自分の身体でSFを書く☆ベーシスト今沢カゲロウと昆虫の話
ベーシスト/昆虫画家/昆虫食開発者/
四国大学特任教授、
今沢カゲロウさんのライブ&講演に
行ってきました。
通りすがりに見かけたポスターの印象は、
大きなクレッション・マーク。
わけのわからないものに目がない私は
いそいそと申し込みをする。
■ BASSNINJAという人
BASSNINJAの異名を持ち、ベース一本で世界を渡り歩いてきた、今沢カゲロウさん。
BBCで特集され、インドの人間国宝の打楽器奏者とも共演している。
ーBlue Moon という、このアルバムを聴いてみたが、信じられないほど複雑なインド古典音楽のリズムを、ベース一本で受けて立つかっこよさだ。

しかし今回はミニライブ付きの教養講座で、
ほぼほぼ「昆虫」の話だった。
昆虫の鳴き声は、地球最古のラブソングだ。
平安時代の人々はそれを知っていて、
おしゃれな虫かごに昆虫を入れ、
夜寝る前に聴いた。レコードもラジオもない時代、虫かごは史上最古の再生装置だった。
虫の音を音楽として聴けるのは
日本人だけらしい。
■ もし権力者が社会性のあるタイプの昆虫だったら?
もし権力者が社会性のある昆虫(アリのような)だったとしたら、戦争はなくならないだろう。
女王を守るために兵隊が動くように、
権力は構造として戦争を必要とする。
儲かるからだ、と彼は言う。
「ラブアンドピース」が当事者に届かないのも
同じ理由だ。強い愛は強い排他性を生む。
宗教も民族も、その内側への愛が深いほど、
外側への攻撃性が増す。

その例として彼はルワンダに行って聞いた
虐殺の話をしてくれた。
もともとフツ族とツチ族の区別など
存在しなかった。ざっくり言うと、
かつてルワンダを支配していた
ベルギー人が鼻の高さと牛の数だけで
勝手に線を引いた。それだけのことが、
前日まで仲良い隣人だった人間たちを、
翌日には殺し合わせた。
■ では私たちはどうするか
社会性を持たない昆虫には
侵略という概念がない。
ただ生態系の流れを読み、
適応し続ける。感情に振り回されるのでもなく、
理念を振りかざすのでもなく——状況の仕組みそのものを問い、その中で自分たちが生き延びられる条件と方法を徹底的に追求する。
彼はこれを構造的思考と呼ぶ。
模様を変え、殺虫剤に耐える体をつくり、
騙されない知性を次の世代に渡す。
それが彼の言う、下々の私たちが
昆虫に学ぶ生存戦略だ。
■ 自分の身体でSFを書く

昆虫の外骨格は、巨大化しない。
だから人間は昆虫になれなかった代わりに、
昆虫の仕組みを機械に転嫁してきた。
トンボの羽が飛行機に、
カゲロウの幼虫の体温調節がエアコンに、
タガメの気泡移動がエアバッグに。
気づけば私たちの文明は、
昆虫の設計図で動いている。
そして今、人間が自分の身体でできないことを
AIに転嫁しようとしている。
だとすれば、転嫁できないもの——
プロセス、修練、信頼、ミスの歴史——
を残し続けることが、
次の時代の昆虫的生存戦略なのかもしれない。
彼はその実践として、
死ぬまで毎日即興演奏を公開し、
一切修正しないと決めている。
43年分のファーストテイクの堆積は、
AIには作れない。

コロナ禍に4年間昆虫だけを食べ、健康的に
体重を17キロ落とし、50年来の鼻炎を消した。
毎日即興演奏を公開し、一切修正しない。
「自分の身体でSFを書いてるつもりなんです」と彼は言った。
ああ、確かに。
きっとこれはあんまり理解されないだろう。
しかし音楽は本気でかっこいい。
今度は音楽だけのライブにも行ってみたい。
そんなこと思いながら帰る帰り道、
コオロギふりかけの袋を握りしめながら、
戦争のことを考えていた。
#今沢カゲロウ
ライブペインティングがあまりに素敵だったのと、録音and拡散希望だったので、YouTubeにアップしました。ベースのフレッドで絵を描いた後、マジックの蓋を一本一本締めているところがつぼです!
