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連載小説「オボステルラ」 【第五章 巨きなものの声】  11話「もう一つの遺跡」(3)


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11話「もう一つの遺跡」(3)


 二人の頭上で石扉がピシャリと閉まり、真っ暗闇に襲われる2人。ディルムッドが開けようと試みるが、彼の力を以てしても、ピクリとも動かないようだ。

「……堅牢な石の扉のようだ…。閉じ込められてしまったか……」

「もともと閉まっていたものが、今日、何かの弾みで開いていたのだろうか…。ああ、しまった。発光石のライトが必要だったな。うかつだった」

 そう反省するリカルドに、ディルムッドが応じる。

「いや…、結局、私がまた、頭に血を上らせてしまっていたようだ。照明にまで思いが至らなかった」

 と、石扉の外から声が聞こえてきた。

「ちょっと、リカルド、ディル、この中にいるの?」

 ナイフの声だ。気配の変化を察して来たようだ。ひとまず、ここに閉じ込められたことに気付いてもらえてホッとする2人。

「ナイフちゃん! この中だ。恐らくここが、資料に書かれていたもう一つの遺跡だ。僕らが入るまでは開いていたんだけど、急に閉じてしまって……」

「えっ、そうなの?」

 そう聞いて、ナイフはなんとか石扉を開けられないかといろいろ試してくれている音がする。が、やはりビクともしない様子だ。

「ナイフ。このなかにはルチカがシマキを追って飛び込んでいるんだ。近くに2人の気配はないから、おそらく奥まで続いている」

「卵男が?」

「ナイフちゃん、僕らはひとまず、通路を進んでみるよ。引き続き外から、何か開ける仕掛けがないか探してもらえるかな?」

 リカルドの言葉に「わかったわ、気をつけてね」とナイフ。

「よし、進むか…」

 と、ディルムッドが先導して、石段をゆっくり降り、暗闇の通路を進み始めた。漏れ来る光が全くない、完全な暗闇。互いの呼吸音と足音だけが鳴り響く。

「いやあ…、なかなか怖いものだね。これほどまでに真っ暗だと」

「そうだな…。リカルド。離れないように、私のベルトを持っていてくれ」

 通路は、人2人がギリギリすれ違える程度の幅のようだ。ディルムッドは両手を両壁に沿わせながら慎重に進む。

「……触った感じ、両壁は石積みのようだ。人工的に作られているのは間違いなさそうだが、『あの壁画の遺跡』と同じ者が作っているのかもしれないな」

「……」

(と、しまった…)

 巨大樹の絵がある遺跡の話題を出した途端、リカルドの反応が消える。ディルムッドは慌てて話題を変えた。

「……それにしても、ルチカは神出鬼没だな」

「そうだね…。でも、彼はきっと僕らよりも巨大鳥や卵に詳しいし、最も情報を把握しているようにも思える」

「それだけに、厄介な存在でもあるが…」

 ゆっくり、ゆっくり、ひたひたと歩みを進める2人。少し進んだ頃、先を進むディルムッドがふと足を止めた。

「ん?」

「どうした?ディル」

 少し先、足元に人の気配がある。1人…。そのまま慎重に足を進めると、何者かがズボンの裾を握ってきた。

「おっと」

「ディル?」

 ザッと後ずさり剣に手を伸ばすディルムッド。リカルドも警戒する。

「……あ、その声は、ディルさん? ……と、リカルドさん?」

「! ルチカか?」

 どうやら、ルチカが足元に座り込んでいるようだった。待ち伏せか、と2人は警戒したものの、先ほどとは打って変わり、ルチカの声はあまりにも弱々しかった。

「ルチカ? 一体何を…? 暗闇に身がすくんだのか? それとも毒矢を受けたか?」

 そう声をかけるディルムッドに、声を震わせてルチカが答える。

「……あ、の……。散々、邪魔したり、ミリア…、さん、攫おうとしたり……、足蹴にしといて、ふてぶてしいお願いなんだけども……。恥を忍んで…。出口まで、連れて行ってほしいというか……。う……、うぅ……」

 声が細く、絞り出すのもやっとという感じだ。しかし、すぐに首を振ったようだった。

「……ああ、やっぱり何でもない……。とにかく、この場は、私は何もできないから……、行って……」

「?」

「……う…」

 何かうなされるような声が、ルチカから漏れてきている。ディルムッドは怪訝に感じて、かがんで手探りでルチカの肩に触れた。と、身体がガクガクと、恐ろしく震えていた。

「……、おい、どうした? こんなに震えて、何が…」

 リカルドもかがんで、ルチカの腕に触れて様子を見る。ブルブルと、リカルドの腕まで振られるほどに震えている。ただ暗闇に身がすくんだ、というだけではなさそうだ。

「ルチカ?」

「……いや、昔、ちょっと事故に遭って、この、ま、真っ暗で狭い場所っていうのが…、どうにも…、ううっ」

 嘔吐したようだ。激しく咳き込み、息が徐々に荒くなる。リカルドはそのまま手首を取って脈を診たが、とても早い。

「ゴホッ…。……見ての通り、う、動けないから、何もしないから……、どうぞ、お先に……。う……」

 ぐぐっと地面にうずくまった様子のルチカ。尋常ではない様子の中でさえ強がりをいうルチカに、ディルムッドはふう、とため息をついた。

「…動けないままここで震えて死ぬのか? こんな場所がお前の死地でいいのか?」

 そう言ってディルムッドは、「失礼」と震えるルチカの体を両手で抱えて持ち上げた。

「顔見知りのよしみだ。残して行くと後が面倒そうだし、こちらの気分も悪い。いいかな、リカルド」

「ああ、もちろん」

「ん……?」

 ふと、ディルムッドは何かに気付いた。が、ルチカは気を失ってしまったようだった。

「ディル?」

「あ、いや。後で確認しよう。それより出る方法を見つけないと」





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