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台湾ドル2日で10%高!トランプの影とは?

台湾ドルが2日で10%急騰

台湾ドルが2日で10%急騰と1988年以来の記録的動きとなりました。背景にはトランプ政権の関税と台湾当局の思惑が指摘されています。以下では、台湾ドルの急変の真相を解き明かします。

台湾ドルは先週末の5月2日、米ドルに対し4.4%上昇し、週明けの5月5日に5%程度上昇しました。つまり台湾ドルは米ドルに対し5月2日と5日の2日間で約10%上昇したことになります。これは1988年以来最大の上昇率です。この結果、台湾ドルは米ドルに対して一時3年ぶりの高値(28.80付近)となりました。

ドル円が10%円高(ドル安)になったとすれば、足元の水準を144とすれば、2日間で130円ちょうど近辺になったことに相当します。すごいですね。

5月6日の台湾ドルは、米ドルに対し前日(5日)から3%程度下落していますが、それでも5月1日の終値水準からみて依然として7%ほど上昇しています。

以下では台湾ドルが急騰した背景を整理します。

【台湾ドル急騰の4大要因】

  1. 市場の連休:流動性低下でボラティリティ増

  2. トランプ関税:台湾ドル高容認の思惑

  3. 生命保険会社の動き:ドル売り加速

  4. 中銀の介入弱さ:急騰を黙認?

連休で市場が薄く、台湾ドル買いが加速

5月1日は、台湾、中国、香港で労働節(メーデー)で祝日で、5月2日は本来、平日(通常営業日)なのですが、労働節に続いて休みの取引参加者が多かったようです。また5月5日は英国がバンクホリデーで、外国為替市場では取引高(流動性)が低下していました。

流動性が低いと、取引量や市場参加者の数が少ないことから少量の注文でも価格が大きく変動し、ボラティリティ(価格の変動幅)が大きくなります。

こうした中、(タイミング悪く)台湾ドル買い材料が短時間に積み重なったことで、台湾ドル高の動きが加速する展開になったと考えられます。

トランプ関税で台湾ドル高を容認? 頼総統の融和姿勢が市場を揺らす

トランプ政権は4月2日、台湾からの輸入品(除く半導体)に対しては32%の関税を課す方針を公表しました。いわゆるトランプ関税です。これに対し、台湾の頼総統は、ブルームバーグ・オピニオンに寄稿し、米国と公正・相互利益・ウィンウィンの貿易を追求する姿勢を示しました。

Taiwan Has a Roadmap for Deeper US Trade Ties

この寄稿の中で頼総統は以下4つの核心原則を示しています。

  1. 貿易交渉の再開と関税ゼロ化(台湾の6%関税を相互に撤廃)。

  2. 米国からのエネルギー・農産品・武器の調達拡大(貿易黒字是正、雇用創出)。

  3. 米国への投資拡大と「US投資チーム」設立

  4. 非関税障壁の撤廃(輸出管理や経由地問題の解決)。

4月の時点で台湾政府はトランプ政権に対して非常に融和的であったことが分かります。

そんな中、出所は不明ですが、台湾政府が米国との貿易協議の中で台湾ドル高を容認するとの見方(噂)が流れたようです。トランプ大統領は、米国の貿易赤字縮小の手段としてドル高を是正すべきとの見方を示し続けていることもあって、トランプ政権に対して融和的(弱腰?)な台湾政府が台湾ドル高を容認するとの見方はもっともらしく見えなくもありません。

そのためか台湾中銀や頼総統は「台湾ドル高容認」という見方を否定しています。台湾中銀は5月5日、7項目の声明を発表し、米国との為替交渉や台湾ドル切り上げ要求の噂を否定しています。台湾中銀の楊総裁は、台湾ドルの急騰が「貿易交渉の憶測に基づく誤解」であるとし、市場安定化へのコミットメントを強調しました。

また頼総統も為替に関する誤情報の拡散を抑制するよう呼びかけました。

No request from U.S. for appreciation of Taiwan dollar: Central bank

Central bank urges commentators not to speculate on NT dollar strength

Taiwan president calls for end to 'false' news about US forex talks

ただ、台湾政府がトランプ関税を回避すべく、台湾ドル高を(ある程度は)容認するとの見方は依然として残っているように思えます。

台湾の生命保険会社によるドル売り

台湾の生命保険会社は、米国債など米ドル建て資産を有する一方で、台湾ドル建ての負債を抱えています。このため為替ヘッジが不十分な場合、台湾ドル高は(台湾ドル建てで見た)資産価値の減少につながります。

そんな中、台湾ドルが急騰したことで、生命保険会社がリスク回避の動きとして、損失覚悟で米ドル売り・台湾ドル買いの動きを加速させた可能性があります。

また、TSMCやFoxconnといった台湾の輸出企業も貿易交渉の不確実性や台湾ドル高が続くとの思惑から、輸出によって得た米ドルを急いで台湾ドルに換えた可能性も考えられます。

台湾中銀の管理フロート制の機能不全

台湾当局による「台湾ドル高容認」という見方と関連するかもしれませんが、台湾中銀が台湾ドルの上昇を「黙認」したとの見方もあるようです。

台湾ドルは変動相場制ですが、台湾中銀は経済安定のため為替をある程度管理します(管理フロート制)。具体的には、台湾中銀が経済の安定やインフレ抑制のために積極的に介入し、レートの急激な変動を抑えています。

台湾ドルの目標水準は明確に示されていませんが、台湾中銀は(貿易収支、インフレ、成長率といった)経済状況に応じて、台湾ドルが一定の範囲内に収まるよう管理します。たとえば2021年に台湾ドルが急上昇した際には、台湾中銀は台湾ドル売り介入を実施し、台湾ドルの上昇を抑えたことがあります。

ところが5月2日と5日の台湾ドルは記録的な上昇となりました。台湾中銀が台湾ドル高を抑える姿勢が強ければ、介入を通じて台湾ドル高を抑えられたとの見方はもっともに思えます。

また、台湾政府がトランプ政権と貿易協議をする中、台湾中銀が台湾ドル高を抑制するためにドル買い・台湾ドル売りの介入をすることは協議にとってマイナスだ、と台湾政府が考えたする推測も、それなりにもっともらしいように思えます。

台湾ドルは5月6日に米ドルに対して反発しましたが、5月2日以前の水準にまで戻していません。台湾中銀は台湾ドルの急激な「変動」には介入で対応するものの、台湾ドルの水準についてはこれまでと違いコミットを弱めるようにも見えます。

今後の台湾ドル

今後の台湾ドルですが、今後も少しずつ台湾ドル安が続き、4月の水準(対ドルで33.5-34.0)付近に戻るとの見方がある一方で、台湾ドルは新しいレンジ(対ドルで29-30)に入ったとの見方もあるようです。

私は、台湾政府・当局が、台湾ドルの安定と経済成長の両立、を目指すだろうと考えています。そしてこの両立のため、政策群は次のような組み合わせになると予想しています。

①為替介入の継続

市場原理を尊重しつつ、過度な変動や無秩序な動きには介入、という基本姿勢が続くでしょう。

②米国との貿易協議

台湾中銀はトランプ政権からの「為替操作」の批判を回避するために、台湾ドル高を「ある程度」は容認すると思われます。5月2日や5日の会見は、台湾政府・当局が米国との協議で為替に振られたくないとの思いが強いことを示したと感じています。

③金融政策

台湾CPIが台湾中銀の予想(約1.9%)のまま安定するのであれば、台湾中銀は政策金利(現在2.00%)を据え置き続けるでしょう。台湾ドル高とコモディティ価格次第のところがありますが、台湾のインフレ圧力が一気に高まることは現時点ではなさそうだと考えられます。

④地政学的配慮

台湾政府は、中国との緊張関係が続く以上、米国との同盟強化を選ばざるを得ません。中国関連でリスクオフムードが強まるようであれば、台湾中銀は台湾ドル売りの動きを抑制すると考えられます。

整理すると、台湾政府・台湾中銀は、米国との貿易協議の進展を見ながらも、輸入インフレ抑制と輸出企業の採算性確保の両睨みで、緩やかな台湾ドル高を戦術的に容認すると思われます。

台湾ドルは新レンジに突入か、それとも4月の水準に戻るか?
米国との貿易交渉や地政学的リスクが鍵を握ります。ぜひ皆様のご意見をXでシェアください!

#台湾ドル
#トランプ関税

村田雅志(むらた・まさし)

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