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【 小さな宿 】  190章 写真と建築の旅 ヨーロッパ編 067   文明に残る(上昇) - 脱型するバチカン

オルヴィエートでは下りたあとに上がらなければならなかった。ここでは上がったあとに何度も下りていた。



小国の境目


朝、この小さな宿で働くドーンに起こされる。チェックアウトを急かされる。透き通る歌声に似合わず、ゲストへの扱いは雑だった。手続きを済ませ、宿を出る。

近くの宿 ”Rome In Keiko”に移り、一度荷物を置いた。
前夜、オルヴィエートから戻ったあと、S君を含む数人の日本人と夕食をとった。その流れのまま、三人でバチカンへ向かう。

オルヴィエートの螺旋はまだ身体に残った。ローマの朝を歩いていた。

しばらく歩くと一方向に進む人の流れが見えた。それに乗り、いつの間にか境界を越えていた。半円状の列柱空間に向かわされる。そこに一人の老いた修道女が身支度をして地面にひざまずいていた。彼女の見つめる先にサン・ピエトロ大聖堂があった。

広場に出る。既に人で溢れていた。あらゆる場所から信者たちがここに集っていた。

大聖堂に入る。彫刻と空間に押された。



捻りの果て

螺旋の上昇に入る。オルヴィエートで潜った螺旋が、また現れた。

あの井戸では地下へ潜り、同じだけ戻る構造が見えていた。旅の序盤に歩いたパリの凱旋門は、一定幅の上昇だった。

しかしここでは、その構造は見えない。どこまで続くのか分からないまま、ひたすら続いていく。



最初は二人くらいが並んで歩ける幅だったが、上に行くにつれて、一人がようやく通れる幅へと狭まっていく。回転も内側へ収束し、空間は上へ行くほど閉じていく。

絞られていく動きだけが続く。巻き込まれていった。

終盤ほど、重く動いていた。



内からの景色

クーポラに出る。外に出ると視界が開け、都市が広がる。正面にサンタンジェロ城が見え、屋根の連なりが続いている。

ローマに来ていたことに気づく。

足元には広場があり、群衆がいた。
ファサードの聖人たちがそれを見下ろしていた。



昼を食べに外へ出る。一度ローマ側へ出る必要があった。バチカンは国であるのに、食べることを外部に依存する不自由があった。

再び内部に戻り、バチカン美術館へ向かう。長い回廊と展示空間が続き、移動は単調になる。見るという行為は次第に薄れ、通過だけが残っていく。



やがてシスティーナ礼拝堂に至る。
『最後の審判』。
疲れ切った両足に、神々の重さがのしかかってきた。



そこを離れ、大聖堂にもう一度戻る。
その前に、再び捻れた。
モモの二重螺旋。

広場。
何となく、しばらく人の流れを眺めていた。
大聖堂を後にする。
列柱の下に老女がいたが、通り過ぎた。

宿に戻るしかなかった。
帰りにスーパーに寄り、食材を買った。
宿に着くとベッドに沈み、夜まで眠った。

螺旋の動きは、体に回りきっていた。


次章へ、つづく

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