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連載小説「オボステルラ」 【第三章】18話「彼方星の向こうから」(3)


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第三章の登場人物



18話 「彼方星の向こうから」(3)


 さて、改めて今後の予定の話だ。結局さっきの出来事が何だったのかよく分かっていないゴナンも、また起きてきている。

「…で、迷っているって、どういうこと?」

ナイフが切り出す。リカルドは地図を広げながら説明した。

「うん…。今、3つの選択肢が僕の中にあって、1つは、もう少しこのエリアで鳥を待ってみるということ。昨日、卵男の吹き矢を食らった人がいるということは、まだ巨大鳥も近くにいるのかもしれない。まあ、両者が仲間だったら、ではあるけど」

「そうね…。手がかりは服装が似ている、というだけだものね」

「最後に鉱山近くでミリアとエレーネが鳥を見たのが10日以上前だから、これまでの経路を考えるともう、飛び立っているかもしれない。そうなると、次、どこに行くかなんだけど……」

 そうして、地図の2ヵ所を指す。

「順当に行くと、次は西の国境を越えて、帝国領内のオルステッド村辺りの可能性があるかなと思うんだよね。もしくは、王国領内でツマルタからもっと南下した先にある、ウキの街の辺りか…。ただ、ウキの場合は、少し距離もあるし…」

「……」

その地図を見て、ディルムッドが厳しい顔になる。リカルドはその様子に気付き、頷いた。

「…そう、帝国領に入るとなると、ミリアのことがちょっと気がかりだ。今は国境警備は厳しくないから、帝国に入ることはできるかもしれないけど、万が一向こうで身分がバレてしまうような事があったら、最悪、戦の引き金にもなりかねない。ミリアとディルだけ、国内に残る方がいいのかもしれない」

「……!」

ミリアが不満そうな表情をして、何かを言いたげにリカルドに大きな瞳を向けるが、リカルドは両手を挙げてそれを抑える。

「ああ、最後まで聞いて、ミリア。僕の予想はこうなんだけど、ちょっと気にかかっていることがあって…」

「気にかかっている?」

「…ルチカが言っていた『気流』のこと?」

ナイフが、先日の遭遇戦のときのことを思い出す。リカルドは頷いた。

「そう。彼の予測の方が正しかったら、もしかしたらこの地域で巨大鳥を見つけられたのは偶然で、水脈という予想は誤りだったのかもしれない。この根底が崩れると、僕は途方に暮れてしまう訳なんだけど…」

「……」

「ただ、ここで幸運なことに、ウキの街には、僕が王都の大学時代にお世話になったことがある気象学の先生が隠居住まいをしているんだよね。『気流』のことを尋ねるのには、うってつけかなとも思って」

「あら、気象学の先生にお世話になったのなら、あなたもその分野に多少は心得があるのではないの?」

ナイフがそう尋ねるが、リカルドは苦笑いをして首を横に振る。

「いや…。僕は、空や星をぼんやり見上げるのは好きなんだけど、気象学だとか天文学とか、空の上の学問にはてんで興味を持てなくてね。授業も受けてはみたものの、先生の授業は落第したんだ。ただ、普段からいろいろ気に掛けてくれていた先生で」

「ふうん…?」

不思議そうにするナイフ。リカルドにも苦手な分野があるのだと知って、ゴナンも少し意外そうにしている。

「…ただ、そもそも気流っていう、あるかどうかわからないものが根拠になるのが、どうしても不思議で…。ルチカになぜそう思ったのかを聞ければ、まだ判断材料になるんだけど…」

「……」

「そういうわけで、帝国に入るか、ウキに向かうか、決め手がなくて、迷っている」

そのリカルドの説明に、一同は黙り込んだ。リカルドが分からないのであれば、誰も分からないのだ。エレーネが口を開く。

「……私達はリカルドの判断に従うだけだから、あなたの心が決まった時点で出発すればよいのではないかしら。帝国に向かうとなったら、そのときに具体的なことは考えましょう」

「…うん、そうだね……」

「それまでは、まだ巨大鳥がこの付近にいる可能性も見て、手分けして水場を回ってもいいし……。あっ…」

途中でエレーネが何かを思い出し、ハッとした顔でリカルドを見た。

「ん? どうしたの? エレーネ」

「……そういえばこの前、巨大鳥に遭遇したとき、あなたに借りた椅子を泉の横に置いたままにしてしまっていたわ。慌てて鳥を追って、その後、鉱山を見つけたから、すっかり忘れてた…。ごめんなさい」

「…ああ、気にしなくていいよ。どうせ使っていないものだったし…」

そこまで口にして、ゴナンの方をはっと見るリカルド。

「…?」

「…いや。僕が取りに行くよ。ゴナン、一緒に行こう。今日行こう」

「……えっ? うん、いいけど……」

「結構、遠い場所だったよね。昼から出発になるから、その泉の所で野営になるかな? 鳥が来ないか見張る必要もあるしね。野営しよう。準備していこう。ね、ゴナン」

「う……うん…。でも、みんなと一緒でもいいんじゃ…?」

ゴナンは不思議そうにしながら承諾する。ナイフはふう、と息をついた。




「……ゴナン。あなたがいない間、リカルドは本当に荒れてしまって大変だったのよ。この甘えん坊の大きなお坊ちゃんを、せいぜい、可愛がってあげなさい」

「…? でも、可愛がってもらってるのは、俺の方だよ」

「あら、そうかしら?」

ナイフはニヤリと笑い、リカルドは情けなさそうに笑う。結局、その日は、ミリアとエレーネ・ディルムッド組と、ナイフ単独の3チームに分かれて、それぞれ水場を巡ることになった。




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