【笑?】コンビニバイトの体験談10 神業先輩
昔、接客態度も手際も優れた先輩がいました。
ベテランというより、コンビニという戦場で鍛え抜かれた職人そのものでした。
まず、レジ打ちのスピードが異常で、バーコードを滑らせる指先にうっすら残像が残るほどでした。
例えば、客が弁当の温めをお願いすると、彼は無言でレンジに入れ、スタートボタンを押した瞬間にすでに次の動きに入っています。
温めのわずか一分のあいだに、棚の奥に少しずれていた補充品を完璧な直線に整え、賞味期限の近いものを前に出し、空いたスペースに新しい商品を隙間なく埋めました。
レンジが「チン」と鳴るのとほぼ同時に、温かいお弁当を右手で、冷たい飲料を左手で掴み、袋の中で温度が干渉しない絶妙な配置で一瞬のうちに収めてしまうのです。
最後にレシートを、客の手が自然に受け取りやすい角度で差し出すところまでが、ひとつの流れるような動作でした。
普段は驚くほど口数が少なく、休憩室ではほぼ無言で携帯をいじっているか、ぼんやり窓の外を見ているだけのローテンション人間。
ところがレジの前に立つ瞬間だけ、空気が変わりました。
目が少し鋭くなり、無駄な動きが一切消えて、職人スイッチが入りました。
そのギャップがまた強くて、後輩たちは、
「あの人、レジに立つと別人になるよね……」
と半ば畏敬の念を込めて語っていたとか。
しかしそんな先輩も、間もなく辞めていきました。
就職活動の採用が理由でした。
コンビニバイトのプロがいなくなってしまったのは、とても残念でした……。
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