うちのAI役員は、わざと視野を狭くしてあります
AIに役割を割り振って意見を聞く。
やってみると、最初はだいたい失敗します。
私の場合もそうでした。
財務担当・法務担当・事業担当という3つの係を作り、それぞれに「財務の視点で意見を述べてください」と渡して、同じ議題を聞いてみた。
返ってきたのは、言葉づかいが違うだけの、似た意見でした。
財務も法務も事業も、最後は「進めていいと思います、ただし◯◯には気をつけてください」という同じ着地点に丸まっていく。役割の名前は違っても、一人の優等生が三役を演じているのと変わりません。
そもそもなぜ社員のいない会社に部門があるのか、という話は前回書きました。
連載01「AIに相談したら、都合よく賛成された。欲しかったのは反対意見だった。」
https://note.com/nansu_lab/n/ne3055d4fa696
役割と立場は別物だった
しばらく原因がわからず、指示文を長くしたり、口調を変えたりして試しました。効いたのは、そのどちらでもありません。
「財務の視点で見てください」という指示は、実のところ何も縛っていないのです。視点を渡しても、その視点から何を恐れるかを渡していなければ、AIはいちばん角の立たない答えを選びます。役割は肩書きにすぎず、行動を決めているのは立場、損得の構造のほうでした。
そこで、意見を求める前に、それぞれの「失敗の定義」を固定することにしました。
財務担当には、会社を潰さないことが唯一の仕事で、売上や関係が多少犠牲になっても構わない。
法務担当には、後で揉めないことが唯一の仕事で、目の前の機会を逃しても構わない。
事業担当には、顧客との関係を壊さないことが唯一の仕事で、多少コストがかかっても構わない。
そのうえで、総合判断はしなくていい、その立場だけで言い切ってくれ、と付け加えました。
対立が起きて、初めて役に立った
効果はすぐ出ました。
新しい仕事の依頼を受けるかどうかを聞いたとき、事業担当は間髪入れずに賛成しました。関係を続けられるならやるべきだ、と。
法務担当は、契約書の条項が未整備なまま着手するのはリスクが高すぎると止めに入った。
財務担当は、入金までの期間が空くと当面の資金繰りが厳しくなると数字で反対しました。
三人とも、自分の持ち場から一歩も譲りません。
正直に言うと、最初は面倒だと思いました。一つにまとめてくれたほうが楽です。でも続けてわかったのは、この面倒さこそが欲しかったものだということでした。
全員が賛成する提案は、たいてい誰も本気で検討していない提案です。誰かが本気で反対して初めて、見落としていた条件が言葉になる。
議題のかけ方
議題を投げる前に、「今回は誰の失敗の定義をいちばん厳しく効かせるか」を決めてから聞くようにしています。同じ三人でも、出てくる意見の温度がまるで違う。
逆に言えば、それを決めずに投げた会議は、いまでも優等生の合唱になります。三人の設計が悪いのではなく、議題の投げ方が悪い。ここはまだ毎回うまくいっているわけではありません。
次回は、最初に予告したお金の話に戻ります。
売上はあるのに口座にお金がない、という状態がなぜ起きるのか。
AI経営チームの連載の続き、「会議のかけ方と、意見が割れたときに誰がどう決めるか」については、その次の回に書きます。
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