見出し画像

ぼくのなつやすみ2

この時期にだけ、
診療所に行くと、一人の女性に会える。

白く透き通った人。
笑顔が似合う人。

一生忘れられないと思っていた。
本当にそうなってしまった。

「ねえキミは悲しいこと、平気かな?」

大人になったボクが言う。
ゲームなんて社会に出たら何の役にも立たん。

役に立たないものは世の中に必要ないの?

確かに、あの夏にボクが見たものは
何の役にも立たない。
そんなものばかりだったかもしれない。

それでも、
今でもボクを支えてくれているのは、
あの頃の記憶だ。

「夏の今の時期は
家に帰っても良いことになってるの」

いつだって帰る場所は慣れ親しんだ場所。

青い海。
白い雲。
季節の花。
夕焼けに染まる山々。
それから、秋刀魚の香り。

「私、このまちが好きだな。
だって、私はここで生まれ育ったんだもん」

あの人は方向音痴。
迷わないように、教えてあげよう。
そっと火を添えて、迎えてあげよう。

「会いに来てくれて、本当にありがとう…」

きっと、すぐに
はしゃぎたい気持ちになっている。

まるで、
梅雨明け頃の青い空のように清々しい心持ち。

「何歳から大人なの?」

「じゃあ、ボクくんは何歳まで子供でいたい?」

あの頃は楽しかった。

毎朝のラジオ体操。
みんなで探検した。
秘密基地も作った。
釣りして、海で泳いで、
集めた虫で虫相撲して、
みんなで夜空の星を眺めた。

毎日が宝石だった。

「夏休み、ずっと続くと良いよね。」

夏が過ぎていく。
やがて季節が変わる。
人も変わる。
そして、いつか大人になる。

毎日を日記に残していく。

同じ文章も、同じ日々も、
見る日が変われば、
見る目が変われば、
ひと文字だけ変わる

あの頃も楽しかった。

そして今も、あの頃の続きを生きている。

さて、たまには帰省しようかな。
田舎はすっかり変わってしまったけど、
伝えたいことは、いっぱいあるから。

あの頃飛ばしたロケット
今でもまっすぐ飛んでいる。

いいなと思ったら応援しよう!