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連載小説「オボステルラ」 【第四章 狼煙の先に】  17話「巨大鳥」(3)


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17話「巨大鳥」(3)


 「今日は、このエリアを集中的に探そうか」

 今、一行がいるのは、遺跡がある周辺のエリアだ。これまでの鳥の動きを考慮して回るエリアを絞ることにした。4組のエリア分けを行う。

「お昼ご飯は各自で取って、夕方まで見つからなかったら、また僕が集合の狼煙を上げるよ。いつも通りだ」

「じゃあ、気をつけてね」

 そう言って散開する一同。今日はゴナンがリカルドの前に乗馬している。馬の扱いを覚えるためで、手綱もゴナンが握っている。

「うん、だいぶ上手になってきたよ。もう、1人でも乗れるんじゃないかな?」

「ほんとう?」

 嬉しそうに振り返るゴナン。リカルドは微笑みながら、「ほら、前を見ないと危ないよ」と声を掛ける。

(…今日、話さないと…。今日…)

 ゴナンの後ろ姿を見ながら、リカルドはずっとそう、考え続けている。しかし、なかなか話を切り出せない。話したら、それはもう、ゴナンとの別れを意味するからだ。しかし、昨晩ジョージには切り出しているのだ。話さないと、話さないと…。

「…リカルド…。そろそろ、お腹空いたな」

 そうこうしている内にあっという間に数時間が経っていた。もう、午後も半ばの頃合いだ。

「…! あ、そうだね。お腹空いたね。もうこんな時間か、ごめんごめん」

「…?」

 いつもなら、お昼の時間帯になると喜々としてピクニックセットを組み上げるのに、今日はずっとボンヤリしていたリカルド。ゴナンは心配そうに顔を覗き込む。

「大丈夫? 発作が起こりそう?」

「ああ、違うよ、大丈夫だよ。ごめん、心配かけて」

 リカルドは前方に見えてきた泉を指した。

「あそこのほとりでご飯にしようか」

「…! あ、うん…」

 ゴナンは少し驚いた。そこは、例の遺跡に最寄りの泉だったからだ。いつものリカルドなら無意識のうちに避けて回る場所だが、今日はゴナンが手綱を持っていたこともあり、いつの間にかこの近辺に来てしまっていた。しかし、リカルドはそのことを気にしている雰囲気はない。もっと違うことに、気持ちを持っていかれている様子だ。

 馬を下り、泉の縁に敷布を敷いて、持参した軽食を広げるリカルド。しかし、やはり、なんだか気もそぞろだ。

「リカルド?」

「…さ、食べよう」

「? うん…」

 そうして、いただきますをして、無言で食べ始める2人。今日は、クックー肉のソテーと焼き野菜を挟んだサンドイッチだ。お腹がペコペコだったゴナンはあっという間に平らげてしまった。そしてリカルドを見ると、手が全く進んでいない。

「…リカルド…?」

 心配げに声をかけるゴナンに、リカルドはハッとした。

「…大丈夫?」

「ゴメンゴメン。なんだか、食欲がないみたいで。これもゴナンが食べてしまってよ。入る?」

「うん…」

 首を傾げながらもリカルドのサンドイッチを受け取り、そしてペロリと食べてしまうゴナン。青少年らしい食欲が健やかで、リカルドはふふ、と微笑み見守った。

 結局、リカルドが話を切り出せないまま昼食は終わる。荷物を馬に載せ、ゴナンも練習用に保ってきていた弓矢や剣を自身に装備し、そして馬に乗り込もうとしたとき、ようやくリカルドは意を決した。

「……ゴナン、馬に乗る前に、ちょっと、話をしたいんだ」

「…えっ、今? うん」



 ゴナンは一度解いた馬の手綱を木に結び直し、リカルドの脇に来る。また、池の縁に座る2人。とにかくリカルドの様子がおかしい。心配げに覗き込んでくるゴナンの顔を、リカルドはふっと微笑んで見返した。

「…リカルド、どうしたの? 話って…」

「…うん、ゴナン。あのね。僕は、ゴナンに、できる限り良い人生を送ってほしいと思っているんだ」

「……?」

「そのためのゴナンの最良の居場所は、僕の隣ではなくて、先生のお屋敷だと思う。ゴナン、僕らの旅からは離れて、先生達の元で暮らしてはどうかな?」

 リカルドは泉の水面を見ながら、ゴナンについに切り出した。

「え…?」

「…君も、この街ではとても楽しそうに過ごしているし、勉強に遊びに、友達に食べ物に、きれいな空気に、全てが揃っているんだ。ウキは、君が暮らすのに最も適した場所なんだよ。君が、エドワードくんを通して憧れていた『普通の暮らし』だって、すぐに叶う…」

「……」

「先生達には先に話していて、君さえ良ければ喜んでゴナンを受け入れるって。君だって、ここで暮らしたいって思っているだろう? 僕なんかの旅に、付き合わされるより…」

「……」

「ね? ゴナン、どうだろう…」

 リカルドはゴナンの方を見て話すことができない。泉の水面に語りかけるかのように言葉を続ける。しかし、ゴナンからは何の反応も返ってこない。リカルドもゴナンの返事を聞くのが怖くてそのまま黙ってしまった。



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