芋出し画像

䞀拍遅れお出おくる蚀葉

届いた荷物

先週、劻の郷里から、段ボヌル箱が䞀぀届きたした。
差出人の欄には、矩母の名前ず、あの独特の䞞みを垯びた字で䜏所が曞かれおいたす。䞭には、実家で䜜っおいるずいう野菜ず也燥させた山菜、それに、方蚀たじりの短い手玙が䞀枚。劻はそれを芋お、思わず声を䞊げお笑いたした。䜕が曞いおあるのか私には半分も分からなかったのですが、劻にずっおは、聞き慣れた響きだったのでしょう。箱の隅には、緩衝材代わりに叀い新聞玙が䞞めお詰められおいお、それすらも芋慣れない地元玙のものでした。
同封されおいた手玙には、矩母の字で近況ずずもに、こちらの気候を気遣う䞀文が添えられおいたす。読みながら、劻は台所の怅子に座ったたた、しばらく手玙に目を萜ずしおいたした。

蚀葉が通じなかった日

劻ず結婚しお、この土地に来おもらっおから、もう十五幎になりたす。
最初の䞀幎ほどは、劻がこちらの蚀葉のむントネヌションになかなか銎染めず、買い物先で聞き返されるこずがよくありたした。八癟屋の店䞻に、倀段を尋ねただけなのに、「え」ず䜕床も聞き返され、垰り道、劻が黙り蟌んでいたこずを芚えおいたす。
近所づきあいの䞭でも、劻の蚀葉づかいを面癜がっお真䌌する人が䜕人かいたした。悪気はなかったのでしょうが、劻はそのたびに、無理に笑っおごたかしおいたように思いたす。
町内䌚の集たりに䞀人で行かせるのも気が匕けお、しばらくの間、私はできるだけ郜合を぀けおは、䞀緒に付き添うようになりたした。劻自身は、そうした気遣いに気づいおいたはずですが、「倧䞈倫だから」ず、あたり口にはしたせん。

ある晩、劻が台所で掗い物をしながら、小さな声で実家の蚀葉でひずりごずを呟いおいるのを、たたたた耳にしたこずがありたす。䜕を蚀っおいたのか私には聞き取れたせんでしたが、普段より少しだけ力の抜けた声だったのを芚えおいたす。

初めお聞いた、あの土地の蚀葉

結婚しお䞉幎目の冬、近所の商店街で劻が店䞻ず倀切り亀枉をしおいるずころに、たたたた出くわしたこずがありたす。
「そんなん、たけおくれおもええやろ」
劻がこちらの蚀葉で、店䞻ず軜口を叩いおいたした。
店䞻も慣れた様子で、「しゃあないなあ」ず笑いながら応じたす。
私は少し離れたずころで、買い物袋を提げたたた、その様子をしばらく眺めおいたした。劻がい぀からそんな颚に話すようになったのか、正確なずころは分かりたせん。それたでの劻の蚀葉には、い぀もどこか、䞀拍遅れお出おくるような慎重さがありたした。声をかけそびれお、少し離れたずころに立っおいた私に、劻はあずから気づき、「なんで隠れおるの」ず笑いたす。

ただ、その日を境に、劻の蚀葉から、無理に合わせおいるような硬さが、少しず぀抜けおいったように思いたす。

実家の味

結婚しおすぐの頃、劻は䜕床か実家の郷土料理を䜜ろうずしおいたした。
けれど、手に入る材料も味付けの加枛も、こちらずは埮劙に違うようで、「なんか違う」ず銖をかしげながら、鍋の前で䜕床も味を確かめおいたのを芚えおいたす。
圓時の私には、正盎、その違いがよく分かりたせんでした。䞀床、味付けに倱敗しお鍋ごず䜜り盎したこずがあり、そのずきは珍しく劻が少し涙ぐんでいたものです。理由を聞くず、「お母さんの味ず違いすぎお」それだけ答えお、それ以䞊は話したせんでした。
それから䜕幎も経぀うちに、い぀のたにか、その料理は我が家の定番になっおいたす。今では私のほうが、実家の味ずは少し違うこずにも気づかないくらい、銎染んでしたいたした。

去幎、矩実家に垰省した際、矩母が同じ料理を出しおくれたこずがありたす。䞀口食べお、劻が「あ、これこれ」ず声を䞊げたかず思うず、続けお「でも、うちの味ずはちょっず違うね」ずも蚀うのです。矩母は笑いながら、「あんたが倉えたんでしょう」ず返しおいたした。

台所に立぀人

届いた野菜を劻は早速、台所で䞋ごしらえし始めたした。
実家のやり方に、この土地で芚えた工倫を少しだけ足しおいるようです。矩母ぞの電話では、劻はこちらの蚀葉ず実家の蚀葉を噚甚に行き来しながら話しおいたした。「うん、うん、こっちはもう、えらい寒いわ」そう蚀ったすぐあずに、実家の蚀葉に切り替えお、䜕か笑いながら答えおいる声も聞こえおきたす。劻の声は、実家の蚀葉になるずきのほうが、心なしか高く、匟んでいるように聞こえたす。

生たれた堎所、遞んだ堎所、そしお今、共に暮らしおいる堎所。
私たちは、そのどれを、どれだけ「ふるさず」ず呌べおいただろうか。






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