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吉田修一最新作『タイム・アフター・タイム』書評/「「水平線」が持つ意味」産経新聞/映画「国宝」大ヒット後の初長篇

 吉田修一さんの新作『タイム・アフター・タイム』の書評を産経新聞に寄稿しました。表題は「「水平線」が持つ意味」です。

「最後に勝つのは正義よりもやさしさだから」など、心に響く会話文が生きた長編の青春小説である。長崎と沖縄の海の景色を重ねつつフェリー乗り場の待ち時間のような儚い恋愛を描く。マーク・ロスコの絵画のように美しい青色の表紙が目を引く。『悪人』がデビューから10年、『国宝』が20年、本作が30年の記念である。『国宝』と同様に長崎を起点とした物語で純粋な性格の高校生の「オッソー」と「久遠」の「成熟と喪失」の劇を主題としている。
 吉田修一の作品で長崎や沖縄の海は、青春を象徴する「美しい存在」であると同時に、外に出る自由を阻む「禍々(まがまが)しい存在」でもある。本作では、写真家の杉本博司が「海景」でとらえたような「水平線」が重要な意味を持つ。水平線は遠そうに見えて約4キロ。歩くことができれば、1時間ほどの距離だ。つまり水平線が分かつ、私たちが馴染(なじ)んだ世界と別世界の境界は、思いのほか近い。

「水平線」が持つ意味『タイム・アフター・タイム』吉田修一著

<書評>評・酒井信(明治大准教授)産経新聞

 吉田修一さんの新作『タイム・アフター・タイム』(幻冬舎、2026年5月27日発売)は、映画「国宝」が大ヒットする中で、日本経済新聞に連載されていた作品です。作家デビュー30周年の記念作で、20周年の記念作が『国宝』でした。
 マーク・ロスコやバーネット・ニューマンの絵画のような美しい装丁で、長崎の夏の海と空を想起させます。初期短編のような青春小説が、500頁を超える大作として読めるとは。長崎の人にとっては懐かしい「大黒市場」も登場します。

 吉田修一さんの『国宝』や『悪人』『怒り』などの作品については、宇野常寛さん司会の三宅香帆さんとの対談でお話ししています。松本清張の後継者としての吉田修一という見立てで、原作映画が特大ヒットした芥川賞作家という共通項があります。
 吉田修一さんの新刊『タイム・アフター・タイム』(幻冬舎、2026年5月27日発売)と合わせて、ぜひご視聴ください。

「変わる日本文学―社会の「構造」と「本音」を読む」(楽天大学ラボ)酒井信×三宅香帆×宇野常寛
https://youtu.be/8SMtshKFZ5s?si=jyuI1egzKWGSKU4n

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 2026年1月7日に『吉田修一と『国宝』の世界』が朝日新聞出版より刊行されています。装丁は『国宝』と同じ町口覚さんで、版元も『国宝』と同じ朝日新聞出版です。

『国宝』を中心として、吉田修一さんの代表作を網羅したブックガイドとしてもお読み頂けます。よろしくお願いいたします。
 過去に記した記事は下のリンクでお読み頂けます。

 批評家の宇野常寛さんと映画評論家の森直人さんと映画「国宝」について批評座談会を行ないました。
 映画「悪人」「怒り」と比較しながら、吉田修一原作・李相日監督の作品の特徴について深掘りした充実した内容でした。

 映画『国宝』は歌舞伎を「殺した」のか? 吉田修一&李相日監督の到達点を語り尽くす
https://www.youtube.com/watch?v=Y_q0gmNy7vY&t=1504s

「ニューズウィーク日本版」に、『吉田修一と『国宝』の世界』(朝日新聞出版)の紹介記事をご掲載頂いています。タイトルは「吉田修一の『国宝』は「原点」から生まれた...<長崎南高校の校区><旧市街>の記憶と風景とは?」です。

 ダイヤモンド・オンラインの「ニュースな本」に『吉田修一と『国宝』の世界』(朝日新聞出版)の紹介記事が3本掲載されています。
 1本目の記事の表題は「映画『国宝』で、女形が「からっぽ」とネガティブな言葉で評されたワケ」です。

映画『国宝』で描かれた歌舞伎の世界。女形の立花喜久雄が「からっぽ」という言葉で評される映画のワンシーンや、女人禁制の掟などから、歌舞伎はもう時代にそぐわないとの批判も少なくない。だが、差別の名残りと片づけてしまうとその特異な深みは見えなくなる。『国宝』が、そして原作者の吉田修一が、女形を「からっぽ」と表現した真意とは?

ダイヤモンド・オンライン 
映画『国宝』で、女形が「からっぽ」とネガティブな言葉で評されたワケ

酒井 信: 文芸評論家、明治大学准教授

 2本目の記事の表題は「映画『国宝』のタイトルに込められたもう1つの裏テーマとは?【文芸評論家が解説】」です。各記事ともに目を引く写真をご掲載頂いています。

映画『国宝』は、単なる歌舞伎役者の成功譚ではない。本作が浮き彫りにするのは、生きた人間が「国宝」と呼ばれる苦悩や、個人の欲望を削ぎ落とし文化を背負わされる宿命だ。人間国宝の在り方について考えていくと、映画『国宝』のタイトルに込められた裏のテーマが見えてきた。

ダイヤモンド・オンライン
映画『国宝』のタイトルに込められたもう1つの裏テーマとは?【文芸評論家が解説】

酒井 信: 文芸評論家、明治大学准教授


 3本目の表題は「映画『国宝』では描かれなかった、梨園という「小さな水槽」で生きる歌舞伎役者たちの悲惨な末路」です。編集はお任せしてますが、過激なタイトル(笑) 
 写真は、小説『国宝』で喜久雄が演じた「助六由縁江戸桜」の「三浦屋揚巻」で、歌舞伎ファン好みの良い選択だと思いました。ご一読を頂ければ幸いです。

「歌舞伎役者の家系に生まれれば一生安泰」。そう思われがちだが、現実はまったく逆だ。梨園という閉ざされた世界では、舞台に立ち続ける以外の生き方を選べず、生活に困窮した挙句、身を持ち崩していく役者も少なくない。華やかに見える梨園とは、一度入ったら抜け出せない「小さな水槽」なのだ。映画『国宝』で描かれなかった、歌舞伎役者たちの行く末を追う。

ダイヤモンド・オンライン 
映画『国宝』では描かれなかった、梨園という「小さな水槽」で生きる歌舞伎役者たちの悲惨な末路

酒井 信: 文芸評論家、明治大学准教授

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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酒井信 『松本清張の昭和』講談社現代新書『吉田修一と『国宝』の世界』朝日新聞出版 ありがとうございます! 今後ともよろしくお願いいたします!