【意志】くだらない偏見を混ぜるだけで、あの人の口癖を「最高に過剰なエンタメ」に変える。
ビジネスという名の厳かな厨房で、彼らは日々、言葉という名の「スパイス」を調合しているつもりでいます。 しかし、その実態はどうでしょう。洗練されたプロの隠し味と思われているそれらは、私たちの脳内フィルターを通過した途端、素材の味を完全に叩き潰す「過剰な調味料」へと姿を変えてしまうのです。
今回は、彼らが無意識に振るうその危険なレシピを、私たちの脳内イメージとともに解剖してみることにいたしましょう。
1. 「一応、シナジーを意識して」
本人が出しているつもりのニュアンス: 複数の要素を掛け合わせ、1+1を3にする全体最適の仕掛け人。
日本人の脳内イメージ: 「すべての料理にマヨネーズをぶっかける、大雑把な味覚のマヨラー」
「シナジー」という、唱えるだけで仕事をした気になれる魔法の調味料。異なる部署や、全く脈絡のないプロジェクトを強引に結びつけようとするとき、彼らはこの言葉をドバドバと注ぎ込みます。 日本人の脳内では、職人が繊細に仕上げた煮物にも、お刺身にも、デザートのプリンにすら、ドヤ顔でマヨネーズを白く網の目状にかけまくり、「ほら、これで一体感(シナジー)が出たでしょう?」と言い放つ男の姿が上映されています。素材の良さはすべてマヨネーズの脂っぽさに消され、残るのは胃もたれだけです。
2. 「ぶっちゃけ、」
本人が出しているつもりのニュアンス: 建前を排し、あなただけに本音を明かすフランクで誠実な仲間。
日本人の脳内イメージ: 「料理の仕上げにタバスコを丸ごと一瓶ぶち込む、過剰な刺激物中毒者」
会話のスパイスとして、距離を縮めるために使われる「ぶっちゃけ」。しかし、これを連発する人間の「ぶっちゃけ」の後に続く言葉は、大抵が単なる愚痴か、あるいは誰もが得をしている薄っぺらい情報です。 脳内イメージは、穏やかなスープに突然真っ赤なタバスコをドボドボと流し込み、「これが本物の味(本音)だから!」と周囲に強要する迷惑な食通。辛みで舌を麻痺させて、議論の深みを誤魔化しているに過ぎません。
3. 「それ、ちゃんと握れてる?」
本人が出しているつもりのニュアンス: 意思決定者や関係者との間で、確実な合意形成(グリップ)を完了している有能なネゴシエーター。
日本人の脳内イメージ: 「寿司のシャリを親の仇のように力任せに握り潰す、不器用な板前」
ビジネス用語の「握る」という独特の響き。合意を得たかを確認するだけのセリフですが、なぜかそこには妙な湿り気と圧迫感が伴います。 日本人の脳内では、カウンターの向こう側で眉間にシワを寄せた板前が、米粒を文字通り「グシャァッ」と握り潰し、中の水分をすべて絞り出しながら「……握れてるぞ」と差し出してくる地獄の寿司屋が開店しています。スマートな交渉ではなく、単なる力技による現状維持の押し付けです。
4. 「あえて、エッジを効かせたい」
本人が出しているつもりのニュアンス: 平凡なアイデアを拒絶し、市場に強烈なインパクトを与えるクリエイティブ・ディレクター。
日本人の脳内イメージ: 「普通のうどんに、原型がなくなるまで七味唐辛子を振りかける人」
「あえて」という免罪符と、「エッジ」という尖った響きの組み合わせ。何の変化もない企画書に対して、このセリフを吐くことで「自分は一味違う」と思わせたい防衛本能が見え隠れします。 脳内では、運ばれてきた何の変哲もないうどんに対し、狂ったように七味の瓶を振り続け、表面を真っ赤な粉で埋め尽くしている男の姿が浮かびます。彼が求めているのは「洗練された尖り(エッジ)」ではなく、ただの「過剰な刺激」であり、ベースとなる出汁(本質)へのリスペクトは皆無です。
5. 「よしなに、進めておいて」
本人が出しているつもりのニュアンス: 細かい指示を出さずとも、相手の裁量と能力を信頼して仕事を任せる器の大きい上司。
日本人の脳内イメージ: 「味の素(旨味調味料)の白い粉を部屋中に撒き散らして煙に巻く、謎の仙人」
日本企業が誇る究極のハイコンテキスト調味料、「よしなに」。具体的な指示や責任の所在をすべて曖昧な白い霧の中に隠蔽する、極めて便利な言葉です。 脳内イメージは、調理場の中心で「よしなに、よしなに……」と呟きながら、白い旨味調味料の粉末を天井に向けてファサァと撒き散らし、自らはその煙の中に消えていく仙人。後に残された側は、一体何の味付け(方向性)を求められているのか分からず、ただ舌がピリピリするような不安感だけが残ります。
6. 調味料をドバドバかける、その心理の裏側
こうして見てみると、彼らが口癖という名の「調味料」を乱用するのは、素材(自分自身のロジックや事実)そのものの味に自信がないからだと言えます。
そのままでは薄味で退屈な、あるいは少し都合の悪い現実を、強烈な言葉の風味でコーティングして誤魔化す。それこそが、彼らが無意識に行っている脳内調理の正体なのです。
もし次の会議で、誰かが「シナジー」や「よしなに」を乱用し始めたら、心の中でそっと呟いてみてください。 「ああ、あの人は今、必死でマヨネーズをかけている最中なのだな」と。それだけで、退屈な時間は一瞬にして極上のエンターテインメントへと昇華するはずですから。
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