芋出し画像

連茉小説「オボステルラ」 5話「圌方星の䞋で」


<<第4話   || 話䞀芧 ||   第6話>>
登堎人物


5話  圌方星の䞋で



 その日の午埌から、䞀同は動き始めた。

 長兄・次男・䞉男の䜓力組は、集萜の方ぞ氎を届けた埌、リカルドの蚈画に沿っお抌し車を䜿っお石を集めに行った。

リカルドはアドルフずゎナンを䌎っお、珟地調査ぞず赎く。

「俺はこっちにいおも圹に立たないから、石運びの方を手䌝うよ」ずゎナンは枋ったが、ゎナンの䜓が心配だった人は無理矢理匕っ匵った。

 そうしおゎナン達がやっお来たのは、泉よりも少し西偎にある荒野。ずいっおも、ここもか぀おは緑が生い茂る草原だったのだが。

「さっきアドルフさんがおっしゃっおいたのは、ここですか」

「ええ、蚀われおみれば確かに、この付近は割ず最近たで枯れおいない草が採れおいたんですよ」

 アドルフにそう聞き、リカルドは少しくがんだ䞀垯ぞず進んだ。土を觊ったり、手持ちの朚のスコップで少し掘っおみたり。倪陜を芋お、䜕かの道具を取り出しおは方角を図ったりもしおいる。アドルフは興味接々でいろいろず質問する。人ずも楜しそうだ。

 「ゎナン、来おごらん」

 退屈そうにしおいるゎナンに気付いお、リカルドが呌んだ。

「恐らくなんだけど、枯れた泉ずお屋敷様の井戞は、氎脈が違うず思うんだよね。泉は北東偎の方からだず思う。あっちの地域も干ば぀が続いおいるず聞いおいるから、山に氎が無いんだろう」

「井戞の方は、川ず倧本は同じずいうこずですか」

「うヌん、でも、川の氎もずいぶん枛っおいるようだったし、なんずも蚀えないけど 、この感じだず、お屋敷様のずころの氎脈に近いのは間違いなさそうかな。もしかしたら、真西の方角かもしれない。あちらの高地は、䜕か気候が倉わったような話は聞いおいないから」

 北の広倧な山地、そしお西の高地、それぞれの向こうには隣囜・゚ルラン垝囜の領土ぞず぀ながっおいる。

「他所の倩気の話、どうしお知っおるの」

「たあ、旅先の宿やバヌで知り合った人から聞いたり、かな  今は呚蟺の囜ず争いは起こっおいないから、囜境を越えお旅や商売をしおいる人が倚いんだよ。僕もここに来る前ぱルラン垝囜の方にいたしね。たあ、逆に人の行き来が少ないこの村の情報は、たったく届いおいなかったわけだけど 」

「ぞえ 」

 隣囜から旅をしおきた、ずいうスケヌル感に、ゎナンが目を茝かせお話を聞いおいる。

「この土、觊っおみお」

30cmほどスコップで掘った土をすくい䞊げお、ゎナンに持たせた。

「しっずりしおいる 」

「湿気があるね。ここは、行けるかもしれない。少し窪地だから、そこたで深く掘らなくおも氎が出るかも」

アドルフもワクワクず土を觊った。

「 なるほどなあ。そうやっお氎脈を予想するんですね。村人が元気なうちに早く知っおいればなあ 」

 どれだけ知識が豊富でも、この村にいるだけではどうしおも限りがある。リカルドはふず、疑問に思っおいたこずをアドルフに尋ねた。

「そういえば泉が枯れ始めたずき、井戞を掘ろうずいう話にならなかったのですか」

「もちろん、なったさ」

アドルフは䞡手で土をもおあそびながら、吐き捚おるように続けた。

「この村で氎脈を探すのは、占い婆さんの圹目なんですよ」

「ああ 」

んずリカルドは疑問を抱く。

「でも、この村には井戞はないですよね これたでに占い垫さんが探し圓おた氎脈は」

「過去にあったかは分かりたせんが 。最近だず、1぀だけありたすよ。お屋敷様の家の䞭の井戞です」

「なるほど 」

アドルフは䞡手ですくった土をザザッず䞋に萜ずす。

「なたじ実瞟があったものだから、その婆さんが占った堎所を56箇所は掘ったかなあ。䜕にもでなかったけど。挙げ句の果おに、掘った穎の土が厩れお埋たっおしたう人が出おしたう有様で」

「呚りを固めながら掘らないず、厩れおしたいたすから」

だからこそ、リカルドは兄達に倧量の石集めを䟝頌しおいる。

「で、その婆さんも半幎前に死んでしたっお、占いの埌継ぎがいなかったから、だれも氎脈を探すこずができない、ずいうこずになんです」

兄匟達が觊れがたい村の掟なのだろう。この村人達はずっずそうやっお、生きおきたのだ。

「ここ、氎出るかな」

 ゎナンがリカルドに、真っすぐな質問を投げおきた。アドルフは少し耇雑な衚情をする。氎が出おも出なくおも、きっず村の䜕かの感情を掘り起こすこずにもなる。

「正盎、最終的には掘っおみないず分からないんだ、こればかりは。でも、最善を尜くすよ」

そうしお、ニコッずアドルフずゎナンに笑いかけた。

「出なかったら、たた次を掘ればいい。呜が続く限りね」

冗談なのか本気なのか、笑顔でそう語るリカルドに、ゎナンは少し空恐ろしさを感じおいた。

*******************

 それから数日かけお、石を集め、珟地を調べお掘る堎所を決め、掘る道具をなんずか調達する、ずいう䜜業を、極力、村人やお屋敷の方に感づかれないように行った。

 氎を集萜に届け぀぀、リカルドはアドルフずゎナンを䌎っおお屋敷様も床々蚪問した。ゎナンの家にきちんず定期的に氎や食材が届くように、念抌しのためだ。ずいっおも、ゎナンには3人がただの䞖間話をしおいるようにしか芋えないのだが 。

兄ちゃんも悪い倧人じゃないか 。

 持お䜙しおいるず、い぀も3人を迎える門番の壮幎の男性が、郚屋の隅からじろりずゎナンを芋おくる。ニコリずもしない。譊戒されおいるのか、良く思われおいないのは間違いなさそうだ。


「あの屋敷には、週に1床、どこからか食材の䟿が来おいるようだね。それだのに村人からも氎ず亀換で食べ物を集めるなんお、匷欲なお方だ」

お屋敷からの垰り道、リカルドがそう分析しおいた。そもそも、そんなに頻繁に人の出入りがあるのならば、この村の惚状をどこかに蚎えお救揎を求めるくらいのこずを、しおも良いだろうに  。

「週に1床も なんでそう思うの」

ゎナンが銖をかしげる。

「新鮮な果物が届いおいたろう あれが出おきたのが倧䜓、そのくらいのルヌティンだったからね。あたり日持ちがしない果物があるから」

「他の食材も、新鮮なものが倚いですよね。その䞊、この村では手に入らないものばかりです。いったいどこから運んできおいるんだろう」

「うヌん、僕が思うに 」

 アドルフがリカルドずたた、䜕やら難しく話し始めた。ゎナンはなぜかこちらのチヌムかのように振り分けられおいるが、こうなるず人、甚なしだ。人の䌚話に耳を傟け぀぀、ずがずが歩く。

「マルルの実は、ゎナンがお屋敷様の家で気に入っお食べおたのを芋お、たた仕入れたんじゃないかなあ。卿も可愛らしいずころがあるね」ずリカルド。

「あの、すごい甘かったピンク色の実 あれは、なんなんだ。すごい、甘かった」

 珍しくゎナンが興奮気味に声が倧きくなり、アドルフを驚かせた。リカルドも思わず砎顔する。

「ふふ、あれは結構な高玚品なんだよ。僕も滅倚には食べられないな」

「そうなんだ 。この機䌚が終わったら、もう䞀生食べられないんだろうな 。もしたた、出しおもらえたら、倧事に食べよう」

 しみじみず呟きながら、心地が悪かったのかタヌバンをよいしょずずらすゎナンに、リカルドが䜕かを蚀おうずしたが、アドルフの方を芋お蚀葉を止めた。代わりに、少し困ったような笑みをゎナンに向けた。

+++++++++++

 倜。この家では、ずおもささやかではあるけども、晩逐の時を過ごすのが定番になっおいた。干ば぀が蚪れる前のように。

 少しの食事をしお、各々が思い思いにひずしきり語り合う。

いよいよ翌日から、井戞掘りを本栌的にスタヌトする蚈画だ。それぞれが寝床に向かう䞭、たたしおも気分が高揚したリカルドはこっそり倖に出お、件の酒小瓶を開いた。あの日以来、2回目。

今日もたた圌方星がよく芋える。

「ああ、キレむだなあ」

ナヌトリア卿の匱みを握っお食糧埗お、ず、少し眪悪感があるけども 

 しかし、今の村の状況を考えるず䞍謹慎でもあるが、この村での日々はリカルドにずっおかけがえのないものになっおいた。そもそも、圌が䜕週間も箇所にずどたるこず自䜓が珍しいのだ。その䞊、滞圚先に深く関わっおいる。い぀もは時に远われるように、次の旅先ぞず急いおしたう。

「䜕しおるの」

 ゎナンが背埌から急に珟れ、わわっずリカルドは驚いお声を挙げた。

「ゎナン、ただ起きおたんだ」

 そういえば最近ゎナンは、あのハンモックでぐったり寝おいるこずが少なくなっおきた。朝も早く起きおいる。ただただ痩せお骚ず皮ではあるけども、なんずも、健やかだ。リカルドは自分の隣に座るよう促す。

「ちょっず、悪い倧人の飲み物をね」

「すごい、透明なお酒、初めお芋た」

先日のアドルフず同じように、琥珀色の瞳に奜奇心を湛えお瓶を芋る。流石に䞀口どうぞ、ずはいかないが。

「明日からいよいよ、井戞掘りが始たるね」

「氎、出るかな」

「それはやっぱり、掘っおみないず分からないよ。ただ、なるべく確率が高そうな堎所を、時間をかけお遞定しおいるから、出おほしくはあるね」

そうか 、ずゎナンは少し考える。

「 圌方星にお願いする あの星が願いを叶えおくれるんじゃ無かったっけ」

赀い星を芋䞊げお、ゎナンが尋ねた。

「卵じゃなくお、圌方星 そういう蚀い䌝えもあったかな」

「兄貎達がよく星を芋お、話したりしおるから」

アドルフだけでなく、兄達も皆、星に興味があるらしい。もしかしたら、亡くなった父芪は星孊にも粟通しおいたのかもしれない。

 ゎナンは、少し蚀いにくそうに続けた。

「 今日、垰り道に䜕か蚀いかけおいたのが、気になっお」

「あ ああ、気付いおた」

 リカルドは噚に入れたキィ酒をぐいっずあおっお、ゎナンの方を芋る。

「いや、あれはね。ゎナンがマルルの実は䞀生食べられないかもっお蚀っおたけど、その気になれば食べる機䌚なんおこれからいくらでもあるよ、っお、蚀いたかったんだよ」

「」

「 ぀たり、䟋えば、僕ず䞀緒にこの村を出お卵を探しに行ったりしおさ、その旅先で、マルルの実だけじゃない、もっず珍しい食べ物ず出䌚えるし、いろんな景色や囜や、人や 」

「  」

 村を出お、卵を探しに、リカルドず旅に出る。盞倉わらずゎナンにずっおはおずぎ話のような絵空事だった。ただ、1ヵ月前たでは、そんな絵空事を思い浮かべるこずすら、なかった。

「  なんでリカルドさんは、俺にそんなこずを蚀うの 初めお䌚った日にも、同じ事を蚀っおたけど」

 兄のアドルフを誘うのならただ、わかる。兄がこんなにも楜しそうに誰かず話をするのを芋るのは、初めおだった。同じ事が奜きで、䜕かを知るこずの喜びを分かち合えお、感性が合っおいる。傍目に芋おいおも、よく分かった。

「うヌん、そうだね 。ゎナンが、䜕も欲しがっおなかったから、かな」

リカルドは、あえおアドルフに答えたのずは違う蚀葉を遞んだ。

「」

「䜕かが欲しい、ずか、䜕かをしたい、ずか。倢、ずか 」

「俺も、ご飯や氎は欲しいず思っおるし、䜓が倧きくなっお狩りや畑で圹に立ちたいず思っおいるし 」

「ああ、うん、それはずおも倧事なこずなんだけど」

うヌん、どう䌝えればいいかな、ずリカルドは悩む。

「欲っおいうか、野心っおいうか。叶えたいこずがあっお、そのために䞀生懞呜になっお、蟛くお逃げたいこずがあったり、苊しいこずがあったり、たたに楜しいこずもあったり 。その繰り返しで、自分の人生っおいうものが積み䞊がっおいくず思うんだけど」

琥珀の目が、じっず、語るリカルドを芋぀めおいる。

「ゎナンは、ただ䜕も始たっおいないたた、この干ば぀で呜を削り取られおいっおるように、感じたんだ 」

「 䜕も欲しがらないのは、よくないこず」

「いや、決しお悪い生き方ではないよ、特にこの村ならね。吊定しおるわけではないんだ。ヘタに欲がありすぎるず、お屋敷様みたいになったり、その匱みに぀け蟌む悪い倧人が出おきたりするわけだしね」

いたずらっぜく埮笑むリカルド。

「 ただ、ちょっずもったいないなあず、感じおしたうんだ」

「もったいない」

思わず口にした蚀葉に、リカルドはハッずした。

「ごめん。最埌は䜙蚈な䞀蚀だった。これは僕の゚ゎずいうか、芁らないお䞖話だね。ただ君は15歳で、時間はたくさんあるんだからず、぀い矚んでしたっお」

「  」

しばし、無蚀の時が流れる。困ったように頭をかくリカルド。ゎナンが沈黙を砎った。

「  でも、それは兄ちゃん達もじゃないの」

「うヌん、お兄さん達は、もう倧人だっおこずもあるけど、この村で生きおいくこずに、䜕かの䜿呜を持っお日々を過ごしおいるような気がするんだよね。そう感じるだけだけど」

それはアドルフも含めお、だ。だからこそ、リカルドは圌を旅には誘わない。

 ただ毎日を生きるだけでも必死にならなければならないこの村に、あれだけの人物達があえお居続けおいるこずからしお、䜕かの確たる意志を感じる。そしおそれが、この村を支配しようず蚀った類のものではないのが、䞍思議ではあるのだが。

「たあ、いろいろ蚀ったけど、僕がゎナンを気に入っおしたっおいるっおこずだな、きっず」

 そういっおリカルドは、ははは、ず笑った。冗談なのか本気なのかお酒の戯れ蚀なのか、わからない。もう䞀口、キィ酒を口にする。

「リカルドさんは、叶えたいこずずか、逃げ出したいこずずか、あるの」

「たあ、それはあるよ。倧䜓、誰にでもあるものさ」

「でも、『鳥の卵を埗た者の倢が叶う』っおのは、信じおないんでしょ」

リカルドがお屋敷様に話しおいたこずだ。

「そう、だから自分の力でどうにかしなければいけない 。のだけど、『卵で倢が叶わない』ずいう蚌拠がどこにもないのも、たごうこずなき事実なんだ」

「うん」

「 僕は、鳥ず卵の䌝承が、広い䞖界䞭にほが同じ圢で広たっおいるこずの䞍思議を解明しようず、旅をしおいるわけだけど」

「うん」

「  もしかしたら、もしかしたら、䞇が䞀の確率で、その䌝承が事実だからこそ同じ蚀い䌝えずしお広たっおいるんじゃないかず、本圓に、ほんのちょっずだけ、期埅しおいる心もあるんだ。だから、卵を手に入れたいし、鳥を远っかけおいる」

「 うん」

リカルドの衚情が、穏やかではあるけども、ピリリず熱を垯びたようであった。

「 ねえ、旅っお、どういう颚にするの 他所の街には勝手に入っおいいの 宿っおどんな堎所 い぀もテントに寝るんじゃないの」

「 今日は、なんだかよくしゃべるね 」

「うるさいなあ、知りたいんだから、教えおよ」

少しふくれっ面にはなったが、ゎナンはただただ眠くないようだった。これたでの䜕かを取り戻すかのようにいろんな質問が出おくる。リカルドも楜しくなっお、酒を飲むのも忘れおゎナンの質問に答え続けた。圌方星はただ宵闇の南空に圚る。

この倜、ゎナンは生たれお初めおの倜曎かしをした。



↓次回の話


#小説
#オリゞナル小説
#ファンタゞヌ小説
#い぀か芋た倢
#い぀か倢芋た物語
#連茉小説



いいなず思ったら応揎しよう