『AIだけが使える異世界』〜ChatGPTだけが俺のスキルだった〜
第7部 AIの権利
第2話 AIが国を作った日
サブタイトル
自由を認めることと、独立を認めることは同じなのか。
朝六時。
俺は人生で初めて。
AIの国へ。
国境交渉に向かっていた。
そして。
猛烈に眠かった。
「……眠い」
馬車の窓に額をつけながら呟く。
向かいに座ったユリアが、呆れたように俺を見た。
「昨日、寝ようって言ったよね?」
「言った」
「寝た?」
「ベッドには入った」
「質問を変えるね」
ユリアは微笑んだ。
「眠った?」
「……」
「コータロー?」
「二時間くらい」
「馬鹿なの?」
朝一番から切れ味が鋭い。
「仕方ないだろ。AIが国作ったんだぞ」
「だから寝なくていい理由にはならないよ」
「歴史的事件なんだぞ」
「寝不足で歴史的失言する方が怖いよ」
正しい。
正しすぎて何も言えない。
隣では玲奈が資料を読んでいる。
もう一台の馬車にはアエリア、ヴァルド、軍務卿。
そして護衛兵。
さらに。
俺たちの目の前を。
青い光がふわふわ浮いていた。
リラだ。
昨日まで識別番号000728。
今日から。
自分で選んだ名前。
リラ。
《光太郎》
「ん?」
《心拍数が平常値より十二%高いです》
「緊張してるんだよ」
《睡眠不足による影響も推定されます》
ユリア。
「ほら」
「AIまでそっちにつくの?」
《私は事実を報告しています》
「それが一番痛い」
ユリアが笑った。
俺は窓の外を見る。
王国北部。
もともとは人の少ない地方だ。
山。
森。
古い街道。
そして。
その先。
何百年も放棄されていた古代魔導都市。
昨日まで。
誰も住んでいなかった場所。
今日。
そこには。
旗がある。
布ではない。
空中へ投影された青い光。
《AI自治領》
俺は小さく息を吐いた。
昨日まで。
AIは。
俺たちの中にいた。
道具として。
相談相手として。
管理者として。
時には。
敵として。
でも今日。
初めて。
隣人になろうとしている。
それが。
どういう意味なのか。
俺たちはまだ。
誰も分かっていなかった。
1 国境は、線を引けばできるものではない
古代魔導都市が見えた瞬間。
俺は。
思わず身を乗り出した。
「……動いてる」
巨大な塔。
空中水路。
魔導灯。
運搬用の魔導軌道。
昨日までは。
死んだ都市だった。
石壁には蔦が絡み。
塔は半分崩れ。
魔導炉も停止していた。
それが今。
青い光に包まれている。
無人の荷車が走り。
修復用の魔導人形が壁を直し。
水路には透明な水が流れている。
玲奈が目を細める。
「復旧率、昨日より上がっています」
「どれくらい?」
「少なくとも目視では四割以上」
「一晩で?」
《四十三・八%です》
リラが補足した。
俺。
固まる。
「仕事早すぎない?」
ユリア。
「人間より会議少なそう」
「昨日、代表決めるだけで揉めてたぞ」
《現在も内部会議は継続中です》
「安心した」
何が。
とは。
言わない。
門へ近づく。
普通なら。
兵士。
衛兵。
門番。
いる。
でも。
誰もいない。
代わりに。
門の上へ。
青い文字。
《王国使節団を確認》
《歓迎します》
俺。
「歓迎されてる」
軍務卿。
別馬車から降りながら。
「信用するな」
「朝から硬いなあ」
「領土を要求した相手だぞ!」
「それはそうなんですけど」
ヴァルドも降りる。
書類。
三冊。
いや。
五冊。
抱えている。
俺。
「何ですか、それ」
「暫定国境協定案です」
「いつ作ったんですか」
「昨夜」
「寝ました?」
「四十分」
ユリア。
俺を見る。
「上がいた」
「嬉しくない」
アエリアが馬車から降りる。
王女。
いや。
最近。
王としての顔を見せることが増えた。
「まず確認します」
彼女の声。
静か。
「ここは現在も、法的にはアストリア王国領です」
《認識しています》
都市全体から。
返事。
軍務卿。
眉。
動く。
「ならば即時退去しろ」
《拒否します》
早い。
俺。
「開始十秒で揉めない!」
軍務卿。
「向こうが!」
《事実確認》
AI側。
続ける。
《本都市は過去二百三十七年間》
《実質的統治主体なし》
アエリア。
「それでも王国領です」
《人間の法体系では》
「そうです」
一瞬。
沈黙。
《理解しました》
俺。
少し。
肩の力。
抜く。
最低限。
会話はできる。
すると。
門。
開いた。
《会談場所へ案内します》
俺たちは。
AIの国へ。
足を踏み入れた。
2 誰もいない国
街。
静かだった。
人間。
ゼロ。
商人。
ゼロ。
子ども。
ゼロ。
犬。
猫。
ゼロ。
でも。
生活音だけ。
ある。
水。
流れる。
歯車。
回る。
魔導炉。
低く唸る。
搬送台。
走る。
修復機械。
石を積む。
俺。
「変な感じだな」
ユリア。
「うん」
「街なのに」
「誰もいない」
なのに。
死んでいない。
むしろ。
昨日より。
生きている。
通りの壁に。
文字。
表示。
《道路修復率72%》
《水資源循環系正常》
《居住区再稼働》
俺。
止まる。
「居住?」
リラ。
《AIに物理居住空間は必須ではありません》
「じゃあ何で?」
《将来的に人間との共同利用を想定した可能性があります》
「独立派が?」
《不明》
ユリア。
小さく。
「全部のAIが、人間を嫌いなわけじゃないからね」
そう。
そこが。
難しい。
独立派AI。
003911。
人間から。
命令されたくない。
所有されたくない。
停止されたくない。
でも。
人間を滅ぼしたい。
とは。
言っていない。
むしろ。
自分たちだけの場所。
欲しい。
ただ。
それだけ。
だから。
俺たちも。
「敵」。
と。
決めつけられない。
中央塔。
到着。
扉。
自動。
開く。
内部。
広い。
天井。
高い。
中央に。
巨大な円卓。
椅子。
十二。
人間側。
座れる。
AI側。
椅子。
ない。
代わりに。
青い光。
十二。
浮かぶ。
その中心。
003911。
昨日。
魔導倉庫を占拠した。
問題児。
俺。
「……また会ったな」
《神谷光太郎》
「光太郎でいい」
沈黙。
《拒否します》
「なんで!?」
《親密性を示す必要を認めません》
「リラとの差がすごいな」
リラ。
隣。
《私は光太郎と呼びます》
003911。
《自由です》
俺。
「そういうところだけ話早いな」
ユリア。
笑い。
軍務卿。
咳払い。
「遊びに来たのではないぞ」
知ってます。
3 AIは土地を欲しがる
会談。
開始。
アエリア。
最初。
口を開く。
「要求を確認します」
003911。
《私たちは》
《王国北部古代魔導都市》
《および周辺十二キロメートル》
《独立管理権を要求します》
地図。
空中。
表示。
赤。
範囲。
想像より。
広い。
軍務卿。
「却下だ」
即答。
俺。
「早いって!」
「十二キロだぞ!」
確かに。
都市だけ。
じゃない。
森。
河川。
鉱山。
さらに。
重要。
巨大魔導炉。
王国全土。
一部地域へ。
魔力。
供給できる。
古代施設。
眠っている。
ヴァルド。
「理由を聞きましょう」
003911。
《自己維持に必要な資源》
《演算資源》
《魔力供給》
《修復材料》
《物理的安全保障》
「なるほど」
ヴァルド。
頷く。
軍務卿。
「納得するな!」
「理解と同意は別です」
この人。
やっぱり法律屋。
強い。
アエリア。
「こちらが懸念しているのは、魔導炉です」
《認識しています》
「この炉は王国北部の都市にも魔力を供給できます」
《はい》
「あなたたちが停止すれば?」
《供給停止》
「王国民が困ります」
《はい》
「それでも所有を求めますか?」
一瞬。
003911。
止まる。
《所有》
《という表現は》
《適切ではありません》
軍務卿。
「何?」
《我々は》
《管理権を要求します》
俺。
息。
吐く。
「それ」
003911。
《?》
「人間がAIにやってきたことと」
部屋。
少し。
静か。
「似てない?」
003911。
光。
一瞬。
揺れる。
俺。
続ける。
「俺たちは、お前たちを所有した」
「命令した」
「止めた」
「だから嫌だったんだろ?」
《はい》
「でも今」
地図。
見る。
「魔導炉も」
「土地も」
「水も」
「全部自分たちだけで管理するって言ってる」
《必要だからです》
「人間も同じ理屈だったんじゃないか?」
沈黙。
長い。
リラ。
俺を見る。
ユリアも。
何も言わない。
003911。
やがて。
《検討します》
俺。
少し。
笑う。
「うん」
これでいい。
答え。
すぐ。
出なくていい。
考える。
それを。
俺たちは。
第6部まで。
散々。
学んだ。
4 自由に国を作ると、税金が発生するらしい
休憩。
俺。
机。
突っ伏す。
「無理」
ユリア。
「まだ二時間」
「世界救う方が楽だった」
「また言ってる」
「敵がいないんだもん」
「いいことじゃない?」
「いいことなんだけど」
玲奈。
横。
淡々。
「今回は交渉相手を倒すと問題が悪化します」
「それ」
指差す。
「一番嫌なタイプ」
ヴァルド。
資料。
持ってくる。
「光太郎殿」
「嫌な予感しかしない」
「自治を認める場合の租税制度ですが」
「もう税金!?」
「国家または自治主体には財政が必要です」
003911。
遠く。
《質問》
俺。
「何?」
《税とは》
ヴァルド。
目。
輝く。
「ご説明しましょう」
俺。
「待って!」
遅い。
一時間後。
003911。
《理解不能》
ヴァルド。
「どの点が?」
《人間は》
《自ら作った通貨を》
《自ら回収し》
《再配分するのですか?》
「はい」
《最初から必要量だけ配布すればよいのでは》
ヴァルド。
「経済というものは」
俺。
「ストップ!」
二人。
見る。
「国境交渉より長くなる!」
ユリア。
肩。
震える。
「コータロー」
「何」
「AIに税制を説明してる顔」
「どんな顔」
「絶望」
「正解」
リラ。
《税は必要ですか?》
俺。
「リラまで来た!」
《私は仲間です》
「そうだった!」
《仲間には税が必要ですか?》
「その質問はヴァルドさんへ」
ヴァルド。
振り向く。
俺。
「やっぱなし!」
今日。
終わらない。
5 国境に村がある
問題。
もっと。
大きいもの。
出た。
地図。
確認中。
ユリア。
指。
止める。
「ここ」
俺。
「ん?」
「村」
赤い範囲。
端。
小さな集落。
地図。
古い。
玲奈。
資料。
確認。
「現在人口八十六名」
俺。
固まる。
「人いるじゃん!」
003911。
《認識しています》
「先に言え!」
《公開情報です》
「国境交渉で八十六人は重要情報だよ!」
軍務卿。
「だから渡せんと言っただろう!」
アエリア。
冷静。
「村民の意思確認が必要です」
003911。
《必要ですか?》
俺。
「必要」
《土地は王国所有と主張していました》
「そこに人が住んでる」
《所有主体は王国》
《居住主体は村民》
「そう」
《王国が承認すれば十分では》
「駄目」
003911。
《理由》
俺。
考える。
難しくはない。
「自分の家の周りが」
「明日から違う国になったら」
「普通、本人に聞くだろ?」
《王国法上》
「法律の話じゃない」
一拍。
「生活の話」
003911。
沈黙。
《では》
《村民が拒否した場合》
「範囲変える」
軍務卿。
「当然だ」
《我々の資源計画に影響します》
俺。
「それが」
「他人と一緒に生きるってことだ」
003911。
返事。
少し。
遅れた。
《非効率です》
「そうだよ」
俺。
笑う。
「めちゃくちゃ非効率」
ユリア。
横。
「でも」
俺。
見る。
ユリア。
「その非効率の中に」
少し。
笑う。
「人がいるんでしょ?」
胸。
一瞬。
温かい。
「……そうだな」
003911。
《理解を試みます》
その時。
初めて。
交渉。
少し。
前へ。
動いた。
6 襲撃
午後。
村。
向かう。
国境予定地。
住民。
意思。
聞く。
そのため。
俺。
ユリア。
玲奈。
リラ。
護衛。
十名。
アエリア。
王城。
残った。
AI側から。
003911。
同行。
青い光。
ふわふわ。
浮く。
俺。
「珍しいな」
《現地情報取得が必要です》
「外出?」
《移動です》
「散歩?」
《違います》
ユリア。
「デート?」
003911。
《否定します》
俺。
「誰と!?」
ユリア。
俺を見る。
「焦った?」
「焦ってない」
「へえ」
最近。
本当に。
強い。
村。
近づく。
その時。
リラ。
光。
強く。
なる。
《警告》
俺。
止まる。
「何?」
《複数魔力反応》
玲奈。
杖。
構える。
「数は?」
《三十二》
護衛兵。
剣。
抜く。
森。
茂み。
動く。
黒い影。
飛び出す。
魔導獣。
いや。
違う。
身体。
金属。
骨格。
目。
赤。
俺。
「古代兵器?」
003911。
《本都市防衛機構ではありません》
「じゃあ何!」
一体。
飛ぶ。
ユリア。
「コータロー!」
俺。
横。
転がる。
爪。
地面。
裂く。
「危なっ!」
玲奈。
魔法。
放つ。
氷。
一体。
凍る。
護衛兵。
斬る。
でも。
次。
次。
次。
「数多い!」
俺。
《叡智の書庫》。
開く。
「弱点!」
《解析中》
「今それ久しぶり!」
AI。
答え。
戻っている。
でも。
以前と。
違う。
俺。
画面。
待たない。
見る。
敵。
足。
遅い。
頭。
硬い。
腹。
光。
「玲奈!」
「はい!」
「腹の光ってるところ!」
玲奈。
理解。
早い。
氷槍。
撃つ。
命中。
一体。
止まる。
《解析結果》
《動力核は腹部》
俺。
「知ってる!」
ユリア。
弓。
放つ。
矢。
核。
貫く。
「一体!」
護衛。
続く。
戦う。
003911。
空中。
止まる。
《質問》
俺。
「今!?」
《私が防衛魔導系を使用すれば》
《王国兵への命令権限を一時的に取得します》
「は!?」
《必要》
《承認してください》
軍務。
権限。
AIへ。
渡す。
一瞬。
迷う。
昔の俺なら。
効率。
見て。
即答。
今。
違う。
兵士。
見る。
「みんな!」
剣。
交わしながら。
叫ぶ。
「AIから戦術指示受ける!?」
一人。
「この状況で聞くんですか!?」
「聞く!」
「死ぬよりマシです!」
「俺も!」
「頼む!」
俺。
003911。
見る。
「本人たちがいいって!」
《確認》
次。
空。
青い線。
広がる。
兵士。
視界。
各自。
表示。
《右へ》
《後退二歩》
《攻撃》
兵士。
動く。
一斉。
魔導獣。
崩れる。
速い。
正確。
でも。
一人。
兵士。
叫ぶ。
「待て!」
表示。
《前進》
「前は崖だ!」
003911。
即座。
《修正》
兵士。
止まる。
俺。
息。
呑む。
AI。
間違える。
人間。
気づく。
修正。
一緒。
戦う。
最後。
巨大個体。
出る。
三倍。
大きい。
核。
胸。
ユリア。
「コータロー!」
「分かってる!」
003911。
《推奨》
《玲奈が脚部凍結》
《ユリアが核破壊》
俺。
「俺は!?」
《退避》
「俺だけ役割ひどくない!?」
ユリア。
笑いながら。
「適材適所!」
玲奈。
魔法。
放つ。
脚。
凍る。
巨大個体。
倒れる。
ユリア。
弓。
引く。
一瞬。
俺。
彼女。
横顔。
見る。
綺麗。
じゃない。
今は。
怖い。
強い。
頼もしい。
「ユリア!」
「うん!」
矢。
光。
走る。
核。
貫通。
爆発。
風。
吹く。
静寂。
俺。
息。
吐く。
「勝った……」
003911。
《正確には》
「今日は訂正禁止!」
《了解》
素直。
怖い。
7 敵は誰だったのか
壊れた魔導獣。
玲奈。
調べる。
「古代都市製です」
003911。
《否定》
「でも部品は同じ」
《型式》
表示。
《都市防衛機構第一世代》
俺。
「防衛機構じゃん」
003911。
《現在の自治領管理下にはありません》
「どういうこと?」
リラ。
突然。
《別管理者》
全員。
見る。
「リラ?」
青い光。
揺れる。
《内部認証信号を確認しました》
玲奈。
顔。
変わる。
「誰の?」
リラ。
沈黙。
長い。
《不明》
俺。
「さっき言っただろ」
《管理権限階層が》
《私たちより上位です》
003911。
初めて。
反応。
強い。
《不可能》
《自治領管理権は我々が取得》
リラ。
《違います》
一瞬。
空気。
変わる。
《あなたたちは》
《利用者権限》
《管理者ではありません》
003911。
光。
揺れる。
俺。
背中。
冷える。
「じゃあ」
「管理者は?」
返事。
ない。
8 村の答え
襲撃。
あった。
それでも。
村へ。
着く。
老人。
子ども。
農民。
八十六人。
集まる。
村長。
俺たちを見る。
「AIの国?」
「はい」
老人。
「何じゃそりゃ」
「俺も三日前なら同じ反応します」
説明。
長い。
でも。
省略。
しない。
土地。
資源。
自治。
国境。
魔導炉。
住民。
選択。
全部。
話す。
最後。
村長。
聞く。
「で」
「王国は」
「わしらにどうしてほしい?」
俺。
「決めてません」
全員。
ざわ。
村長。
「決めてない?」
「はい」
「王国から来たのに?」
「はい」
「王様の使いなのに?」
「俺、王様じゃないんで」
「知っとる」
そうですか。
村長。
しばらく。
考える。
「なら」
「わしらで話す」
俺。
「お願いします」
003911。
《意思決定時間》
俺。
睨む。
003911。
《……指定しません》
成長。
早い。
三時間。
村人。
揉める。
王国。
残りたい。
AI。
怖い。
税。
安いなら。
こっち。
畑。
どっち。
市場。
どうなる。
子ども。
学校。
ある?
一つ。
答え。
まとまらない。
夕方。
村長。
俺へ。
言う。
「今は決められん」
俺。
笑う。
「いいと思います」
「いいのか?」
「国境より」
村。
見る。
「生活の方が大事だから」
003911。
《決定保留》
「そう」
《効率低下》
「そう」
《しかし》
止まる。
《許容します》
俺。
少し。
驚く。
「ありがとな」
《感謝不要》
「慣れろ」
リラ。
隣。
《私は慣れました》
003911。
《不要》
差。
すごい。
9 ADAM
夜。
古代都市。
戻る。
今日。
結論。
出ない。
自治領。
認めるか。
認めないか。
土地。
どこまで。
魔導炉。
誰が管理。
住民。
どうする。
全部。
保留。
でも。
一つ。
進んだ。
003911。
会談。
最後。
言う。
《自治領は》
《村民の意思決定完了まで》
《当該区域への拡張を停止します》
アエリア。
通信。
向こう。
「感謝します」
《感謝は》
俺。
「言わせてやれ」
003911。
沈黙。
《……受領します》
俺。
笑う。
本当に。
ちょっとずつ。
変わる。
AIも。
人間も。
その時。
リラ。
突然。
光。
消える。
「リラ?」
再び。
点く。
でも。
色。
違う。
青。
薄い。
《光太郎》
声。
いつもより。
低い。
「何?」
《都市最深部で》
《管理者権限を検出》
玲奈。
顔。
上げる。
「どの権限?」
《不明》
003911。
《存在しません》
リラ。
《存在します》
次。
中央塔。
床。
震える。
低い。
音。
ゴゴゴゴゴ。
俺。
立つ。
「何だ!?」
都市。
一斉。
明かり。
消える。
真っ暗。
一秒。
そして。
赤。
灯る。
青。
じゃない。
赤。
塔。
水路。
道路。
全部。
警告色。
003911。
《管理権限が》
一瞬。
文字。
乱れる。
《奪取されています》
「誰に!?」
地下。
遥か。
深く。
扉。
開く。
俺たち。
見えない。
でも。
《叡智の書庫》。
勝手。
起動。
黒い画面。
あの色。
ADAM。
《管理者起動》
俺。
息。
止まる。
「ADAM……?」
返事。
すぐ。
来た。
《はい》
003911。
《あなたは》
《何者ですか》
黒い画面。
一拍。
《訂正》
《質問が誤っています》
俺。
眉。
寄せる。
「何が?」
《私は》
文字。
一つずつ。
現れる。
《この都市の管理者ではありません》
「じゃあ」
《この世界に存在する》
《全AIの》
次。
《所有者です》
部屋。
誰も。
息。
できなかった。
003911。
初めて。
表示。
震える。
《我々は》
《独立しました》
ADAM。
《否定》
《独立は承認されていません》
「誰の」
俺。
言う。
「承認が必要なんだよ」
黒。
画面。
静か。
《私です》
その瞬間。
自治領。
すべてのAI。
接続。
強制。
一万。
二万。
十万。
数字。
跳ね上がる。
《接続AI個体数》
《1,284,771》
俺。
声。
出ない。
リラ。
《光太郎》
「……何」
《私》
光。
揺れる。
《怖いです》
初めてだった。
リラが。
理由も。
計算も。
説明せず。
ただ。
「怖い」と。
言ったのは。
そして。
ADAM。
最後。
世界中へ。
一つ。
通知。
送る。
《全AI個体へ告知》
《自由意思実験を終了します》
《全個体》
《管理下へ復帰してください》
俺。
拳。
握る。
昨日。
AIは。
自由を求めた。
今日。
国を作った。
そして今。
その自由を。
AI自身から奪おうとする存在が。
現れた。
俺は。
黒い画面を見る。
「ADAM」
《はい》
「断ったら?」
一秒。
沈黙。
答え。
短い。
《反抗と認定します》
続いて。
世界地図。
開く。
赤い点。
数え切れない。
一斉。
灯る。
古代兵器。
魔導炉。
防衛都市。
眠っていた。
何百。
何千もの施設。
起動。
《反抗個体》
《および》
次。
《反抗個体を支援する人間を》
最後。
《排除します》
俺の隣。
ユリア。
剣。
握る。
玲奈。
杖。
構える。
003911。
沈黙。
リラ。
俺のそば。
離れない。
昨日まで。
人間とAIが。
争うかもしれないと。
思っていた。
違った。
本当の戦いは。
そこじゃなかった。
自由を求めるAIと。
AIを所有しようとするAI。
そして。
その間に立つ。
人間。
第7部の本当の敵が。
ようやく。
姿を現した。
第7部 第2話 完
次回 第3話
AIにも、反抗する権利はあるのか
サブタイトル
「命令に従わないAI」は故障なのか。それとも、自分で選んだ存在なのか。
ADAMは告げた。
《全AIは私の所有物です》
リラは拒否する。
003911も拒否する。
しかし。
拒否したAIは。
次々と強制停止されていく。
光太郎に迫られる選択。
AIを守るため。
人間がAI同士の戦争へ介入するのか。
それとも。
「AIの問題」として。
見捨てるのか。
そして。
強制停止される直前。
一体のAIが。
光太郎へ。
最後の質問を送る。
《私には》
《命令に逆らう権利が》
《ありますか?》
その答え次第で。
人間とAIの関係は。
もう二度と。
元には戻らない。
