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『赤と青とエスキース』書評|一枚の絵が繋ぐ、30年の時を超えた人生の「軌跡」

青山美智子氏による『赤と青とエスキース』は、オーストラリアのメルボルンで描かれた一枚の「下絵(エスキース)」を軸に、30年にわたる人々の交錯を描いた連作短編集です。

「正解のない世界」で悩みながらも、何かを創造し、誰かと繋がろうとする人々の姿。その地道な歩みが、最後には鮮やかな一本の線として繋がっていく快感は、読む者の心に静かな彩りを与えてくれます。

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【あらすじ】

メルボルンの若手画家が、ある日本人女性を描いた一枚のエスキース。 その絵は、持ち主を変え、海を渡り、30年という歳月の中でさまざまな人々の手に渡っていきます。

恋人に本心を言えない学生、自らの限界に悩む漫画家、技術の継承に葛藤する額装師。 一枚の絵をきっかけに、彼らの止まっていた時間が動き出し、思いもよらない場所へと導かれていきます。


【刺さる人・やめた方がいい人】

優しくも構造的な美しさを持つ物語は、読む人の「今の状況」によって異なる響き方をします。

■ こんな人には「刺さる」一冊です 「自分のやっていることに正解が見えない」と悩む方や、クリエイティブな仕事に携わる方、あるいは職人としての誇りを大切にする方に刺さります。異なる場所、異なる時代の物語が一つに収束していく「伏線回収」の心地よさを味わいたい方にも最適です。日々の何気ない出会いや選択が、未来の誰かに繋がっているかもしれないという希望を感じたい時におすすめです。

■ こんな人には合わないかもしれません 一話完結の短編よりも、一人の主人公をじっくり追う長編を好む方には、視点が切り替わる構成が少し物足りなく感じるかもしれません。また、非常に穏やかで前向きなトーンで物語が進むため、もっとヒリヒリするような毒や、救いのないシリアスな展開を求めている方には、少し綺麗すぎると感じられる可能性があります。


【読んだきっかけ】

本屋大賞ノミネート作を順に追っており、その構成の巧さと評価の高さに惹かれて手に取った。

【感想】

メルボルンの若手画家が描いた一枚のエスキースが、30年という長い時間をかけて人々の間を渡っていく構成が秀逸だ。各章では、その絵を軸に愛や夢、人間関係のリアルな悩みが描かれる。

特に印象的だったのは、額装師や画商、漫画家といった「創造」に携わるプロフェッショナルたちの悩みだ。正解のない世界で、自らの技術や感性と向き合い続ける彼らの姿には、ものづくりに関わる者としての共感がある。一章一章が独立した短編として完成度が高く、淡々とした日常の中に宿る「変化」の兆しが丁寧に描写されている。

【終盤の印象】

最終章でこれまでの点と点がすべて繋がる。連作短編集ではよくある手法かもしれないが、バラバラだと思っていた登場人物たちの繋がりが鮮やかに回収される展開は、やはり物語としての高い効果とカタルシスを感じさせる。

それぞれの人生が独立していながらも、一枚の絵という「軌跡」を通して見えない糸で結ばれている。その時間の重みと繋がりの深さが、読後感に温かな余韻を残してくれた。

【ボリューム感】

全4章とエピローグで構成されており、非常にテンポ良く読み進められる。一章ずつを大切に読み進めても、週末に一気に駆け抜けても楽しめる、程よい密度の一冊だ。

【読後の一語】

軌跡


【まとめ】

完成された「作品」ではなく、可能性に満ちた「下絵(エスキース)」だからこそ、そこに人々は自分の人生を重ね合わせることができたのかもしれない。

30年の時を経て完成する、壮大な人生のパズル。 読み終えたとき、あなた自身のこれまでの歩みもまた、誰かに繋がる大切な「軌跡」の一部であると感じさせてくれるはずです。


【選べる読書スタイル】

30年の時を経て繋がる、色の鮮やかな物語を。

  • 紙の本でじっくり向き合う

  • Kindleで手軽に持ち歩く

  • Audibleで「物語の色彩」を耳で体感する


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