「正解がないから、仕事は面白い」
「これって、どうやればいいですか?」
はじめての仕事、はじめての場面。そんなとき、誰かにそう聞きたくなるのは、ごく自然なことです。わからないことに戸惑ったとき、「やり方を教えてください」と尋ねるのは、ごくふつうの反応です。
でも実際の職場では、返ってくる答えが「うーん、それはね……」と歯切れが悪かったり、「一概には言えないんだけど」と、はっきりしないことが多いものです。

「なんで教えてくれないの?」 「ちゃんとしたマニュアルはないの?」
そんなふうに感じたことがある人も、きっと少なくないでしょう。でも、もしかしたらその“はっきりしなさ”には、大事な意味があるのかもしれません。
「正解がない」ということ
学生時代には、問題を解くたびに、はっきりとした「正解」がありました。テストの点数も、答え合わせも、すべてが白黒ついていましたよね。
けれど社会に出ると、そんなふうに「これが正解!」とは言い切れないことばかりです。

なぜなら、仕事というのは「一つの答えを出す」ことよりも、「自分で問いを立てる」ことから始まるものだからです。
誰に、どんなふうに声をかけたら相手が動いてくれるか。どんなアイデアが、目の前の人の心を動かすか。どんな表現が、一番伝わるのか。
こうした問いには、教科書に書いてあるような「正解」はありません。相手や状況によって、ベストな答えは変わってしまうからです。まるで、生きている問題に向き合っているような感覚です。
「やり方」を聞いても答えが出ない理由
「やり方を教えてほしい」と言われると、教える側も考えこむことがあります。なぜなら、その“やり方”がいつも正しいとは限らないからです。
たとえば、同じ営業でも、相手がちがえば話し方も変わります。デザインの仕事でも、見る人によって「良い」「悪い」の基準が変わります。マネジメントも、相手の性格やタイミング次第で、言葉の選び方を変える必要があります。
つまり、仕事って「これさえやればうまくいく」という“正解”がないんです。そのかわりにあるのは、「そのとき、その場に合わせた“判断”」です。
そして、その判断をする力こそが、これからの時代にとても大切な力になっていくのです。
仕事は“終わらないゲーム”
ここで、ひとつたとえ話をしましょう。
もし、ルールもゴールも決まっていて、プレイするたびに同じ結果が出るゲームがあったとしたら……あなたはそのゲームに夢中になれるでしょうか?
きっと、最初は楽しくても、すぐに飽きてしまうはずです。
でも、先が読めない展開、自分の選択が結果を変えるようなゲームは、面白くてたまらないですよね。仕事も、まさにそういう“終わらないゲーム”のようなものなんです。

あるときは予想外の反応が返ってきたり、あるときは思いもしなかった展開になったり。それを一つずつ乗り越えていく中で、自分なりのやり方やスタイルができてくる。これこそが、仕事の本当のおもしろさなのだと思います。
正解のないことを楽しめた経験
ぼくが以前、イベントの企画を担当したときのことです。
前例もマニュアルもなく、「どうやったら参加者同士がもっと仲良くなるのか?」という目的だけが与えられました。最初は、「何が正解なんだろう?」「うまくいかなかったらどうしよう?」と不安ばかりでした。
でも、途中から「だったら自分が面白いと思うことをやってみよう」と開き直って、自由にアイデアを出すようになりました。うまくいくかどうかはわからない。でも、やってみる。そんなプロセスが、どんどん楽しくなっていったんです。
結果、イベントは大成功とは言えないかもしれないけど、多くの人が笑顔になって、「またやりたいね」と言ってくれました。そして何より、「自分の判断で進めて、かたちにできた」ことが、ぼくにとって大きな自信になったのです。
正解のなさが、人を育てる
不確実な状況に直面したとき、「何が正解か?」を探すのではなく、「今、自分はどう考えるか?」を問い続けられる人が、これからはもっと必要とされていくと思います。
・まずは、自分で問いを立てる力。
・それから、仮説を立てて試す力。
・そして、うまくいかなくても学びに変えていく力。
この繰り返しが、人を育て、深みを増していきます。そして何より、自分の“らしさ”を大切にした働き方をつくる土台になるのです。
あなたの判断が、答えになる
いま、「正解がない」という状況にいる人は、不安や戸惑いを感じているかもしれません。でも、それは“自由に考えて動けるチャンス”でもあります。
自分の頭で考え、動き、つまずきながらも前に進んでいく。その経験が、あなた自身の判断軸をつくり、やがて誰かの役に立つ日がくるはずです。
そしてそのとき、きっとこう思えるでしょう。
「ああ、正解がなかったからこそ、おもしろかったな」って。

だからこそ、ぼくはこう伝えたいのです。
正解がないから、仕事はおもしろい。
そして、あなたの考えたその一歩が、きっと誰かの希望になる。
