働きやすい店は、結果的に強い。私が店長として「環境づくり」を大切にしていた理由
アパレルで店長をしていた頃、私が大切にしていたことの一つが、
スタッフが安心して働ける環境をつくること
でした。
売上をつくる。
接客力を高める。
スタッフを育てる。
日々の業務を効率よく回す。
店長には、さまざまな役割があります。
でも、現場で長く働くうちに、
そのすべての土台にあるのが「環境」なのではないか
と思うようになりました。
自分が店長になったときに決めていたこと
20代前半の頃、私自身も職場環境に悩み、会社の人たちに助けてもらった経験があります。
その経験があったからこそ、自分が店長になったときに決めていたことがありました。
«スタッフが困ったときに、きちんと相談できる店長でいよう。»
その後、素敵な店長や先輩、スタッフにもたくさん出会いました。
話しかけやすい人。
質問すると、丁寧に教えてくれる人。
忙しいときに、自然と助けてくれる人。
私が「いいな」と思ったことは、自分が店長になったときにも一つずつ取り入れていきました。
※私が「話しかけやすい店長」でいようと決めた原点については、こちらの記事に書いています。
→ [私が「話しかけやすい店長」になろうと決めた理由]
「何でも聞いてね」と言うだけでは足りない
店長になってから意識していたのは、
「質問していい」と伝えることと、本当に質問できる環境をつくることは違う
ということでした。
いくら、
「分からなかったら、何でも聞いてね」
と言っていても、実際に質問されたときに嫌な顔をしたり、忙しそうに突き放したりすれば、次から声をかけにくくなります。
だから私は、質問されたときの反応も大切にしていました。
分からないことは聞く。
困ったら相談する。
できないことがあれば、一緒に考える。
それを特別なことではなく、日常の中で自然にできるお店にしたかったのです。
質問されたということは、スタッフが仕事を覚えようとしているということでもあります。
安心して質問できれば、分からないまま進めることが減ります。
できることが増えれば、少しずつ自信もつき、自分で考えて動けるようになります。
店長が動くと、スタッフも連動して動いてくれる
私が大切にしていたのは、店長だからと指示だけを出すのではなく、必要なときには、まず自分が動くことでした。
例えば、新商品が大量に入ってきた日。
私は売場を確認しながら、
«「じゃあ、私がレイアウトをつくるね」»
と動き始めます。
すると後輩から、
«「じゃあ私、入荷処理をします」»
と、自然に声が上がることがありました。
細かく、
「あなたはこれをして、終わったら次はこれをして」
と指示しなくても、それぞれが今必要なことを考えて動いてくれる。
誰かが忙しければ、手が空いた人がフォローする。
店長が動けば、それを見たスタッフも動く。
一人が動くと、次の人も動く。
そうして、チーム全体が自然に連動していく。
私は、そんなお店が好きでした。
もちろん、役割分担や指示が必要な場面もあります。
ただ、日頃から店長自身が動いていれば、「指示されるまで待つ」のではなく、「今、自分に何ができるか」を考える空気が生まれやすくなります。
仲がいいだけではなく、仕事の話もできる関係にする
スタッフ同士が仲良く、楽しく働けることも大切です。
でも、ただ仲がいいだけではなく、
仕事について気軽に話せる関係
も大切にしていました。
お客様が少なく、売場に少し余裕があるとき、後輩から、
«「この商品だったら、何を合わせますか?」»
«「このコーディネートって、どう思います?」»
と相談されることがありました。
そこで一緒に商品を見ながら、
«「これを合わせてもいいよね」»
«「こういうお客様なら、こっちも提案できそう」»
と考えます。
私は、こういう時間も好きでした。
わざわざ「研修」という形にしなくても、日々の売場には学べることがたくさんあります。
分からないから聞く。
一緒に考える。
次の接客で試してみる。
そしてまた、
「今日、こんなお客様がいて……」
と話す。
そうした日々の会話から、スタッフそれぞれの接客の引き出しが増えていきました。
店長がすべての答えを教えるのではなく、一緒に考えられる関係をつくる。
それが、スタッフの成長にもつながっていたと思います。
環境が整うと、接客を楽しむ余裕が生まれる
スタッフが人間関係で必要以上に消耗していると、本来仕事に使えるはずのエネルギーまで失われてしまいます。
「今、質問して大丈夫かな」
「間違えたら怒られるかもしれない」
「困っているけれど、助けを求めにくい」
そんなことばかり考えていたら、お客様との会話や商品提案へ集中する余裕もなくなります。
逆に、
- 分からないことを聞ける
- 困ったら助けてもらえる
- 自然にフォローし合える
- 自分の意見も伝えられる
そんな環境では、スタッフにも余裕が生まれます。
その余裕は、お客様にも伝わると思っています。
スタッフ同士でフォローしながら接客できる。
お客様との会話を楽しめる。
商品やコーディネートの相談もできる。
忙しくなれば、それぞれが必要な場所へ動く。
結果として仕事の効率が上がり、お店全体にも活気が生まれます。
だから私は、
働きやすい環境をつくることと、売上をつくることは別々ではない
と考えていました。
異動するとき、後輩に必ず伝えていたこと
私は異動が多かったため、一緒に働いたスタッフと離れることも何度もありました。
そのとき、後輩には必ず、
«「つらいときや、どうしたらいいか分からないときは連絡してね」»
と伝えていました。
ただ、それだけでは、
「今、連絡しても大丈夫かな」
と迷ってしまうかもしれません。
会社では全店舗のシフトを共通のフォーマットで管理していたため、
«「異動しても私の出勤日は分かるから、出勤しているときに連絡してくれて大丈夫だよ」»
というところまで伝えていました。
「いつでも連絡してね」という気持ちだけではなく、実際に連絡しやすい方法まで渡しておきたかったからです。
実際に、異動先の環境になじめず、相談してくれたスタッフもいました。
話していると、明らかに表情が沈んでいる子もいました。
私自身も以前、周りの人に助けてもらった経験があります。
キャリアを積み、経験や実績が増えてからは、今度は私が、
必要なときに手を差し伸べ、行動できる先輩でいたい
と思うようになりました。
その後、また一緒に働いたスタッフもいた
以前相談してくれたスタッフと、その後、再び同じ店舗で働くことになったこともあります。
そこで、そのスタッフが生き生きと楽しそうに働く姿を見ることができました。
仕事なので、もちろん大変なことはあります。
忙しい日もあれば、思うようにいかない日もあります。
でも、
同じ会社で働く仲間が、人間関係によって必要以上に精神的な負担を抱える必要はない
と私は思っています。
人間関係で消耗すれば、仕事の効率も下がります。
質問しにくくなる。
助けを求めにくくなる。
接客を楽しむ余裕もなくなる。
本人にとっても、お店にとっても、良いことはほとんどありません。
それなら店長として、できるだけ一人ひとりが力を発揮できる環境を整えたほうがいい。
とてもシンプルなことだと思います。
仲良しではなく、自然に助け合えるチームをつくる
私は、ただ「仲のいい職場」をつくることだけを目的にしていたわけではありません。
仲良く、楽しく働ける。
そのうえで、
- 誰かが動けば、誰かが自然にフォローする
- 分からないことを質問できる
- コーディネートについて相談できる
- 忙しいときには助け合える
- それぞれが自分で考えて動ける
- お客様との接客を楽しめる
そんな環境をつくりたかったのです。
それが結果として、仕事の効率や接客力、お店の活気にもつながっていく。
私は現場で、何度もそれを感じました。
働きやすい店は、結果的に強い
店長として大切なのは、スタッフに、
「もっと頑張って」
と言うことだけではないと思っています。
その人が力を発揮できる環境を整えること。
店長が、まず動く。
質問できる空気をつくる。
困っている人がいれば気づく。
それぞれが自然に助け合えるチームをつくる。
環境が整えば、人は思っている以上に自分から動いてくれます。
そして、人が気持ちよく働けるお店には、自然と活気が生まれます。
働きやすい店は、結果的に強い。
これは、私が店長として働いた経験から、今でも思っていることです。
