの?
玄奘も、
・インドへ赴く
・膨大な経典を持ち帰る
・唯識思想を伝える
という大功績を残しました。
しかし玄奘もまた、
学問・訳経・教学の大成者
であり、禅宗の伝灯系譜の祖師とは別の位置づけです。
禅宗から見た違い
禅宗には有名な言葉があります。
・不立文字(ふりゅうもんじ)
・教外別伝(きょうげべつでん)
つまり、「文字や経典だけに頼らず、悟りを直接伝える」という考えです。
もちろん禅僧も経典を読みますが、
・鳩摩羅什 → 経典翻訳の功労者
・玄奘 → 仏教学の大成者
・達磨 → 悟りを伝える祖師
という違いがあるため、伝灯歴代仏祖には入らないのです。
仏教全体で見た、鳩摩羅什や玄奘の功績
特に日本では、
・最澄
・空海
・法然
・親鸞
など多くの祖師たちが、彼らの翻訳した経典や思想の恩恵を受けています。「仏教史全体の重要人物」と「禅宗の歴代祖師」は、必ずしも一致しないのです。
① 初期仏教
釈迦牟尼仏の時代の仏教です。
釈迦の死後、弟子たちの解釈の違いから分裂が始まりました。
② 部派仏教(20前後の宗派に分裂)
最初に大きく
・上座部(じょうざぶ)
・大衆部(だいしゅぶ)
に分かれました。
さらに分裂を繰り返し、
・説一切有部
「過去・現在・未来の法はすべて実在する」と考えました。
後の中国仏教や玄奘の研究にも大きな影響を与えています。
・経量部
経典を重視し、有部を批判しました。後の唯識思想につながる考え方も
見られます。
・犢子部
・法蔵部
・化地部
・飲光部
など、20近い部派が生まれました。
③ 大乗仏教
紀元前後から発展しました。
特徴は
・菩薩を理想とする
・すべての人の救済を目指す
ことです。
ここからさらに多くの学派が生まれました。
○中観派
祖師は龍樹。
「すべては空である」と説きました。
日本の三論宗や禅宗にも影響しています。
○唯識派
祖師は無著と世親
「世界は心の働きによって認識される」と説きました。
日本の法相宗の源流です。
④ 密教(後期大乗仏教)
6~7世紀ごろから発展しました。
代表者は、龍智や金剛智、などです。
特徴は
・真言
・印契(手印)
・曼荼羅
を用いることです。
日本へは
空海
によって伝えられました。
・初期仏教
・部派仏教
・大乗仏教
・中観派
・唯識派
・密教
以上は、基本的にインド・パキスタン北部・アフガニスタン東部で生まれた仏教の流れです。
南のスリランカ・ミャンマー・タイへ伝わると、上座部仏教が発展しました。
また、北・東の中国に伝わると、
・天台宗
・華厳宗
・禅宗
・浄土教
など中国独自の宗派が生まれました。
ここで活躍したのが、鳩摩羅什や玄奘です。
