連載小説「オボステルラ」 【第三章】13話「1年前、そして」(7)
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13話 「1年前、そして」(7)
「ディル!」
拠点を出て歩みを進めようとしていたディルムッドを、リカルドは追いかけて呼び止めた。
「…リカルド殿、貴殿までその呼び名は…」
「王女様のご命令だからね。僕のことも呼び捨てでいいよ。それより、これからどうするのかが気にかかって」
「……?」

「…ゴナンも、ちゃんとお礼をしたいと思うし、もちろん僕も…。もう少しこの街に居てもらえると嬉しいのだけど」
「そうだな…」
ディルムッドは腕を組み、少し思案する。
「…あの鉱山に関する調査にもう少し協力せねばならないだろうから、当分は滞在することにはなるだろう、それに…。私はルチカを捕らえないといけないように思う」
「ルチカ?」
深く頷くディルムッド。
「…そもそも、ただの機械士にしては身のこなしや格闘術に長けすぎているし、なぜ、今、ミリア様を攫おうとするなど敵対する行動を取ってくるのかも謎だ。もしかしたらこれまでも、別の目的があって王城に潜入していたのではないかとすら、私は考えている」
「あ、ああ…」
ミリアを連れていこうとしたのは、ルチカが巨大鳥の卵を追っていて、自分達もそうであるという事情があるのだが、説明が長くなるため、リカルドは話そうかどうか躊躇する。
「それに、あの武器…。王太子殿下の命を奪ったものとよく似たものを作り、携え、それを我々の前で使うとは…。何を考えているのだ。殿下の友人で、あったはずなのに…」
ギリ、と歯を噛みしめるディルムッド。その迫力にリカルドは少したじろいだ。
「…失礼。ともかく、この街でまだやることも多いので、しばらくはいるだろう」
「だったら、ついでに王女様を護ってくれるといいのになあ。せっかくなら、同じ宿に泊まるだけでもいいのに」
そう、薄く微笑みを浮かべて提案するリカルドに、ディルムッドは一瞬、目を見開いていたが、すぐにふっと笑った。リカルドは首を傾げた。
「…何か?」
「いや、どういういきさつでミリア様が貴殿等に王女の身分を明かし、かつ行動を共にしているのかは分からないが…」
それは、王女様が余りにも嘘をつくのが下手だったからであり、王女様に脅されたからであるが、リカルドは口にはしない。
「……リカルド殿にミリア様が懐いている理由は、何となくわかった。貴殿の振る舞いは、どこか王太子殿下に似ている」
「ん? 僕、懐かれてるっけ?」
「…まあ、ミリア様は元々、人懐っこく他人を信じやすい質で、野良犬にさえ親しげに話しかけて着いて行ってしまいそうだと、王太子殿下は心配されていたものだが…」
ああ、そういうところはあるなあ、とリカルドは苦笑いする。
「その、貴殿の飄々とした、人を食ったような、少しうさんくさい態度というか、その感じが、私に王太子殿下を思い出させる」
「その物言いは不敬罪に問われるのでは?」
ふふっ、とディルムッドはまた、笑って、歩みを進める。
「ともかく、私はミリア様の傍にいる資格はない。護衛はナイフ殿とエレーネ殿がいれば十分であろう。…また、ゴナンの見舞いには来る。それでは」
「あ、どこに滞在しているかを教えてもらえれば」
「警察だ。牢の中に泊めさせてもらっている」
「は?」
ディルムッドは手を振り、去って行った。
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