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【映画感想文】政府に家族が拉臎されお、拷問されお、殺されおしたったら しかも政府がシラを切り、すべおをないこずにされおしたったら 治安維持を名目に囜家はい぀でも暎走し埗るず思い出させおくれるブラゞルの実話 - 『アむム・スティル・ヒア』監督:りォルタヌ・サレス

 ある日、政府に家族が拉臎されお、拷問されお、殺されおしたったら しかも、政府はそんなこずしおいないずシラを切り、時間はおろか、そんな男は知らないず蚀わんばかりの態床をずったずしたら

 もはやカフカの小説みたいな理䞍尜さだけど、1970幎、軍事政暩䞋のブラゞルで実際に起こったこずである。

 そんな颚に突然、倫を奪われた劻は5人の子どもを1人で育お䞊げながら、44歳で倧孊に進孊し、48歳で匁護士資栌を獲埗した。そうしお存圚ごずなかったこずにされた倫の存圚を蚌明するため、法埋を歊噚に囜家ず孀独に戊い続ける。

 暩力に抗う難しさず必芁性。圌女の壮絶な蚘録を事故で身䜓障害者になった息子が本にたずめ、ベストセラヌずなった。それをブラゞルの名匠りォルタヌ・サレスが映画化したのが『アむム・スティル・ヒア』だ。

 䞻人公のモデルずなった゚りニセ・パむノァさん、本圓に匷い人物でこういう生き方をしなくちゃいけないず心を揺さぶられた。

 公匏パンフレットによれば、1929幎にブラゞルでむタリア系移民の家庭に生たれ、文孊郚を卒業し、母囜語であるポルトガル語に加え、フランス語ず英語も埗意だったずか。

 1952幎、23歳で土朚技垫の倫ず結婚。2人は同い幎だった。それから5人の子どもに恵たれ、1962幎、倫が劎働党から立候補し、連邊䞋院議員に圓遞。

 䞀応、第二次䞖界倧戊埌のブラゞルは1950幎代前半たで民䞻䞻矩的な政暩が䞎党だった。欧米の音楜や映画も流れ、冷戊䞋における西偎諞囜的な空気が広がっおいたずいう。

 䜜䞭でも、パむノァ䞀家はミケランゞェロ・アントニオヌニの『欲望』を芋たり、セルゞュ・ゲンズブヌルのレコヌドで螊ったり、ゞョン・レノンず付き合ったらどうする みたいな䌚話を楜しんでいた。ヒッピヌカルチャヌを謳歌し、倧麻を運転䞭に吞ったりもしおいた。

 だけど、そういう自由ず結び぀いた孊生運動の高たりはブラゞルの石油資源囜有化運動に぀ながっおいく。こうなるずアメリカもむしろ民䞻䞻矩に反察ずいうこずで、CIAが軍郚に力を貞し始める。

 背景には1959幎のキュヌバ革呜があった。これによっおラテンアメリカは冷戊の最前線に倉わったので、反共産䞻矩を倧矩名分にアメリカは各囜軍郚の暎走を認めおしたう。

 1964幎、クヌデタヌによっお軍事政暩が成立。ブラゞルの民䞻䞻矩は厩壊。軍政什第1号によっお議䌚の暩限は制限され、政治犯の公民暩剥奪が合法化された。

 もちろん、政治犯なんおものは恣意的に決められるので、劎働党に所属しおいた゚りニセ・パむノァの倫も共産䞻矩勢力ずしお槍玉に挙げられる。このたただず危ないずいうこずで、同幎、ナヌゎスラビア倧䜿通に逃げ蟌み、ペヌロッパぞ亡呜する。

 ただ、幎末にはサンパりロの自宅に戻っおきたずいうから驚きだ。空枯のセキュリティがゆるゆるだったので、なんだかんだ垰っおこれたずいう。解説の鈎朚茂先生(名叀屋倖囜倧孊教授・東京倖囜語倧孊名誉教授)が1960幎代の空枯のセキュリティヌの意倖な甘さを物語る゚ピ゜ヌドずしお玹介しおいた。

 で、パむノァ䞀家は心機䞀転、リオデゞャネむロに匕っ越し、倫は土朚技垫ずしお働きながら、か぀おの仲間たちず手を組み、亡呜した友人やその家族の支揎を密かに続けた。

 実際問題、無理やり手に入れた政暩なので、軍郚に察する批刀は匷かった。なんなら軍内にも穏健掟がいたぐらい足䞋はガタガタだった。そうなるずさらに圧力を匷めるこずでしか統制は取れないずいうわけで、幎々、軍事政暩は匷暩的になっおいく。

 1968幎、軍政什第5号が発什。これは蚀論・報道の自由をなくし、什状なしの逮捕・拷問・尋問を合法化するもので、日本で100幎前の1925幎に制定された治安維持法を圷圿ずさせる。

 こうなるず合法的な反政府掻動は理屈䞊存圚し埗ないわけで、抗議をゲリラやテロの圢ぞず倉わっおいく。するず、1969幎、政治犯の解攟を条件に米囜倧䜿が誘拐され、囜際的な報道によっお政府はメンツを぀ぶされた。

 効果ありずいうこずで、1970幎にも誘拐が盞次いだ。日本総領事が、ドむツ倧䜿が、スむス倧䜿ず倖亀官が次から次ぞず誘拐され、政府はなにかしらの萜ずし所を芋぀けなければいかないずいうプレッシャヌの䞭、軍および譊察は結果を出すための杜撰な操䜜を匷匕に進める。

 さお、映画『アむム・スティル・ヒア』はここから始たる。

 これたで曞いおきた歎史的経緯の説明は䜜䞭で行われない。あくたでドキュメンタリヌのように゚りニセ・パむノァで物語は進行しおいく。倫が亡呜した仲間の支揎をしおいるこずも知らなければ、倧䜿の誘拐で政府が盞圓焊っおいるこずもテレビのニュヌス映像を通しお掚枬しおいるだけ。

 いろいろあったけど、倫は土朚技垫の仕事で忙しく、長女は思想を心配し、末っ子の歯が抜けそうなこずを気にし぀぀、息子が捚おられた犬を拟ったきちゃっおどうしたしょう ず普通の生掻を送っおいる。家のすぐ前にあるビヌチで遊び、芪戚や友だちを呌んでパヌティを開き、アむスクリヌム屋さんでくだらないこずを家族で話し、笑い合っおいる。

 だからこそ、ある日、突然、軍郚の人間が銃を持っお自宅にやっおきお、倫を拉臎しおしおいく䞍安がリアルに描かれる。なんの説明もなく、翌日、劻である自分ず15歳の嚘も連行され、拷問され、尋問される恐怖が痛々しく瀺される。そしお、脈略もなく解攟され、

「倫はいたどこにいるの」

ず、聞いおも、政府も軍も譊察も最初から倫のこずなんお知らないずり゜を぀かれおしたう。幞せだった日垞な䞀倉。なにもかもがおかしくなっおいく。

 家族が急にいなくなるっお、想像以䞊にしんどい。この映画の話ずは比范にならないけど、うちも父芪が倱螪したこずがあり、なにが困るっおたずはお金だった。父芪の収入を前提ずした賃貞に家族で䜏んでいたので、圓然、もっず安い郚屋に匕っ越さなくおはいけない。でも、手元の資金もなにもないわけで、こうなったらカヌドロヌンや消費者金融に頌るしかないずいう状況に远い蟌たれる。もちろん、自分の孊費も払えないかもしれないし、䞭孊生だった匟のこれからも心配だし、高卒の母芪に乗り切れるのだろうか ずお先真っ暗になった。

 本人の意志で倱螪した堎合でもそうなのだ。それが政府による拉臎ずなったら、途方に暮れるしかないだろう。

 ゚りニセ・パむノァも最初は倫の垰りを埅぀ため、毅然ずした態床を保っおいたが、倫名矩の口座からお金を匕き出せないこずで家政婊に絊料を払えなくなり、生掻氎準を維持するこずができなくなり、幞せの象城だった家を手攟さなきゃいけなくなる。

 ちなみに、りォルタヌ・サレス監督は幌少期、このあたりに䜏んでいお、パむノァ䞀家ずも家族ぐるみの付き合いがあったずいう。なので、倫の事件をきっかけに匁護士ずなり、先䜏民の暩利保護の分野で掻躍し、埌にブラゞル連邊政府や囜連の顧問を務めるに至った゚りニセ・パむノァのこずもよく知っおいた。

 しかし、その息子・マルセロが回想録で䞡芪になにがあったのか、「ブラゞル軍事独裁政暩に奪われ、存圚ごず消された<デサパレシヌドス(行方䞍明者)>の悲劇が“残された者"の芖点で」初めお語られるのを読んだずき、時代を越えお、囜を越えお、映画で䌝えなければいけないこずがあるず感じたに違いない。

 完成たで7幎の歳月がかかったそうだ。その間、比范にもブラゞルではボル゜ナロ政暩が生たれ、右掟ず巊掟の察立が激化した。そのため、結果的に『アむム・スティル・ヒア』の䞊映は䞡陣営の察話を促すものになり、アカデミヌ囜際長線映画賞のブラゞル初受賞は象城的な意味を持぀に至った。

 ゚りニセ・パむノァを挔じた䞻挔のフェルナンダ・トヌレスはむンタビュヌでこう語っおいる。

マルセロは母がアルツハむマヌの兆しを芋せ始めたのをきっかけに、「今曞かなければ党郚倱われおしたう」ず感じ、本を曞こうず決めたんだず思いたす。その頃ブラゞルでは、独裁政暩の時代が忘れられ぀぀あり、街には「独裁をもう䞀床」ず蚎える人たで珟れおいた。だからマルセロは、曞かずにはいられなかったのでしょう。そもそもルヌベンスの連行ず、その埌の殺害自䜓が、独裁政暩による「この家族を完党に消し去る」行為だった。「そんな事件は存圚しなかった」、「あの男は存圚しなかった」ず珟実を吊定しようずしたのです。そしおそれが、たた繰り返されようずしおいた。この映画は、分断の激しいブラゞルで、右掟も巊掟も同じ映画通に座らせるこずができたした。それを目にしたずき、本圓に心を打たれたした。ある男性が䞊映埌に「自分は右掟だけど、なぜこんなにこの映画に共感しおいるのか分からない」ず蚀っおいお、そらを聞いたずきは胞がいっぱいになりたした。若い䞖代にずっお、独裁はただの歎史の教科曞の䞭の蚀葉だった。でもこの映画を芳お、「独裁はただの蚀葉じゃない。家にやっお来お父芪を連れ去り、殺す。それを囜家がやるなんお蚱されない」ず感じ始めた。立堎の違う人たちが同じ䜜品を芳お、同じように心を動かされる。それが䜕より印象に残っおいたす。

『アむム・スティル・ヒア』公匏パンフレットより

 なお、タむトルの『アむム・スティル・ヒア』は晩幎、アルツハむマヌ病で日垞生掻を送れなくなっおしたった゚りニセ・パむノァの口癖だったずいう。遠くに暮らす嚘ず久々に䌚ったり、孫を抱いたり、感情がたかぶるたびに発しおいたずいう。

「Ainda Estou Aqui (私はただここにいる)」

 治安維持を名目に囜家はい぀でも暎走し埗る。郜合の悪いわたしたちは簡単になかったものにされおしたう。でも、わたしたちは叫び続ける。「アむム・スティル・ヒア」ず。そのために本を曞くわけだし、映画を撮るわけだし、それらを読んで芋お語り継いでいくのだ。

 そうしお治安維持なんお危険な考えを二床ず圢にしないため、暩力に抗い続ける必芁がある。

 これは決しお他人事ではない。民䞻䞻矩ず自由を信じるわたしたち党員に関係しおいる物語だからこそ、䞀人でも倚くの人に芋おもらいたい。




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