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連載小説「オボステルラ」 【第四章 狼煙の先に】  8話「狼煙を上げる」(3)


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8話 「狼煙を上げる」(3)


 翌朝。

一行は書斎に集まり、デスクを囲んでいる。卓上には周辺地域の地図。いよいよ、この地での巨大鳥探しを始めるため、今日は計画を立てるのだ。

「…これは僕の予想ではあるんだけど、巨大鳥が立ち寄りそうな水場はこの辺りだと思う」

そう言ってぐるりとあるエリアを丸で囲む。やはり、くだんの遺跡もその中に含まれている。

「…で、巨大鳥はどうやら人気ひとけのない水場を選ぶようだから、畑が近くて人の行き来があるこの辺りとこの辺りは排除して…」

そうして地図には、4箇所の大きな泉が示される。

「あら、範囲は広いけど、数は意外に絞れたのね」

「そうだね、ナイフちゃん。とはいえ、この周辺には水たまり程度の湧き水がすごくたくさんあって、それらも候補になるし、泉と泉の間も距離があるから、やはり分担はしないといけないけれど…」

「そうなると…」

ゴナンは練習はしているものの、まだ1人では馬をうまく操れないので、リカルドと一緒がよさそうだ。

「ゴナンとリカルド、ミリアとディル、エレーネ、私、の4班って感じかしら?」

「あら、わたくしはディルと?」

ミリアが少し不満そうにする。ナイフは肩をすくめた。

「いつものようにエレーネとでもいいんだけどね。騎士様はとてもあなたを心配しているから2人に着いていくと言いかねないかと思って。手分けすべきなのに、ミリア班だけ3人になってしまうと、流石にもったいないでしょ?」

ミリアはじっと物言いたげにディルムッドを見る。ディルムッドはふう、と息をついた。

「…私とでは面白くもないかもしれませんが、また『拾い食い』などをされてはたまりませんので」

「…」

「もしくは、この屋敷で大人しく『あなユラ』でも読んでいただいておくほうが、私も安心ではあるのですが…」

「まあ、それでは意味がないわ。わたくしを足手まといみたいな扱いにするなんて」

「あ、いえ、そのようなつもりは…」

恐縮するディルムッド。恐縮する割にはきちんと王女に嫌味はいうんだなあ、と面白く思いながら、リカルドはミリアに声をかけた。




「でも、ミリアにはあと数日は屋敷で休んでいてほしいかな。まだ万全ではないように見えるよ」

「……」

ミリアは無言になるが否定はしない。やはりまだ、体がきついのだろう。

「ミリアが屋敷で療養する間はエレーネがついてて、その間は鳥探しは3手に分かれるのでどうだろう。エレーネ、構わない?」

「ええ」

その提案に頷くエレーネだったが、隣でミリアがまた不満げな表情を見せる。リカルドは苦笑いだ。

「大丈夫。その間に鳥が見つかったとしても、僕らは抜け駆けするようなことはしないから、ね。ミリア。エレーネも。これはまあ、信じてもらうしかないんだけど」

「…ええ…、分かったわ、ありがとう…」

「で、明日の分担なんだけど、僕らはこの辺り、ディルはこの辺り、ナイフちゃんはこの辺りでどうかな」

そう言って担当分けをするが、やはりリカルドは遺跡から最も遠いエリアを自分の担当に当てている。これも無意識なのだろうか。ナイフはエレーネと顔を見合わせた。

「あとは、誰かが巨大鳥を見つけたり確保できた場合に、他の班に知らせられるよう、狼煙のろし玉作りと狼煙を上げる練習を今日、したいんだけど…」

「のろし?」

聞いたことのない言葉に、ゴナンが好奇心で目を光らせた。

「うん。まあ、煙だね。遠くから見てわかるような目印にするために上げるんだ。普通の焚き火でもいいけど、きちんと合図だと分かる様に、工夫をしたい」

「工夫って? どんな風に?」

「ほら、君の服を染めているボーカイの葉、あれは燃やすととても煙が出る葉っぱなんだ。この街には染め物用にボーカイの葉を乾燥させたものがたくさん売っているから、それを丸めて玉にする。周りに藁か紙か、燃えやすい物を巻いておけば、火をつけてすぐに煙がもくもくと上がるよ。建材の塗料にも使われるビクリ石の粉があれば、それを一緒に燃やすと赤い煙を出すことができるんだよね。そうすれば、合図のバリエーションが増えて、スムーズに連絡を取りやすくなるなあ」

「へえ…」

「あとで一緒に、買い出しに行こう。そして狼煙玉を一緒に作ろうね」

リカルドはニコニコ顔でゴナンに言った。

「まあ、わたくしも作りたいわ」

「えっ」

ミリアの申し出に、リカルドは躊躇する。件の泥のようなお茶の件を思い出していた。火をつける物を彼女に作らせて、万が一、爆発物などに仕上がってしまってはたまらない。とにかく彼女の『引きの悪さ』は健在なのだ。

「うん…。その、数作るのが間に合わなかったら、手伝ってもらうことがあるかも、しれないな。機会があれば、ね…」

「……」

ミリアに伝わったかどうかは分からないが、リカルドはやんわりと拒否した。




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