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映画【国宝】を観た感想

以前から気になっていた本作がAmazonプライム・ビデオで公開されたので、高い評判への期待とともに鑑賞した。

これまで歌舞伎を観たことがなく、その世界についても全く知識がなかった。しかし、画面越しに観る女方の化粧や発声、指先まで洗練された所作は非常に美しく、同時にどこか「恐ろしさ」すら感じるほどの迫力があった。日々の稽古は子供であっても容赦なく、想像を絶する努力の上にこの芸が成り立っているのだと圧倒された。

物語は、極道の息子である喜久雄(きくお)が歌舞伎の世界に足を踏み入れるところから始まる。才能を認められ頭角を現していく喜久雄だが、そこはやはり「血筋」が絶対とされる厳しい世界だ。一度は歌舞伎から離れるものの、重鎮に見いだされて再び舞台へと呼び戻され、やがて「国宝」への道を歩み始める。

梨園の御曹司として生まれた同い年の俊介(しゅんぼう)との切磋琢磨、血縁のない喜久雄が跡継ぎに指名される波紋、俊介の家出、そして先代の死後に喜久雄が直面する苦難と追放……。次々と事件が起こる怒涛の展開で、3時間近い長尺を感じさせないほど物語に引き込まれた。

特に印象に残っているのは、物語の起点となる父の最期だ。「喜久雄、見とけ」と言い残して逝った父の姿は格好良くもあったが、子供心には一生消えないほどの衝撃だったに違いない。

また、喜久雄が初めて先代の代役を務める直前、泣きながら「しゅん坊の血をコップに入れてがぶがぶ飲みたいわ」と吐露するシーンには胸を打たれた。本気で芸の道を突き進む者だからこそ抱く、嫉妬とも渇望ともつかない剥き出しの感情が痛いほど伝わってきた。

その執念が結実したのが、何度も練習を重ねていた近松門左衛門の名作『曽根崎心中』の舞台。「死ぬる覚悟が」の練習シーンが印象強い。本番の演技は本当に素晴らしく、切ない女の情念が見事に表現されていて目を奪われた。

一方で、歌舞伎の世界を追われ、地方回りの営業に身を落とした際の描写も忘れられない。化粧が崩れ、衣装を着たまま屋根の上で踊るシーンは、切なさと狂気が混じり合い、恐ろしくも幻想的だった。

血筋や才能、そして運命に翻弄されながらも、彼らが交錯していく様子は、まさに「芸の道」の過酷さと美しさを象徴しているようだった。

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