司馬遼太郎「日本人はどうしてこんなに馬鹿になったのか」第1章:空気に支配される民族
第1章 空気に支配される民族
日本人は勤勉で、優しくて、真面目である
世界に誇れる美徳を持ちながらも、その奥に潜む危うさがある
日本 人というのはね、非常に優しい民族です
相手の立場を思いやり、場の調和を大切にする
しかしその優しさが、時に人間を不自由にする
例えば、戦時中のことです
戦時中多くの人が心のどこかで「これはおかしい」と感じていたが誰も声を上げなかった。
「空気がそうなっていた」からです。
この国では正しさよりも空気が優先する
多数の意見が絶対で、沈黙は安全
その空気に逆らうものは裏切り者と見做される。
日本人は規則よりも気分で動くもの。
だから方向を間違えても誰も止められない
戦争も組織の暴走もそこから始まる
空気というものは非常に恐ろしい力を持っています
それは命令でも法でもない
けれど人を縛る
人の思考を止めてしまう
空気は人を縛り、思考を止めてしまう
だからそれが日本人の根本的な弱点だと思う
会社で上司の言うことに誰も異を唱えない
学校で、多数派に従うことが正義とされる
町内で“黙って従う人”が良い人とされる
そして誰も考えなくなる
誰も責任を取らなくなる
空気の中で安心する民族はいずれ空気に滅ぼされる
空気 に支配された国は、一見まとまりがあるように見える
けれど、誰も舵を取らない船のようなものです
嵐が来れば、たちまち沈んでしまう
江戸末期の幕府もそうでした。
誰もが「このままではいけない」とわかっていながら、誰も口を開けなかった
結果、黒船が来て、時代がひっくり返った
つまりね、日本人の優しさは、時に“判断を放棄する優しさ”になる
それ が、私がみた、この国の一番の危うさなんです。
