メルクも「大規模リストラ、コストカット」の波に:第2四半期決算

はじめに
2025年7月29日、米メルク(Merck & Co.)は、2027年末までに年間30億ドルのコスト削減を目指す大規模な構造改革を発表しました。
目的は明確で、「Keytruda後」の成長基盤を築くため、削減した資源を新薬20本以上のローンチに再投資するというものです。また、トランプ政権が計画している米国への医薬品輸入に対する関税に備えながら行われていることも報じられています。
Keytruda依存の構造リスク
メルクの第2四半期決算では、抗がん剤Keytrudaの売上が80億ドルを突破し、全社売上(158億ドル)の過半数を占める状況となっています。しかし、このKeytrudaも2028年に米国で特許切れを迎える予定で、バイオシミラー(バイオ後続品)との競争が本格化します。

HPVワクチン「Gardasil」も苦戦が続いており、中国市場の需要減を受けて前年同期比55%減の11億ドルまで売上が減少。中国への出荷も2025年中は見合わせる方針です。

コスト削減の中身
人員削減+不動産・製造最適化
具体的なレイオフ(人員削減)数は公表されていませんが、非成長領域の管理部門・営業・研究開発のポジションを削減する一方で、成長戦略に沿った分野で新規雇用を進めるとしています。
また、グローバル不動産の縮小や製造ネットワークの最適化も並行して進め、製品供給と地域戦略の再調整を図るということです。
浮いた30億ドルは?
20本の新薬で年間500億ドルを狙う
CEOのロブ・デイビス氏は、コスト削減の目的について「20本以上の有望新薬に資源を集中投下するため」と明言しています。
これらの製品群は将来的に年間500億ドルの売上を生み出すポテンシャルがあるとし、特にVerona社買収などを通じて呼吸器や循環器など非腫瘍領域への拡張も狙っています。
なお、Verona社の買収額は最大100億ドルで、2025年の製薬業界ではJ&JによるIntra-Cellular買収(146億ドル)に次ぐ大型案件でした。
※少し詳しく書いています。
業界全体に広がるコスト見直し
メルクに限らず、製薬大手は一斉にコスト構造の見直しに動いているようです。
ファイザー:2027年までに77億ドルのコスト削減目標に上方修正
ブリストル・マイヤーズ・スクイブ:2027年までに20億ドル削減
バイエル:2026年までに23億ドル(2億ユーロ)のコスト削減と1万人超の人員削減
この流れは、「高額新薬の市場投入には巨額のR&D資金が必要」である一方で、既存ブロックバスターの特許切れによる売上急減が待ち構えていることに起因しています。

Abey John Abey John
おわりに
メルクは今回の施策について「株主価値と患者価値の両立を目的とした再配分」と位置付けているようです。コスト削減は一時的に株価を支えるかもしれませんが、その本質はいつも、そして歴史は繰り返す、「成長ドライバーへの資源集中」です。
もし同社が新しいポートフォリオを組み直すことに成功し、Keytrudaの穴を埋めるような魅力的なパイプラインを築けるかどうかが、今後の中長期的な評価を大きく左右し、時価総額を決め、株価を上げることにつながるでしょう。
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2025年1Hの医薬品セクターを振り返る
医薬品業界:3種類のマガジンを用意
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