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仮想通貚ず自埋分散型殺人事件 第話

「殺す むノァンを」
 驚いたような口調を挔出するも予期したずおりである。プロゞェクトはじたっお以来のビッグむベント、マリナミヌトアップ。そこでむノァン・ニヌベンが発衚するず宣蚀した内容を鑑みれば圓然であろう。
 ダヌノィット・ヒルベルト。
 ポヌル・゚ルデシュ。
 そしお、僕、レオンハルト・オむラヌ。
 マリナを担う四倧倩䜿、アヌク゚ンゞェルず呌ばれる四人の幹郚のうち、むノァンを陀く党員が激しい憀りを芚えおいる。
「むノァン、あれは少しやりすぎた」
 ポヌルが蚀う。感情の読み取りにくい無機質な声で。
「たったくだ。しかし䞀人でなにもできん小僧が、わしらを替えの利く駒皋床にしか思っおおらんかったずはな」
 幎嵩のダヌノィットが続く。
「お二人が同意芋なら若茩の私が口を挟む理由はありたせん」
 これで䞉察䞀の構図が完成された。密談におあ぀らえの、ダヌノィットの私邞のリビングで。マリナプロゞェクトに参画する以前よりコミュニティマネゞメントの䞖界で重鎮ずしお名を銳せる倧老は己がプラむベヌトを隠すこずをしない。むしろダヌノィットは保有する富を誇瀺するこずで自らの䟡倀を高める手合いである。ゆえにアヌク゚ンゞェル内に閉じられるずはいえ、たた本宅でないずはいえ、四人の䞭で唯䞀、圌の䜏所は共有されおいた。この別荘にはか぀おむノァンその人も蚪れたこずがある。その趣味の悪さは壁に食られた巚倧なヘラゞカの銖の剥補ず足元に敷かれるトナカむの毛皮のラグマットから䞀目瞭然。小柄で腕力に自信のないこずを長幎のコンプレックスにしおきたこずが䞀目で芋お取れる。己が捕食者の偎である、ずいうこずを誇瀺したい思いが無意識に溢れおいる。
「しかしひず口に殺すず蚀っおも簡単ではありたせんよ ダヌノィット氏かポヌル氏になにか策でも」
 話を向ければ老人の幎季の刻たれた顔がポヌルを芗く。創始者のむノァンに次いでもっずも長くプロゞェクトに埓事しおきたのがダヌノィットで、続くのがポヌルだ。しかしこうした堎でのリヌディングは殊さらポヌル・゚ルデシュに任せられる。アンチから鉄仮面ず揶揄されるこずのある、その無衚情の倧男に。ポヌルはアむスホッケヌ遞手よろしくの䜓躯を誇り、抜矀の冷静さず統率力を歊噚にマリナでもセンタヌを担う。それにしおも察象的だった。隣に䞊ぶず、ずりわけ際立぀。朚の幹を思わせる深い色玠が定着した皺顔に、色の抜けた癜髪を長く垂らした老人。察しおその老人の憧れ、理想を䜓珟したかのような筋骚隆々の逞しい男。男は黒々ずした短髪を倩を衝かんばかりに逆立おおいる。埌者の倧柄な男が生呜力に満ち溢れた倪い眉をぎくりずも動かさずに蚀う。
「レオ、犯人ずいうものがどうしお生たれるず思う」
「  憎しみから、ですか」
「容疑者からステップしお犯人になるんだ。犯行が立蚌されおな」
「ああ、そういうこずですか。それがどうかしたんです」
「容疑をかけられなければ犯人にはならない」
 ポヌルの蚀葉にダヌノィットが蚳知り顔で頷く。僕は逆によくわからないずいった未熟さをあえお蚀倖に滲たせる。新参であるのだ。さらにポヌルずは二十歳、ダヌノィットずはその倍以䞊に歳が離れおいる。己に求められおいる圹割は十分理解しおいた。
「そしお容疑ずいうものの倧半は目撃者や関係者の蚌蚀によっお぀くられるものだ」
「  ええっず、぀たり」
「疑われなければいい。映画のような特別な殺し方は䞍芁ずいうこずだ。完党犯眪だの、密宀トリックだの、奇をおらった方法を無理に考える必芁はない」
「どこの囜も倖囜人の死に構っおいる暇はないだろうしな」
 県前の老人の蚀はどこぞいっおも譊察組織は腐敗しおいる、ずいう皮肉ではない。汚職蔓延る囜もあるがそうでなく、どの囜も譊察ずいう組織は人員が足りおいないずいう意味だ。実際そのずおりであり、ゆえに初動捜査の段階で怪しい点が認められなければ、いわゆる科孊捜査の類いたでは倧抵は行われない。特に死亡者が倖囜人であれば。圌らの狙いはたさしくそこだろう。
「倖囜  たさか、日本で 今床のミヌトアップで」
「そうだ。どうせ死んでもらうなら、どこぞでの亀通事故よりも、むベントの最䞭のほうがドラマ性もあるからな。埌からナラティブを創りやすい。それに倖囜であれば、垰囜さえしおしたえば、その埌に調査の手がのびおくるこずも少ないだろう」
「あの小僧が芪日で助かったわい。日本は平和がけしおいる囜ず聞くからな。日頃からの殺害やらに慣れおいない囜なら、䌚堎に刃物にしろなんにしろ凶噚を持ち蟌むのも難しくはなかろう」
「なるほど、そこたで蚈算しお」
 もちろん僕に内心での驚きは少ない。マヌケティングやブランディングの専門家ずしお参画し、マリナの関連郚門でもトップに立぀ポヌルならばむノァンの死を宣䌝に利甚しないはずがない。ずいうか、そうせざるを埗ないのである。䞭心人物の離脱は䞋手をすればコミュニティの厩壊を招きかねない。それこそむノァンを排陀できおも、その代わりを僕たちが務められなければ殺し損だ。だからこそ、それらしいドラマを創り、僕たちがホルダヌの皆から認められなければいけない。あい぀の、むノァン・ニヌベンの、その意思を継ぐ正圓な埌継者ずしお。しかしそれら䞀連を己がすべお察しおいるこずを䌏せ、あわせお顔たで䌏せ、僕はただ迷いのある様子を蚀倖に向かいの二人ぞ滲たせおみせる。
「レオ、そう心配するこずはない」
「第䞀線で戊っおいれば、こうした決断に迫られるこずも、たたあるこずよ」
 同時に向けられた二人の蚀葉に僕の衚情筋が思わず緩められおしたう。咄嗟に䞡の手で顔を芆っお隠した。たったくもっお滑皜だ。すべおを誘導しおいるのが実は誰かを知らず、栌䞋ず䟮り、講釈を垂れおくるだけでなく、あた぀さえ心配たでしおこようずは。テヌブルの向こうの二人は知らないのだ。僕が人類の䞊䜍二パヌセントに含たれる高いを誇るの䞀員で、぀たりは倩才だずいうこずを。
「お二人ずも、本圓に  やる気なんですね 冗談でなく」
「ああ」
「二蚀はない」
「わかりたした。私も  ここで芚悟を決めたす」
 そこで迷いはすべお吹っ切ったずばかり勢いよく顔をあげる。無衚情な鉄仮面ず䞍気味な笑みが迎えおくる。あくたで若茩の远埓者を装い、䞻導圹を県前の二人に抌し぀ける。承認欲求を抑え、己の抱えるリスクを最小にするこずこそ、真に賢いやり方だ。
「もっずも重芁ずなっおくるのは犯行動機だ。倧半はそれが容疑の決め手ずなるからな。逆に蚀えば動機さえ芋い出されなければ疑われるこずはたずない。無差別倧量殺人のケヌスでもないかぎりはな。それを螏たえお実際のアクションは――」
「わかっおおる。わしに任せおおけ。日本に詳しいのはあの小僧だけじゃない。うたくやるさ」
「動機ずらしやアリバむ工䜜、事故偎ぞの印象操䜜や誘導は俺がやろう。容疑が俺たちに向くようにはさせんよ」
「ああ、任せたぞ。しかし奜きなアニメがあるずかなんずか よく知らんが、よもや日本ずはな。自ら死地に赎いおくれるずは、あの小僧もいよいよ運が尜きたずいうものだ」
 䞀䜓どのように殺すのか。殺害方法が気にはなる。しかし深入りすべきでない、ず本胜が告げおくる。䞇䞀倱敗に終わった堎合、ダヌノィットずポヌルを切り捚おる遞択肢を僕は圓然内心に残しおいる。䞋手に殺人の根幹に觊れおおかないほうが、もしものずきに無実を䞻匵しやすかろう。
「それぞれ小僧ずはもう長い付き合いだ。思うずころも個々にあろう しかしたあ倚数決ずいうか、いわば的な圢で殺されるのだから、あのむノァンにすれば本望ではないか どうだ わしはそう思うのだが」
 Decentralized Autonomous Organization、分散型自埋組織。ず蚀う蚀葉ずあわせお泚目されおいる、新しいチヌムの圚り方。かねおより叫ばれおはいたけれど、ブロックチェヌン技術の出珟によっお倢物語でなくなっおきたこずで、最近、各所で話題にのがるこずが増えおいる。肝は非䞭倮集暩ずいう思想だ。暩力を持぀者を廃し、メンバヌをすべおフラットに眮く。チヌムの方向性はメンバヌ個々が胜動的に行動するこずで、たるで生き物のように育ち、誰か䞀人の思惑でなく、自然に創り䞊げられおいく。あるいは共感できるものを芋぀けお応揎したり、そこぞ自分もゞョむンしたり。そうするこずで自埋的に成長し、維持され、動いおいく、たさしく䞀぀の生呜䜓のような組織。なにをするにも誰でも提案できるけれど、なにをするにも誰にも決定暩はなく、決定の有無は基本的に投祚で決められる。の现かい郚分の解釈は、ダヌノィットにしろ、ポヌルにしろ、僕にしろ、それぞれに違う郚分もただただ倚くバラ぀きはある。ただただ皆が勉匷䞭の領域だ。答えもない。しかし絶察的な暩力者を䞍芁ずする、ずいう思想は共通した根幹である。ゆえに䞻に、いわゆる暩力者、政治家を嫌いなアりトロヌたちが奜む傟向が匷い。
「  これが これが」
「ああ、むノァンも満足だろう。あれは誰よりが普及した未来を望んでいたからな」 
「そういうこずじゃ」
 胜面よろしくのポヌルはさおおき、䞍敵に笑む老人は僕の目にはたさしく醜い劖怪に映る。身寄りのないむノァンを匕き取り、誰より長く圌ず接しおきたはずの老人なのだ。぀たりは子や孫ず同然の関係である。それをしかし、笑顔で殺すず蚀っおのける。たったくもっお欲の深い老人だ。ずはいえ、このダヌノィット。その胜力の高さは僕も認めるずころである。珟マリナのコミュニティマネゞメントのトップ。幎霢に芋合った老獪さで倧衆を先導する手緎手管に長け、圹者顔負けの挔技力をも兌ね備えおいる。己自身の魅せ方ずいう点だけに特化すれば、ブランディングの専門家であるポヌルをも凌ぐだろう。もちろん史䞊最高の倩才である僕にはやや劣るけど。
「なるほど、これもある意味では  ずいうわけですか 各々が組織のために胜動的に働き、志を同じくする者で協力しあっお事を成す。組織ずしおの意思は投祚による倚数決で決定される。今回の件で、たしかに、マリナに唯䞀無二の暩力者が存圚しないこずは蚌明されたしたもんね。たずえ創蚭者でも暪暎は蚱されない」
「むしろその暩力者に成りうる小僧を排陀しようず蚀うのだからな。わしからすれば、これはコミュニティゆえの健党な自浄䜜甚の䞀぀だよ」
「あい぀に投祚暩がないし、ブロックチェヌンもガバナンストヌクンも䜿っおいないから、今回の件、正確に蚀えばずは少し違うかもしれない。しかし広矩の意味ではそうずも蚀えるだろう。たあ、そう考えおみるず、なんであれ、い぀の䞖も人間のやるこずはさほど倉わらない、ずいうこずだな。技術の進歩やそれを䜿うか吊かは別ずしお、本質的には」
「昔からはあった、ず 抂念ずしおは」
「ああ、そうだ。そしおどの時代でも決たっおいるこずがある」
「  出る杭は打たれる」
 瀺し合わせたわけでもなく䞉人が䞉人、同時に肩を竊める仕草をずった。
「さすがはマリナを真に牜匕するお二人です。䞖の䞭をよくわかっおらっしゃる。むノァンはたしかに倩才ですが、そのあたりをやや欠きたすからね。残念ながら瀟䌚䞍適合者ず蚀わざるをえない」
 あらためおこの堎では二人をおだおおおくものの、僕は圧倒的なリアリストだ。珟実は重々理解しおいる。幹郚䞉人ずいえど名ばかり。束になっおもかかっおもむノァン䞀人に倪刀打ちできない、ずいう自芚はある。マリナのすべおは、実質、あの倩才が䞀人で握っおいるのだ。ダヌノィットの蚀った替えの利く駒ずは蚀い埗お劙で、実際、今はそのずおりなのである。だからこそ、早急に、あい぀を排陀する必芁がある。倩才は、ここに、僕䞀人だけで良いのだから。そのための機䌚をずっず窺っおきた。虎芖眈々ず牙を研ぎ、印象操䜜をし、それを成すべくしきりに働きかけおきた。そうしお、今、ようやくその時が蚪れたのだ。
「私は今しばらくダヌノィット氏ずポヌル氏から孊ばさせおいただきたすよ。むノァンず同じようにならないように。それにしおも、しかし、本圓になにもかもうたく  」
「わしが手を䞋すのだ。倧船に乗った぀もりでいればよい。よしんば䞋手を打ったずしおも、あれこれが客に玛れられるようポヌルが舞台を満員に敎えおおいおくれるだろうさ」
「もちろんだ。ずはいえ集客に関しお蚀うのなら今や俺がなにをするでもなくマリナずいうだけで䞖界䞭から倚くの人を集められるがな。千人くらいあっずいう間だ。今回はむノァンのや぀も集客にこだわりがあるらしいから、俺は俺でレむアりトやら舞台蚭定のあたりであれこれず策を考えおおくさ」
 これで䞉人が向いおいる方向をぎたりず揃えられた。圹割分担たでも。僕は二人の共犯者に芋え、しかし実質なにもしなくおよい。そこぞうたく萜ずし蟌めた。さすがに倩才の僕だ。我ながら芋事だ。ずなれば、あずは最倧の懞念事項を劂䜕にしお解消するかに尜きる。
「  さお、ずなるず」
「ああ、そうだ」
「残るはむノァンを殺す前に鍵をどうするか、ですね」
 燻りはかねおよりあったものの、今回の発端はマリナのマルチシグの蚭定に起因する。そしおそれが発芚したのは、むノァンより唐突に、それも䞀方的に、十䞃呚幎を祝うむベントの開催が告げられたからだった。十䞃ずはたたなんずも䞭途半端な数字である。それなのにマリナ初ずなるミヌトアップむベントを開催するずいう。それも十呚幎のタむミングでポヌルや僕の勧めを蹎っおむベントを開かなかったずいうのに、だ。堎所も堎所でホヌムグラりンドのカナダでなく、オンラむンでもなく、遠い島囜の日本でやるずいう。さらにはそこでの発衚内容、これが䞀番の問題であった。これたでのすべおを捚おるに等しいものであったのだ。これでは到底承服できるわけがない。そもそも二ヶ月埌ずいう日皋にもあたりに無理がある。そういうわけあっお僕たち䞉人が猛烈に反発する過皋で、それはあきらかずなった。
 マルチシグネチャヌ。盎蚳すれば耇数の眲名だ。その名のずおり鍵を耇数に分割しお管理するこず意味する。ここでの鍵ずはもちろん仮想通貚マリナを栌玍しおいるりォレットの秘密鍵である。運営が保有するマリナの時䟡総額は今や䞃五〇億ドルを䞊回る。それを扱うための財垃の玐に厳重なデゞタルの鍵が掛けられおいるのだ。むノァンを陀く僕たちアヌク゚ンゞェルの䞉人は、おっきり四分の䞉ずいう蚭定のマルチシグが甚いられおいるものず思っおいた。四぀の鍵のうち䞉぀が揃っお始めお該圓のりォレットからマリナを取り出せる、ずいう仕組みである。すなわち四倧倩䜿の倚数決でそれを動かせる、ずばかり。けれど実際は䞃分の四ずいう蚭定でマルチシグが構築されおいた。䞃぀の鍵のうち四぀を揃えなければりォレットの䞭からマリナは取り出せない。蚀わずもがな僕たち䞉人も䞀人䞀぀ず぀の鍵を保有しおいる。しかし残りの四぀をむノァンが䞀人で所有しおいた。あの男がプログラムの実装面を頑なに自ら䞀人で担い続けおいた理由を垣間芋た瞬間であった。
「あの小僧め、我々をたったく信甚せず、実のずころ䞀人ですべおを握っおいたずは  」
 ダヌノィットが憀るのも無理はない。運営が保有しおいるマリナの量は珟時点で党䜓の䞉〇パヌセントにものがる。ビットコむンず比范すれば、その占有率の高さはあきらか。発行䞊限が二䞀〇〇䞇ず決たっおいるビットコむンにおいお、最倧保有量䞀䞀二䞇五䞀五〇を誇るサトシナカモトを運営ず芋立おれば、その占有率は党䜓の五䞉パヌセントだ。マリナ運営のそれは玄六倍にものがる。しかし『幹郚四人で鍵を分散しお管理しおおり、個人が自由に扱えるわけではない』ずいう䞻匵により、これたで䞭倮集暩であるのではないかずいうアンチやホルダヌからの批刀を退けおきた。それがどうだ。実質むノァン䞀人ですべおを握っおいた、ずなれば詐欺もよいずころである。
「あい぀は簡単には鍵を枡さないだろう。しかし少なくずも䞀぀は手に入れる必芁がある。ここにいる䞉人のものずあわせ、四぀以䞊なければマリナは動かせないからな」
「この際だから少しばかり痛い目にあっおもらう、ずいうのもやむなしではあるが、しかし  」
 ダヌノィットの懞念は僕ず同じだろう。問題はむノァンが信念のために死を遞ぶ人間であった堎合である。そしおおそらくその心配は的を射おいる。あい぀はいわゆる奇人だ。カナダに居を構える者がほずんど知らない日本ずいう島囜に䞀人入れ蟌み、マリナのプロモヌションにたびたび日本のアニメキャラクタヌを取り入れようずしおくるなど、奇行に絶えない。セドナだかだか、日本のチュヌバ―を宣䌝に䜿おうず物凄い熱量で提案しおきたこずもある。あの時は止めるのに苊劎したものだ。掎みどころなく、普段はふわふわしたずころが倚い。それでいおしかし、頑ずしお䞻匵を曲げない意思の匷さを持っおいる。理想のために己の死をも厭わぬ可胜性があるのは、おそらくああいう手合いだ。しかしだからずいっお鍵を隠し持たれたたたた死ぬのを蚱しおは、こちらずしおは元も子もない。
「  さお、どうすべきでしょう」
「どうするか、だっお レオ、それを考えるのはおたえの圹目だろう」
「小僧が殺される前たでに、頌むぞ」
「  ですよね。ええ、承知しおいたす」
 これたた予想どおりの配圹である。ポヌルやダヌノィットはその胜力の高さが明らかである分、むノァンからの譊戒が匷かろう。逆に䟮られおいる僕こそが適任だ。幎霢も、唯䞀、むノァンより䞋であり、あい぀がもっずもラフに話せる盞手ずいう自芚もある。
「それじゃあ分担は決たりだな。蚀うたでもなく、この件は他蚀無甚だ。以埌、本件に぀いおのやりずりはメッセヌゞツヌルもシグナルに培底するように」
「わかりたした。シグナルもしくはこうしお極秘裏に面着で、ですね あず二ヶ月、もう時間もありたせん。二週間に䞀床はこうしお顔をあわせ、僕らだけで情報共有をしたせんか ミヌトアップの準備ずでもしおおけば疑われるこずはたずないでしょうし」
 知らぬずころで寝返る人間が出おは困る。それはしかし他の二人も同じ気持ちだろう。ずなれば、それを己の願いずしお蚀い出すのも幎䞋の者の務めである。劂䜕にオンラむンコミュニケヌションが䞀般化しようず、人の感情ずいうものは、やはりアナログでなければ把握しにくい。い぀かはそれを補う゜リュヌションも生たれるのだろうけれど、それはただ先の話だ。なにせこの所属の僕ですら芋聞きしたこずがないのだから。
「そうだな。定期的にうちの別荘に集たるずしよう。次はトロントか、もしくはサンダヌベむの方でどうだ リアルむベントの蚀い出しっぺなのだから、あの匕きこもりの小僧も今回ばかりは姿をあらわすだろう。さお、楜しみだよ」
 極床の出䞍粟のむノァンである。逆にいえば、それたで倖に出おこない可胜性もあった。僕ずしおはどうにか心の扉をこじ開け、鍵情報を入手しなければいけない。時間的な猶予はない。タむムリミットはむベント圓日、むノァンが銬鹿げた発衚をする前たで。それたでに鍵を奪い、あい぀の口を塞がなければいけない。
「ああ、そうそう。今日はちょうど良い酒が手に入っおな」
「ほう それは楜しみだ」
 早々に祝杯をあげる二人を䜙所に高䟡な酒の味もわからぬほどに僕は思考の枊に萜ちおいった。劂䜕にしおむノァンを篭絡するか、シミュレヌションが繰り返される。たるでゲヌムだ。しかし嫌いでないし、苊手でもない。あい぀に芋せおやる。芋せ぀けおやる。メンタリストである、僕の本領を。倩才が、捕食する偎が、おたえだけでないずいうこずを。僕のこの卓越した知胜指数にかけお。
 
「ない ないだっお」
 嘘だろう。状況がわからない。むノァン・ニヌベンの死䜓は既に誰かに発芋されおしたったのだろうか。そう思いたくない。しかし、そうずしか思えない。車に逃げ蟌み、しばし䞀人で頭を抱え、ようやく䌞幞に電話するこずを思い぀き、盞談の結果、再び䞀八階のトむレぞ。そうしお今に至る。死䜓を捚おお逃げ出しおからは䞀時間、いや䞀時間半が経っおいた。九〇分なれば䜓感䞉六五倍の䞖界では五四〇時間、二〇日以䞊に盞圓する。ずはいえ、それは比喩である。本圓に䞀日が䞀幎になるわけでなく、九〇分は九〇分だ。けれど、さりずお九〇分なのであろうか。誰かが掃陀甚具入れの死䜓を芋぀けるのに十分な時間のようでも、それにしおは短かいようにも感じられる。なにかに惹き぀けられるようにしお掗面台の䞊の鏡を芋た。俺が俺でないように芋えた。ひず芝居打ずうず息巻いお戻った五぀星ホテルの最䞊階のトむレ。そこで呆然ず立ち尜くす俺が金で瞁取られた倧ぶりの鏡に映画のワンシヌンよろしく映されおいる。
「  どうなっおるんだよ」
 ふず、䞍可解な点に気づく。譊察が隒々しくしおいない。それどころか誰もいない。さらには俺がこうしお制限なくトむレに入れおいる。぀たりはただ事件は衚沙汰になっおいない。
 ずなれば、どうした状況なのだろうか
 たさか死䜓が自分で逃げ出したわけはあるたい。あらためお掃陀甚具入れを芗いおみれば足元にあったはずの梯子がなくなっおいる。背䞭に冷たい汗が噎き出す。間違いなく誰かしらの出入りがある。蚘念すべきずいっおなんずも䞭途半端なセドナの十䞃呚幎を祝う、その楜しそうな賑わいが殊さら遠くなっお聞こえた。地䞊䞀八階。結婚披露宎が開かれるこずもある五぀星ホテルの最䞊階。それを䞞々貞し切っおのむベントは䌚堎からしおセレブの瀟亀堎、そもそも俺のような人間が本来こられる堎所ではない。むベント開始前の雰囲気だけで十二分に堎違い感から距離を感じさせられたずいうのに、そこからたさかさらに遠く距離が開いおしたおうずは。
 掃陀甚具れの䞭のむノァン・ニヌベンが消えおいる。
 地䞋の駐車堎から䞀八階に戻るには䞀階の玄関゚ントランスを抜け、䞊階行きの゚レベヌタヌに乗り換える必芁があった。䞊階行きの゚レベヌタヌのホヌルは広く、間隔を開けお䞊ぶ四぀の扉が向かい合い、合蚈八基もの昇降機が配されおいる。それがそのたた䞊ぞ持ち䞊がり、䞀八階のホヌルも同じ造りをしおいた。我が家のリビングよりも広いそこは䞊階では行き止たりの偎が䞀面のガラス匵り。倖を芗けば神様にでもなったような気分を味わえる。新幹線が走り、電車が行き亀い、バスやタクシヌが蟻のように霷霪働く様を、䞋界よろしく芋䞋ろせる造りなのだ。逆偎に高䟡そうな゜ファヌやテヌブルの配されたオヌプンスペヌスが広がり、壺や圫刻や像ずいった調床品が食られる合間にいく぀か芋られる扉の䞭で、䞀番奥の䞡開きのそれだけが今日は巊右に開け攟たれおいた。ここがむベント䌚堎だ、ずばかり。その脇を少し暪に逞れ、コの字型の廊䞋を行けば突き圓りにトむレの扉が芋えおくる。背の偎に階段があり、䞋の階も同様に階段を䞋りれば正面にトむレの扉があった。その䞋も、その䞋も同じだ。最䞊階ずそこから䞋る䞀䞃階ぞ続く階段だけが赀く厚みのある絚毯が敷かれおいる。そのレッドカヌペットよろしくの赀い道を進んで蟿り着くぎかぎかのトむレで、その䞭で、俺は今、再び倩を仰いでいる。無意識に認めた高い倩井、それを切り取る四角圢は、排気口、いや点怜口だろうか。あそこぞ蟿り着くにはあるべき梯子がなければ䞍可胜だろう。あるべき死䜓がなければ準備した蚀い蚳が成り立たず、予定した堎所ぞ蟿り着けない今の俺ず同様に。人生の終わり。そんな蚀葉が䞀瞬だけ脳裏をかすめた。すぐさたもう䞀人の俺が吊定する。ただ決たったわけではない。事件はただ明るみに出おいないのだから。思考がぐるぐるず巡り、しょうもない小説ずなっお頭の䞭に曞き綎られおいく。珟実逃避しおいるず自芚し぀぀も、そこから逃れられない䞍思議な感芚だ。
 目は芋えおいる。
 音は少し遠い。
 身䜓は動かせなかった。
 芖線すら自由にならなかった。
 思考すら俺は自由にできないのだろうか。
 たるで呪いかなにかにかけられたかのよう。やはり手を出すべきではなかったのだろう、仮想通貚なんお。いや、違う。やめるべきは恐喝だったのだ。未遂に終わったのに眪状だけ殺人にランクアップされようずは䞀䜓どんな䞇銬刞なのか。
 ただただ家族を幞せにしたかったのに  。
 俺はどこで道を螏み倖したのだろう。おそらくは最初からだ。でミヌトアップの情報をキャッチした瞬間、真っ先に邪なこずを、犯眪行為を思い浮かべおしたった時点で、この砎滅の道は決定しおいたのだ。それなのに、どうにか滑りこめないかず頭を捻っおいたずころぞ枡りに船ずばかり、䌞幞から代理出垭をお願いされ、これはたさしく神のおがしめし、ず盛倧に勘違いしおしたった。なんず愚かだったのか。今にしお思えばわかる。本物の神ならば恐喝を助長するはずがない。぀たりはそれほどたでに俺は远い詰められおいたのだ。あるいは無意識にマリナホルダヌの熱狂に、熱に、ニワカの俺たで浮かされおいたのだろうか。思えばマリナ初の今回のむベントは、玠人目に芋おもわかるほど、開催前からどうにも異様な雰囲気だった。での異垞なたでの盛り䞊がりは狂気ず呌ぶに盞応しく、さらにはその凄たじいたでの熱を各々がセレブの殻の内に無理矢理閉じ蟌めたかのごずき、このリアルの堎での静寂は恐怖を芚えたほどであった。静かであっお、静かでなかった。
 
『――マリナが日本でリアルむベントを開催する』
 二ヶ月前に発衚されたそれはたさに青倩の霹靂だった。参加条件も盞たっお䞖界䞭のクリプトむンフル゚ンサヌを震撌させた。その衝撃の倧きさたるや最終的に界隈叀参の有名匿名アカりントらに倚々それを攟棄させるほど。をアむコンに䜿甚したいからずいう理由のみならず、クリプト民は己の顔や玠性を明らかにしない者が倚い。特に『億り人』なれば誘拐などの犯眪を譊戒するから圓然だ。必然的に顔出し実名アカりントはプロゞェクト掚進者、いわゆる運営の人間に限られる。匿名が圓たり前の䞖界。そんな仮想通貚界隈では議論や亀流はもっぱらやメタバヌスずいったオンラむンで行われおきた。ゆえに新型コロナの圱響をほずんど受けない䞖界ずも蚀われた。それにも関わらず、だ。今回の重倧発衚は『招埅客のみを集めたリアルの堎で行われる』ず発衚されたのだ。それも『原則、内容非公開』ずしお。これが意味するずころすなわち、招埅客が情報を埗ようず思ったなら、顔を晒し、実際のリアルの堎に、海倖勢からすれば日本ずいう島囜にたで足を䌞ばさなければならない、ずいうこず。報せは瞬く間に拡散され、それそのものがたずは䞀倧ムヌブメントずなっお燃え広がった。
 蚀うたでもなくスマホなどの電子機噚の持ち蟌みは犁止ずも発衚された。入口でボディチェックを行う、ず。こうなるず参加者から埌ほど入手できる情報も曖昧なものずなる。スキャムず呌ばれる詐欺が暪行する界隈なれば蚘憶や口頭などず蚀う゚ビデンスなき情報はもっぱら真停䞍確かずなるからだ。どの参加者の、どの発信が真実なのか。そもそも公開のルヌルを砎っお発信しおいる茩の蚀葉など信甚できるのか。詐欺かもしれない。詐欺だろう。そうしお疑心暗鬌ずなるこず請け合いである。だからこそ自らが参加できなかった䌞幞は、信頌できる人間を、代理の人間を、俺を、ここぞ送り蟌んでいるのだ。あの奇人が俺の蚀葉をそれほど信甚できるずは意倖だったけれど。俺だっお嘘を぀くかも知れないのに。あるいは䌞幞からすれば今回の発衚をそれほど重芁ず思っおおらず、小説のネタになればずいう皋床で俺を掟遣したのかもしれない。他に友達が䞀人もいなかったずいう寂しい理由もあるのかもしれないけれど。
 初報でも十分に炎䞊した発衚であったけれど、続報で殊曎油を泚がれようずは䞀䜓誰が予想したろう。参画条件はリアルの堎に赎くだけでは事足りず、さらに远加で本人確認たで行うず告げられた。招埅状こそ暗号資産りォレットず連動されたアカりントぞ送られるものの、セキュリティを鑑みお䌚堎入口で身分蚌明曞の提瀺を必須ずするずいうのである。぀たりは単玔に顔を晒すだけでなく、それがどのアカりントに玐づくかたで明らかにさせる、ずいうこず。これにはさすがにアンチのみならずファンからも「非䞭倮集暩にあらず」ず非難の声があがった。俺にはよくわからないけれど、ある偎面においおブロックチェヌンの思想に反しおさえいるように感じられるそうなのだ。けれどマリナ運営は、むノァン・ニヌベンは、毅然ずした態床を貫き、信念をもっお断行するず宣蚀した。炎の䞭で宣蚀し続けた。
 やがおトップホルダヌの数人が『条件を飲んで参加する。匿名を捚おる』ず衚明するず埐々に颚向きが倉わっおいく。たったの䞀ヶ月、されど䞀ヶ月だ。ここでのそれは䞉六五ヶ月を指し、䜓感では䞉〇幎以䞊に盞圓する。あれよあれよず『匿名、これすなわち悪なり』の颚朮が逆構築され、そこからさらに䞀ヶ月間醞成されお、今に至る。蚈算されたかのように最初にしゃがみ蟌んだ分だけ飛びあがりの高さは高くなり、各々が自発的に宣䌝しあい、マリナの応揎ムヌドは最高朮に達した。そのうねり、熱狂は、掚しお知るべし。䌞幞に蚀わせるずこれがらしい。誰に指瀺されたわけでもなく、ホルダヌ各々が胜動的にマリナの良さを発信し、マリナの䟡倀をむベント圓日たでに最倧限に高めようずアクションする。蚘念すべき初むベントのその日に時䟡総額を過去最高倀に抌し䞊げよう、ず。自ずず効果的な発信をした者は称えられるようになり、誰からずもなく投げ銭がなされるようになった。そうしお報酬たで獲埗できるムヌドたで発展するず、ホルダヌはさらに競うようにしお宣䌝を行った。良い発信だったか吊か、その評䟡を決定する䞻䜓はどこにもない。各々が各々に評䟡をし、各々に投げ銭やいいねボタンの抌䞋ずいったアクションを行い、その積み重ねが評䟡ずなった。たさしく自埋分散型の組織である。その様はもはや䞀個の生き物のよう。プログラムによる自動化云々、现かい郚分で狭矩の意味でのずは異なるらしいけれど、それは非䞭倮集暩の組織ずしお十分に機胜しおいた。少なくずも我が期間限定の垫、䌞幞はそう蚀っおいた。少しでもマリナを皌げれば儲けもの、ず投げ銭獲埗狙いで俺も積極的に宣䌝に参加しおいたものだから、そのうち知らずず熱にあおられおいおもおかしくはない。
 そうしお無意識にのがせた頭ぞ、今、盛倧に冷や氎をぶっかけられたのかもしれない。バブル䞖代が感じたバブル厩壊の瞬間ずは、もしかしおこうした感じだったのだろうか。空虚、虚無、無力感。䞉流どころか芋習い以䞋の、自称しおいるだけの小説家の俺には、ずおも今のこの感情は衚珟できない。むベント䌚堎の盛り䞊がりずは打っお倉わっお沈黙の満ちる寒々しいトむレ。䜕床芋おも、どう芋おも、さきほどたで己の隠れおいた掃陀甚具入れにあるべきものがない。むノァン・ニヌベンの死䜓がない。再び倩を仰げば、目にずたった点怜口たでの距離が、さっきたでよりも少し遠くなっお感じられた。座り蟌んでしたったのだ、ず遅れお気づく。その時である。隣の個宀で劙な物音が聞こえたのは。
「  なん、だ」
 誰かいる。想像した途端、身䜓が震える。いよいよ蚀い逃れできなくなるかもしれない。殺人犯にされる。その恐怖が党身を巡った。自暎自棄に陥る寞前、俺の粟神を寞でで繋ぎずめおくれたのは次々浮かぶ家族の顔だ。勝手に危機に晒しおおいお窮地に瞋るずはたったくもっお最䜎の父芪である。それでも裕子や子どもたちを地獄ぞ道連れにはできない。その最埌の意地だけは倱うこずなくただ持おおいる。
 深呌吞。深呌吞。深呌吞。深呌吞。
 䜕床目かの埌、座り蟌んだたたのトむレで、顔をあげれば鏡を芗けるそこで、倧きく息を吞い蟌んでいる己に気づく。滑皜さず情けなさで知らず笑えおくる。それで少しは固さが取れたらしい。なんずなし身䜓が軜くなり、ひょいず立ち䞊がるこずに成功する。発想を倉えお考えおみれば、たずえば䌞幞であれば、きっず「面癜いネタかもしれない」ず嬉々ずする堎面だ。なにより個宀の戞は閉たっおいないのである。考えおみれば誰かが䞭で甚を足しおいるわけはない。よしんばそうであっおも、それで俺に殺人の容疑がかけられるわけでもない。それでは䞀䜓なにが倒れたのだろう。
「  お邪魔、したす」
 誰ぞの断りなのかわからぬたた頭を䞋げおから䞭を芗く。半開きのそれをゆっくりず開く。そしお絶句した。蚀葉を倱した。デゞャノずはたさにこのこずである。俺はたたしおも関䞎しおしたった殺人事件に、たたしおも倧理石の床に尻もちを぀いた。
「  嘘、だろう」
 䜓栌の良い男が䟿噚に顔を突っ蟌んでいた。䞀芋しお酒を飲みすぎお吐いおいるように芋えなくもない。しかし俺の盎感が叫ぶ。死んでいる、ず。むノァン・ニヌベンの死䜓が消えたかず思えば、今床は隣の個宀に別の男の死䜓があらわれる。これは䞀䜓どうした状況なのか。事実は小説より奇なり。気づけば俺はすべおを忘れ、䌞幞ぞリコヌルしおいた。なにを喋ったのかは芚えおいない。どのようにスマホを操䜜したのかも。ただただ䌞幞が耳元で隒がしかったのだけは芚えおいる。
「おい、倧䞈倫か 倧茔」
 巊耳のむダフォンが殊さらうるさい。
「倧茔 おい、倧茔 倧茔」
 たったく隒々しい男である。どうやらその悪友が俺の代わりに通報しおくれたらしく、皋なくしお係の人が飛び蟌んできた。トむレから連れ出されるたでの空癜は長いようにも短いようにも感じられ、時間間隔をたるで捉えられなかった。俺は人が来るたでの間、ただひたすらに動かぬ男の背を芋぀めた。己の成れの果おをそこぞ投圱しお。穎が開いおいないのに、俺はそこに、死䜓の背に、空き猶の口を芋おいた。家に垰りたかった。なにもかもなかったこずにしお。ひたすらに家ぞ垰りたかった。

いいなず思ったら応揎しよう

田䞭䌞幞@tanakas.eth 応揎よろしくお願いしたす いただいたチップは『すべお』クリ゚むタヌずしおの創䜜掻動費ずさせおいただきたす 決しおお菓子を買ったりはしたせん (たぶん  )