娘に「パパがいい」と言われ脳内でサンバを踊りかけたが、背後の妻が「灼熱のブラジル」だったので即座に鎮火した話
うほ。元山お父さんです。
今朝、私は人生のピークを迎え、その3秒後に撃墜されました。
我が家の朝は、戦場です。
7歳娘(長女)の「布団からの脱出」というミッションを巡り、大人たちが暗躍する。
そこで起きた、小さな奇跡と、大きな命の危険についての報告書です。
朝の我が家は「北風と太陽」
まず、前提条件を共有させてください。
我が家には「絶対的司令官」である妻と、1歳の怪獣(次女)がいます。
妻は毎朝、自分の準備もしつつ、怪獣を抱えながら、長女を学校へ送り出さなければなりません。
当然、余裕なんてない。彼女の辞書に「優雅」という文字はなく、あるのは「効率」と「遅刻厳禁」のみ。
だから、妻の起こし方はこうなります。
「早く起きなさい。遅刻するでしょ!」
正論です。ド正論。
これは、イソップ童話で言うところの「北風」です。
布団という防護壁を、強引に剥がしにかかるスタイル。
対する私。
私は鼻をほじりながら、横からヌルッと参戦します。
「あさだよ~。そとあかるいよ~。パパの抱っこがまってるぞ~」
緊張感ゼロ。
日によっては、「ほら、窓の外をピカチュウとニャオハが見てるよ~。一緒に見ようぜ~」と、虚言癖ギリギリのファンタジーで誘います。
これは「太陽」……というより、ただの「ぬるま湯」です。
「パパがいい」という名の麻薬
そんなある日の朝食時。
なんとか起きてきて、テレビを見ながらパンをモグモグしている長女に、私は出来心で聞いてしまったのです。
「ねえ、なんでママだと起きないのに、パパだと起きるの?」
どうせ「なんとなく」とか言われると思っていました。
しかし、彼女はパンくずをこぼしながら、ボソッと言ったのです。
「パパがいいんだもん」
……時が、止まりました。
その瞬間、私の脳内ではリオのカーニバルが開幕しました。
脳細胞の一つ一つが、極彩色の羽飾りをつけてサンバを踊り始めたのです。
ビバ! サンバ! オレ! パパの時代到来!
私が前世、スイスの山脈だった頃の話です。これほど急激な雪解けがあったでしょうか。
いや、ない。
娘の言葉は、私の心の万年雪を一瞬で蒸発させる、観測史上最大の大熱波でした。
温暖化なんてレベルじゃありません。もはやここはヨーロッパの寒冷地ではない。
私の脳内気候は一気に赤道を越え、真夏のコパカバーナ・ビーチへと変貌を遂げたのです。
私の口角は重力に逆らい、天井を突き破る勢いで上昇しました。
背後に「ブラジルの熱波」を感じて
しかし。
そのサンバは、わずか3秒で強制終了しました。
なぜなら、背中が熱いから。
振り返らなくてもわかります。
私のすぐ後ろで、1歳児を抱っこした妻が、無言で立ち尽くしている気配がする。
その熱量は、私の脳内カーニバルごときが裸足で逃げ出す、本場ブラジルの熱帯雨林レベル。
(聞こえてた……絶対、今の「パパがいい」聞こえてた……)
妻の心の声が、Wi-Fi経由で直接脳内に届きます。
「はあ? 私が毎朝、鬼の形相で起こしてるのは誰のためだと思ってんの? あんたが鼻ほじりながらイイ顔してる横で、私がどれだけ泥をかぶってるか、わかってんのかあぁん?」
ヒィィッ!
やばい。これは「パパの勝利」ではない。「パパの公開処刑」の合図だ。
私は即座に、娘(7歳)に向かって、小声で早口に告げました。
「で、でもね! それはママには言っちゃダメだよ! ママも頑張ってるからね! ね!」
必死の火消し。
山火事に、おちょこ一杯の水をかけるような無力感。
私はそっと、脳内で踊っていたサンバダンサーたちを、娘の背後に整列させ、全員で「主犯は彼女です!」と指差しました。
私が「ぬるま湯」でいられる、たった一つの理由
よく考えてみれば、私が娘に対して「太陽(という名のぬるま湯)」でいられるのは、妻が「北風」として、嫌われ役を買って出てくれているからなんですよね。
もし妻がいなければ、私が生活リズムを整えるために、鬼にならなければならない。
私がヘラヘラと鼻をほじっていられるのは、妻が毎朝、髪を振り乱して現実(時間管理)と戦ってくれているおかげなのです。
結局、娘の「パパがいい」という言葉は、パパが優れているからじゃない。
パパが、ママという頑丈な土台の上に乗っかって、楽をしているだけの「観葉植物」だからなんです。
植物パイセンも、太陽だけじゃ枯れちゃう。雨や風があってこそ育つんです。
そう、これは我が家の生態系バランス。
妻という「厳しさ」という土壌があるから、私という「ふざけた雑草」が生えていられるのです。
だから妻よ、どうかその背中の熱気を少し下げてくれないか。
パパの脳内サンバは、もう鎮火したから。
焼け野原になった私の心に、優しく水をください。
うほ。
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