バナナうんちへの道 下痢って何?まずは自分のタイプを知ろう
下痢って何?まずは自分のタイプを知ろう
便秘でお悩みの方に向けて、なぜ下痢のお話をするのか。
そう思われた方も多いかもしれません。でも、便秘外来の看護師として19年、3000人以上の方の排便のお悩みに関わるなかで、ずっと感じてきたことがあります。
便秘で悩んでいる方の多くが、下痢も経験している、ということです。
下剤を飲んで下痢になった。緊張するとお腹が緩む。便秘のあと、急に下痢になる。何度もトイレに行くのにスッキリしない。
そんな方が、本当に多いのです。
今回からは下痢だけに焦点を当てて、全10回でお届けしていきます。第1回は、自分の状態を知ることから始めましょう。
なぜ便秘の連載で、下痢の話をするのか
私のnoteは、もともと便秘が中心です。
でも外来で実際にお会いする方を見ていると、便秘だけ、下痢だけ、どちらか一方で悩んでいる方は、思っているより少ないのです。
便秘と下痢が交互に起こる方。下剤で下痢になったあと、また出なくなる方。出ないからと下剤を飲んで、今度は下痢でつらいという方。
腸の不調は、出ないか出すぎか、どちらか一方だけの問題ではないことが多いのです。
この連載のゴールは、下痢を我慢するものではなく、腸からのサインとして理解すること。そして、便秘でも下痢でも共通する、バナナうんちを一緒に目指していくことです。
下痢ってそもそも何でしょう?
下痢と聞くと、水っぽい便が出ることだけを想像しがちです。
でも、便通異常診療ガイドラインでは、もう少し幅をもって考えられています。
便の形がやわらかい便、あるいは水様便で、なおかつ排便回数が増える状態。これが下痢の定義です。
ポイントは2つあります。
水様便だけが下痢ではありません
やわらかい便も、下痢に含まれます。
便の形を7段階で表すブリストル便形状スケールでいうと、タイプ5から6のやわらかい便や泥状の便、そしてタイプ7の水様便が、下痢に該当しうる状態です。
水っぽくなくても、やわらかすぎる便が続いているなら、それは下痢のサインかもしれません。
回数が増えているかどうか
多くの場合、1日3回以上が目安とされます。
ただ、いちばん大切なのは、自分のいつもの回数から増えたかどうかです。
いつもは週に3回の方が毎日出るようになった。それも、その方にとっては増加かもしれません。
毎日出ているのにスッキリしない。何度もトイレに行くのに、お腹が空っぽにならない。こういう状態も、便のかたさと回数をセットで見ると、下痢のサインのことがあります。
急性と慢性、続き方の違い
ガイドラインでは、下痢の続き方にも目安があります。
急性の下痢
食あたりや感染などで起こる下痢です。
多くは1週間から2週間で治まり、長くても4週間以内に改善することが多いとされています。
慢性の下痢
4週間以上、下痢が続いたり繰り返したりして、日常生活に支障が出ている状態です。
仕事や学校、睡眠への影響。すぐトイレに行かなければならないという切迫感。こうしたものが続いているなら、慢性の下痢として考えられます。
1週間続いている段階は、まだ様子を見る時期かもしれません。でも4週間以上続いているなら、一度、医療機関に相談してください。
なお、便に血が混じる、真っ黒い便が出るといった場合は、期間に関係なく、すぐに受診が必要です。
大切なのは、回数とかたさと生活への影響、この3つをセットで見ることです。
慢性の下痢は、原因がひとつではありません
4週間以上続く慢性の下痢では、病院で原因を順番に探していきます。
便通異常症診療ガイドライン2023では、慢性の下痢を主に8つに分類して考えます。薬、食べ物、全身の病気、感染、腸の病気、胆汁酸、機能性、そして過敏性腸症候群。この8つです。
8つの分類を、ざっくりと
薬剤性の下痢は、抗がん薬や抗菌薬、胃薬、下剤、一部の降圧薬や抗うつ薬など、お薬が原因で起こるものです。
食べ物が関係する下痢は、カフェインやアルコール、牛乳、人工甘味料などが引き金になります。
全身の病気に伴う下痢は、甲状腺の病気や慢性膵炎などが背景にあります。感染が原因のものや、腸そのものに炎症や腫瘍があるものもあります。
胆汁酸が大腸に流れ込んで起こる下痢や、検査では異常が見つからない機能性の下痢、腹痛を伴う下痢型の過敏性腸症候群も、この8つに含まれます。
全部を覚える必要はありません。大切なのは、下痢が続くとき、原因はひとつではなく、病院ではこの8つを順番に見分けていく、ということです。
検査で大きな病気や感染が否定されても、機能性の下痢や過敏性腸症候群として考えていく場合があります。腹痛がないから大丈夫、とは言いきれないのです。
便のようすからも分類できます
慢性の下痢は、便の性状からも分けて考えられます。
水のような下痢には、腸に水分を引き込んで起こるものと、腸が水分を分泌して起こるものがあります。マグネシウムや人工甘味料、乳糖が合わないことなどが関わります。
脂っぽい下痢は、脂肪の消化や吸収がうまくいかないタイプで、慢性膵炎などが背景にあります。
血が混じる下痢や炎症を伴う下痢は、潰瘍性大腸炎やクローン病、大腸の病気、感染性の腸炎などが考えられます。この場合は、早めの受診が必要です。
まずは自分でできるチェック
専門的な8分類は、病院での見分けです。読者の方がまず確認できるのは、こんなポイントです。
最近、薬や下剤を増やしたり始めたりした方は、お薬が関係しているかもしれません。
カフェインや甘いもの、乳製品で悪化する方は、食べ物が引き金になっている可能性があります。
緊張するとお腹が緩む方や、便秘と下痢を交互に繰り返す方は、腸が疲れているサインかもしれません。
そして、4週間以上続いている方、血便や黒い便が出た方は、医療機関への相談を考えてください。
複数に当てはまっても大丈夫です。自分に近いものをざっくり知っておくだけで、受診したときの会話がぐっとスムーズになります。
お薬が原因のこともあります
ガイドラインでは、下痢の原因になりうるお薬が、たくさん挙げられています。
抗がん薬や抗菌薬、胃薬、マグネシウムを含む薬や下剤、抗うつ薬、一部の降圧薬、痛み止め、漢方薬などです。
新しい薬を飲み始めてから下痢が続いている方は、自己判断でやめてしまわず、処方してもらった先生に相談してください。
今日からできること、3日間の記録
難しいことは必要ありません。トイレのあと、次の3つだけメモしてみてください。
便のかたさ。これはブリストルスケールの1から7の数字でも、硬い、普通、やわらかい、水っぽい、といった言葉でも構いません。
1日の回数。いつもと比べて増えているかどうか。
そして、生活への影響。切迫感があったか、仕事や睡眠に支障が出たか、そのときどんな気持ちだったか。
3日続けるだけで、自分のパターンが見えてきます。
緊張する日はゆるい。下剤を飲んだ翌日は水っぽい。あの食べ物を食べたあとはお腹がゆるい。
記録は、自分の腸と向き合ういちばんの近道です。
大切なお知らせ
この連載を始める前に、ひとつだけお伝えします。
便に血が混じったり、真っ黒い便が出たりした場合は、すぐに医療機関を受診してください。
下痢のタイプを知る前に、まず安全を確認することが何より大切です。
10回、一緒に歩んでいきましょう
第1回は、自分の状態を知る回でした。
下痢の定義、急性と慢性の違い、そして慢性の下痢が原因によって分けられること。全部を覚えなくても大丈夫です。
なんとなく下痢気味かもしれない。4週間以上続いている。それに気づけただけで、もうスタートを切れています。
次回は、なぜ下痢になるのか、大腸の3つの働きについてお話しします。腸の仕組みがわかると、自分のせいじゃないと思えるようになりますよ。
焦らず、10回かけて一緒に進んでいきましょう。
あっこ
