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言葉は託されていく。

出勤中、歩いていると
『プリズンブレイク』のマイケル・スコフィールドにそっくりな男性とすれ違った。

プリズンブレイク。
懐かしいな。

そういえば、
中学時代にプリズンブレイクが
大好きだった友人がいた。
元気にやっているだろうか。

当時の自分は作品を一度も見たことがなかった。

それなのに、
その友人があまりにも熱心に話すものだから、
登場人物やストーリーを妙に知っていた。

思えば、
その友人の一言が
自分の学生生活を大きく変えた。

元々、自分は姉の影響で
吹奏楽部に仮入部していた。

けれど、
女性ばかりの空間に
少し居心地の悪さを感じていた。

そんなある日、
廊下ですれ違った友人が声をかけてきた。
「テニスやらないか?」

小学生からの仲だった。
テニスなんて考えたこともなかったが、
自分は即答していた。

そこから中学、高校と六年間。
気がつけばテニスは
人生の大切な一部になっていた。
今でもテニスコートを見ると少し胸が騒ぐ。

もしあの日、友人が声をかけていなかったら。
もしあの日、廊下ですれ違っていなかったら。

自分はまったく違う学生生活を
送っていたかもしれない。

人生は、大きな決断だけで変わるわけではない。
「テニスやらないか?」
そんな何気ない一言で、
人生は静かに進路を変えていく。

高校に進学した自分は、
今度は硬式テニス部を創設した。

顧問の先生を探し、部員を集める。

その時、自分もまた誰かに声をかけていた。
「テニスやらないか?」

部活発足の日。
「きたよー!」と声をかけてくれるみんな。
思っていた以上に集まってくれて、
これからの部活生活にワクワクしていた。

そして卒業式の日。
かつて自分が誘った部員の一人が言った。
「誘ってくれたおかげで楽しかったよ。」

たまらなく嬉しかった。

中学時代、
友人から受け取った一言。

その言葉は自分の中で終わらず、
誰かへと受け渡されていた。

言葉は思った以上に遠くまで届く。

そして、自分が放った言葉は、
いつか思いがけない形で返ってくる。

だから、誰かに向ける一言を
大切にしたいと思う。

自分が何気なく口にした言葉も
誰かの人生のどこかに
残っているかもしれないから。

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