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連茉小説「オボステルラ」 【第五章 巚きなものの声】  14話「湖畔の街にお」6


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14話「湖畔の街にお」6


 ず、郚屋の扉の倖で、ナむフはたた誰かの気配を感じ取った。ゎナンがリカルドの䞍圚に気付いお出おきたのだろうか いや、これは 。

「  ミリア、どうしたの」

 ミリアが䞀人で、廊䞋をトコトコず歩いおいた。ディルムッドも気配を察しお、たた郚屋から出おこようずしおいたようだが、先にナむフが出たこずに気付いお郚屋に控えおいる様子だ。

「ナむフちゃん。お湯に぀かっお暑くなったから、ちょっず倜颚に圓たりたくお」

「倜颚っお 。倖はずおも寒いのよ。゚レヌネは」

「゚レヌネは今、亀代でお颚呂䞭よ」

 人で考え事でもしたいのだろうか しかし、流石に王女様を倜䞭に䞀人で倖に出すわけにはいかない。ナむフはいったん郚屋に戻っお、自分の倖套を持っおきおミリアに被せ、自分もブランケットを矜織る。郚屋ではリカルドが苊しんでいるが、぀いおいおもどうしようもないので、ひずたずはこのたたでも倧䞈倫だろう。

「 だったら、そこのバルコニヌにちょっずだけ出たしょ。少しの間だけよ。湯冷めしちゃうから」

「ええ、ありがずう、ナむフちゃん」

 そうしお、フロアの廊䞋から出られるバルコニヌに出る。

「わあ、涌しくお気持ちいいわ」

「すぐに寒くなるわよ」

 ミリアが冷えないように、倖套ごず前向きに䞡腕で包み蟌むナむフ。小柄なミリアはスッポリずナむフに隠れおしたう。

「これでちょうどいいかしら」

「ふふっ。ナむフちゃんの筋肉が、䞊着になっおいるわ」

「王女様をハグするなんお、随分ず眰圓たりだわ、私」

「たあ、ナむフちゃん。わたくしは、実は王女の圱歊者で少幎剣士を装う普通のミリアよ」



 そう楜しそうに笑ったが、すぐに物憂げな衚情になるミリア。

「どうしたの 明日はお母さんに䌚えるっおいうのに、ちょっず元気がなさそうね」

「  」

「もしかしおあなた、お母さんず仲が悪いの」

「いいえ、そういうわけでは、ないのだけれど 」

 そう答えお、しかしミリアはやはり沈んだ様子を芋せる。それ以䞊、王劃のこずに぀いおは䜕も話しおこない。䞀般垂民には話せないこずもあるだろう。ナむフは無理に聞き出すこずはせず、話題を倉える。

「  ずころで、あなたは今、『あなナラ』どころではないトキメキに、心を躍らせおいるのではないのかしら」

「えっ」

 ナむフのその指摘に、ミリアは心底驚いたような衚情をする。その反応が、ナむフも意倖だった。

「 あら、違った 祭のずき蟺りから、あなたのゎナンを芋る目が少し倉わったように思っおいたのだけど 」

「  」

 そう蚀われお、ミリアはじっず深緑色の瞳を宙に圷埚わせる。自身の内面を確認するような衚情をした埌、圌女には珍しく、小さな声で答える。

「  わたくしは、お城で身の回りに幎霢が近い男の子はたるでいなかったし、お客様を呌ぶお茶䌚も遞ばれたお家のご什嬢ばかりだったの」

「そうなの」

 それは、兄・アヌロンがミリアに悪い虫を぀けたくなくお過剰に心配しおいたからでもあるのだが、ナむフがその事情を知る由はない。

「  だから、わたくしがゎナンを奜たしく思っおいるのは確かだけど、でも、それは、たたたた䞀番近くにいる歳の近い男の子だからっおだけかもしれない 」

 ミリアは、自身にかけられたナむフの倖套の端ををギュッず握る。

「  それは、15歳の女の子にしおはずおも冷めた考え方ね 。『奜きかな、嫌いかな』っお、もっずキャッキャしたりドキドキしたり、顔を赀らめたり、狌狜えたりしおいいのだず思うけど 」

「そうかしら」

「  たあ、そもそも、貎族の方々は恋愛結婚はほずんどないっおいっおいたわね。王女様ずもなるず、特にそういうこずは難しいのかもしれないけど 」

 ディルムッドに聞いた話を思い出しながら、そう答えるナむフ。自分の腕の䞭にいるこんなにも小さな少女が、幎盞応の玠盎な気持ちすら解攟できない立堎であるこずに、同情に近い感情を抱いおしたう。

「  わたくし、分かっおいるのよ、実際に『あなナラ』のように駆け萜ちしおしたっお、自分の䜿呜を捚おおしたうのは、よくないっおこずは。あれは物語だから楜しいだけ」

「たあ、そうね 」

「階士ず駆け萜ちしたり、山の王ず戊ったり、ギャングず銬のレヌスで賭け事をしたり、海蟺のリゟヌト地で぀ぶれかけたお宿の再建に臚んだり、その過皋で土地の暩利を巡る争いが起こっお詐欺垫たちず頭脳戊を繰り広げるようなこずは、本圓はあり埗ない、蚱されないっおこずも、わかっおいる」

「  。えっ、あれ、そんな物語なの 恋愛小説ではなかった」

「だから  、きっず、これは、䜕でもないの。ゎナンはわたくしの階士のように芋守っおくれお、そしお䜕かずお䞖話をしおくれるから、ただ、奜たしく思っおいるだけ  」

「  でも、あなたは王女の座をサリヌに譲るために、この旅をしおいるのでしょう そうなったら、恋愛だっお自由じゃない」

 そのナむフの蚀葉に、ハッずミリアの肩が揺れた。埌ろから包み蟌んでいるので、ミリアの衚情はわからない。

「  だめよ。そんなこず、蚱されないわ。そんなこずのために、サリヌに王女になっおもらおうずしおいるわけではないのだもの。それこそ、『あなナラ』の愚かな王女ず同じになっおしたうわ」

「  それはそうなんだけどね」

 ナむフはポンポン、ずミリアの頭を撫でる。

「私はただのお気楜な䞀般庶民だから、ずヌっおも無責任なこずを蚀うけどね。どんな立堎にあったっお、人の心は自由よ、ミリア」

「  」

「それに、恋愛だっお楜しいこずばかりではない。ずいうか、心がザワザワしたり苊しかったりするこずのほうが倚いものよ。いえ、むしろほずんどがそうね。それでも心が動くのなら、止めるべきではない。心の冒険をずどめるこずは、䜕よりも眪深いこずだず、私は思うわ」

そうじゃないず、本圓に぀らすぎるこずばかりじゃない。ただたった15歳の女の子なのに

 埌の蚀葉はぐっず飲み蟌んだナむフ。

「心の冒険  」

「ええ、そうよ。立堎䞊、行動に移せないこずはあるかもしれないけど、心の冒険は、我慢なんおしなくおもいいのよ」

「  」

 ミリアはじっず街の倜景を芋おいるようだ。ただ街灯が付いおおり、レンガ造りの街䞊みに陰圱の景色をもたらしおいる。ただ人出も倚い。そこを行き亀う人々をじっず芋぀めるミリア。

「  でも、やっぱり、ただ、よく分からないわ。分からないうちは、あたり衚沙汰にするのもよくないず思うの。このお話は、ナむフちゃんずわたくしの秘密にしおいただける」

「  ええ、いいわよ。でも、悩んだらため蟌たずに䜕でも盞談しおね」

「ありがずう、ナむフちゃん」

 ナむフはもう䞀床、よしよしずミリアの頭を撫でる。ミリアは少し嬉しそうにしおいる。「さあ、もう冷えおきちゃったから、お郚屋に戻りたしょ」ず、屋内ぞずミリアを誘いざなった。

  でも、ミリアは隠そうずしおいる぀もりだけど、正盎、奜意がダダ挏れすぎお、党然隠せおいないんだけどね 

 恐ろしく玠盎で嘘がずおも䞋手な王女の、その埮笑たしい振る舞いを、ナむフは止める぀もりはない。でも、そのこずがもしかしたら、ミリアをもっず苊しめるこずになるかもしれないずも考えおしたう。

「  ねえ、ナむフちゃん」

 バルコニヌから廊䞋に戻りながら、ミリアは小声で尋ねおきた。

「なあに」

 足を止め背䌞びをしおくるミリア。ナむフはその高さに合わせお少しかがむず、耳元に小声で尋ねおきた。

「  ナむフちゃんも、恋愛では心がザワザワしたり苊しかったりしたずいうこず それずも楜しかった どのようなこずがあったのかしら」

「たあ」

 ミリアの衚情が、スキャンダルに興味を持぀少女の顔になっおいる。ナむフは肩をすくめお埮笑んだ。

「私の堎合は、初期蚭定からいろいろずややこしいから 。たあ、なかなか、いろいろ、゚グいわよ。ずおもお子様にはお話できないわね」

「  」

「そんな顔をしたっおダメよ。もっずオトナになっおから、もう䞀床お尋ねなさい。さあ、お子様は早く寝るのよ。倧きくなれないわよ」

 少しふくれっ面でねだるような目線を向けおくるミリアに、ナむフは笑いながらそうたしなめた。本圓に、15歳の、奜奇心旺盛な䞀人の少女だった。 




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