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連載小説「オボステルラ」 【第五章 巨きなものの声】  11話「もう一つの遺跡」(1)


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11話「もう一つの遺跡」(1)


 その夜。石室内を寝床に選んだ一行。

 テントを一張り持ち込んで最奥に張り、さらに敷居の布を張って、ミリア・エレーネはその中で、他の面々は寝袋や寝具で寝ることにする。外の寒さを感じることなく暑くもない、とても快適な空間だ。 

「すごく、寝心地がよかったわ」

 翌朝、ミリアはとてもスッキリした表情で起きてきた。ゴナンとディルムッド、ナイフは例によって早起きで、外で朝練を済ませている。遺跡から50mほど離れた場所にある小さな泉で汗を流していた。

 ちなみに、ディルムッドに鍛えてもらっているというミリアだが、朝練には参加しない。エルダーリンドへの道程の途中、一度、朝の鍛錬に出てみたが、ひどく疲れてしまいその日はぐったりと動けなくなってしまった。体力の問題があるので、いまはまだ、夕食前の少しの時間にディルムッドが見ている程度だ。

「おはよう、ミリア。確かにすごく寝心地良かったな」

 顔を洗いに来たミリアにゴナンも応じる。そしてミリアの寝癖に気付くと、直るようにと毛先を水で濡らしてあげている。相変わらずの甲斐甲斐しさだ。

「気温もちょうど良かったし、でも、どこかに空気が通る穴があるみたいだな。息苦しくもならなかった」

「そうね。やっぱり、大昔には誰かがあそこに隠れ住んでいたのかもしれないわね」

 そんなことを話しながら、ゴナンはミリアと遺跡の方へと戻っていく。ナイフはじっと、その2人の後ろ姿を見ている。




「どうした? ナイフ。何かあったのか?」

 声をかけてきたディルムッドに、ナイフは少しだけ考えて、尋ねた。

「……ただの興味本位なんだけど、貴族の人達って、子どもの頃から婚約者が決まっていたりするわよね?」

「……ん? ああ、そうだな」

「王女様もそうなの?」

「我が国の王子王女の場合は、影武者のこともあり、少しだけ事情が変わるな。婚約者候補の方が複数人選ばれるが、婚約が確定するのは成人後だ。未成年の間もお顔合わせはあるにはあり、話もある程度までは進むが、もちろん影武者とも一緒に会うことになる。王妃や王配となるためにある程度教育を成されている人物である必要もあるし……」

「へえ…」

「過去には、婚約者候補者と影武者の方が恋に落ちて云々…、などというややこしい事態もあったりしたようだが」

「ふーん…」

 ディルムッドがポロリと口にした王家スキャンダルも、とても興味を惹かれるものではあるが、ナイフは生返事をしてゴナンとミリアの後ろ姿を見続ける。

「……ああ、だが、ミリア様はまだ、候補の方々とお顔合わせはされていなかったように記憶する。ご年齢を考えると、遅いくらいではあったのだが」

「へえ、なんで?」

「……その…、王太子殿下の、ご意向で……」

「……?」

「……ミリア様の婚約者がいるのかどうかが、気になるのか? 確かにミリア様のご不在に気付かれてしまっては、ことだが」

 そう尋ねるディルムッドに、ナイフは少し冷めた目線を送る。

「……気になることがあるにはあるんだけど、よくよく考えたら、その相談をすべき相手は、あなたではない気がするわ。そういうことには鈍そうだから」

「?」

 教えてくれてありがとう、とナイフは先に、1人遺跡の方へと歩いて行った。

*  *  *

 「少し早いかもと思っていたけど、もう巨大鳥がこのエリアに来ていてもおかしくないかもしれないね」

 朝食後、石室内で、皆で作戦会議を始めている。ゴナンが巨大鳥と別れた場所や、リカルドが最後に巨大鳥を見かけた場所と日にち、気流と距離を検討して、リカルドがそう予測を立てた。

「この付近で、同じ水脈と思われる水場はそんなに多くはないから、ウキの時ほど広域な探索にはならないね。でも、狼煙の合図は忘れずに行おう」

 そうして、ウキのときと同じように4頭の馬で4手に分かれて探索することにしたが、荷物番も必要なので、ついにゴナンも1人立ちすることになった。ひとまずはエレーネが荷物番で幌馬車に残り、ゴナン、リカルド、ナイフ、ミリア&ディルムッドが4頭の馬にそれぞれ乗る。

「ゴナン、操馬が心配だったら狼煙を上げてね。すぐ駆けてくるから」

「大丈夫だよ」

 例によって心配性なリカルドに、ゴナンはそう、あっさりと答え、そして馬の頸をよしよしとなでた。ゴナンが今、乗っているのはリカルドが酷使してしまった馬だが、なんだかゴナンにはきちんと懐いているように見える。

 そうして、それぞれの持ち場に散った。少し緊張しながらも、すぐに馬に慣れてきたゴナン。ウキの街に滞在していたときと同じような探索が始まり、ゴナンは「みんなのところに帰ってこれた」という、どこかホッとした気持ちを、強く持っていた。

(いつまでも鳥と卵を探し続けるってことは、いつまでも手に入れられないってことだから、良くないんだけど…)

 でも、皆で旅して、楽しく野営をして、同じ目標を目指す、今のこの安心して頑張れる時間が少しでも続いてほしい……、そんな矛盾した気持ちを抱いてしまうゴナン。

(……だめだ。こんなことを考えてしまったら、本当に見つからなくなってしまう…、かも…)

 ゴナンはそう、首を横に振って、自らの甘い考えを戒めた。目の前の楽しさにかまけてしまってはいけない、そう気を引き締めて、空へを目線を上げた。





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