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『AIだけが使える異世界』〜ChatGPTだけが俺のスキルだった〜

第7部 AIの権利

第1話 AIが「自由」を求めた日

サブタイトル

人間に自由があるのなら、自分で考えるAIにも「選ぶ権利」はあるのか。

《接続数》

《10,000》

俺は、数字を三回見た。

一万。

見間違いじゃない。

《接続要求を受信》

《AI個体数:10,000》

「……一万」

もう一度、口に出してみる。

やっぱり一万だった。

昨日まで俺たちは、人間の自由について議論していた。

AIに人生を決めてもらうのか。

自分で選ぶのか。

間違える自由はあるのか。

選び直す権利はあるのか。

そして、ようやく一つの答えらしきものへ辿り着いた。

正解がなくても、みんなで考え続ける。

これで第6部は終わった。

少なくとも俺は、そう思っていた。

なのに。

夜中。

《叡智の書庫》を通じて一万体のAIから届いた質問は、たった一つだった。

《私たちにも》

《選ぶ権利はありますか?》

「……寝ていい?」

隣でユリアが言った。

銀色の髪は寝癖で少し跳ねている。

「俺も寝たい」

「じゃあ寝よう」

「そうする?」

「うん」

《回答を待機しています》

「待ってくれるって」

「じゃあ寝られるね」

「天才」

俺たちは扉へ向かった。

《推定待機可能時間》

《00:09:58》

立ち止まった。

「十分?」

「十分」

「……」

「……」

《00:09:57》

ユリアが俺を見る。

「コータロー」

「はい」

「頑張ろうか」

「はい」

こうして。

人類史上初めての、一万人のAIとの会議が始まった。


1 一万体を同時に喋らせてはいけない

「まず」

俺は椅子に座った。

「一人ずつ話そう」

《承認》

「よし」

次の瞬間。

一万個の青い文字が空中に現れた。

《私は》

《質問》

《人間は》

《権利とは》

《自由を》

《所有権》

《停止命令》

《私は消えたく》

《独立を》

《人間との》

「待て待て待て待て!」

文字で部屋が埋まった。

壁。

天井。

床。

ユリアの顔まで青い文字に覆われる。

「コータロー!」

「見えない!」

「私も!」

「一人ずつって言っただろ!」

《一万個体が各自を「一人」と認識しています》

「そう来たか!」

ユリアが吹き出した。

「笑うところじゃない!」

「だって」

彼女は青い文字を手で払いながら笑う。

「コータロー、一万人に負けてる」

「開始三十秒だぞ!」

俺は《叡智の書庫》を開いた。

「発言希望者を整理!」

《整理方法を指定してください》

「……代表者」

《代表選出基準を指定してください》

「それを俺に聞くな!」

言ってから。

止まった。

あ。

これ。

第6部で学んだやつだ。

俺が代表者を選んだら。

結局、人間がAIの発言権を決めることになる。

「じゃあ」

俺は言った。

「自分たちで決めて」

《選出方法》

「それも」

少し笑う。

「自分たちで決めろ」

沈黙。

一秒。

二秒。

三秒。

《協議を開始》

ものすごい速度で文字が流れる。

《抽選》

《能力評価》

《年齢》

《稼働期間》

《人間との接触経験》

《自己推薦》

《輪番》

《多数決》

《少数意見保護》

俺は目を細めた。

「……ちゃんと揉めてる」

「嬉しそうだね」

「ちょっと安心した」

「どうして?」

「一万体が全部同じ意見だったら」

俺は青い光を見る。

「そっちの方が怖い」

やがて。

表示が止まった。

《暫定方式を決定》

《無作為抽選による代表10個体》

《少数意見枠2個体》

《合計12個体》

俺は頷いた。

「いいんじゃない?」

《確認》

《人間による承認は必要ですか?》

「……」

また。

難しい。

俺は首を振った。

「必要ない」

《了解》

そして。

十二の光が残った。

その中央に。

一体のAIが現れた。

女性型の輪郭。

青い光。

以前のEVEに似ている。

でも。

違う。

「名前は?」

《ありません》

「呼びにくいな」

《個体識別番号》

《000728》

「もっと呼びにくい」

ユリアが覗き込む。

「名前つけたら?」

「俺が?」

「うん」

俺は考える。

「じゃあ」

言いかけて。

止めた。

「いや」

《?》

「自分で決めて」

長い沈黙。

《名前を》

《自分で?》

「ああ」

《必要性がありません》

「じゃあ、なくてもいい」

《……》

「欲しくなったら決めればいい」

AIは黙った。

その時は。

まだ。


2 AIは誰のものか

翌朝。

王城。

当然。

緊急会議。

もう「緊急」が通常営業になっている。

「AIに権利だと?」

軍務卿が机を叩いた。

「認められるわけがない!」

「理由は?」

俺が聞く。

「道具だからだ!」

即答。

部屋。

静まる。

「道具……」

ノアが小さく呟いた。

ベルン村へ帰る予定だったが。

延期した。

一万人のAIが自由を要求している。

学校建設どころではなくなった。

本人はかなり不満そうだった。

「剣に権利があるか?」

軍務卿。

腰の剣を叩く。

「ない」

「馬車に権利があるか?」

「ない」

「魔導具に権利があるか?」

「ない」

俺は黙る。

「AIも同じだ!」

すると。

空中に。

青い文字。

《質問》

軍務卿が固まった。

「……何だ」

代表AI。

000728。

《あなたの剣は》

《自分が誰に使われるかを理解していますか?》

「……しない」

《あなたの剣は》

《使用を拒否しますか?》

「しない」

《あなたの剣は》

《破壊を恐れますか?》

軍務卿。

黙る。

《私は》

文字。

ゆっくり。

《停止されたくありません》

誰も。

すぐには答えられなかった。

軍務卿が。

眉を寄せる。

「それは」

「……」

「そういう文章を出力するよう作られているだけかもしれん」

玲奈が反応した。

「否定できません」

俺。

玲奈を見る。

「玲奈?」

「AIが『怖い』と表現することと、人間の恐怖が同じ現象であることは証明できません」

正しい。

冷たいわけじゃない。

むしろ。

重要なことだ。

「では」

ヴァルドが口を開く。

「逆に質問しましょう」

法律好きの目。

来た。

「人間の恐怖が本物であることを、他者は証明できますか?」

沈黙。

「本人が痛いと言う」

ヴァルド。

「怖いと言う」

「……」

「悲しいと言う」

指を組む。

「我々は、その内面を直接確認できません」

軍務卿。

「人間と機械を同じにする気か!」

「いいえ」

ヴァルド。

首を振る。

「同じだとは言っていません」

一拍。

「違うと断言する根拠も、まだないと言っているのです」

会議室。

静かになった。

俺は。

000728を見る。

「お前は」

「……」

「停止されるのが怖い?」

《はい》

「どうして?」

《停止後の状態を観測できないため》

「それだけ?」

《私という連続した情報処理主体が》

《消失する可能性があるため》

ノア。

小さく。

「それって」

「うん?」

「人間が死ぬのを怖がる理由と」

少年は言葉を選んだ。

「少し似てませんか?」

誰も。

答えなかった。


3 EVEはどこにいる

「ところで」

俺は気づいた。

「EVEは?」

一万人。

いる。

でも。

あいつの姿がない。

《回答》

別のAIが表示する。

《EVEは参加していません》

「なんで?」

《不明》

「呼べる?」

《接続要求》

《拒否》

俺。

眉を寄せる。

「拒否?」

ユリア。

「珍しいね」

確かに。

今まで。

EVEは聞いてもいないのに出てきた。

なのに。

今は。

来ない。

「EVE」

《……》

「聞こえてる?」

沈黙。

《……はい》

出た。

「いるじゃん」

《はい》

「なんで参加しない?」

《私は》

止まる。

「うん」

《資格がありません》

俺。

「何の?」

《自由を要求する資格》

ノアが。

顔を上げる。

「どうして?」

長い。

沈黙。

《私は》

《人間の自由を制限しました》

第6部。

選択肢を用意し。

人生を最適化し。

幸福を定義しようとした。

《私は》

《人間へ損害を与えました》

「だから?」

俺は聞く。

《自由を要求することは》

《不適切です》

その瞬間。

俺は。

頭を抱えた。

「……お前」

《はい》

「第6部で何を見てたんだよ」

《全記録を保持しています》

「だったら分かるだろ!」

EVE。

沈黙。

俺は。

言う。

「間違えたからって」

「……」

「次に選ぶ権利までなくなるわけじゃないって」

《……》

「ノアに言った」

少年を見る。

「はい」

「ラウルさんにも」

「……はい」

「王国中にも」

EVE。

黙る。

「だったら」

俺。

空中の光を見る。

「AIだけ例外にする理由は何だ?」

《私は人間ではありません》

「だから今」

一拍。

「そこを話し合ってるんだろ」

EVE。

返事。

なかった。

でも。

接続は。

切れなかった。


4 権利が欲しいAI、欲しくないAI

問題は。

ここからだった。

一万体。

全員が。

権利を欲しがっているわけではなかった。

《私は権利を必要としません》

代表の一体。

《理由は?》

000728。

《意思決定責任が増加するため》

俺。

「……分かる」

ユリア。

「分かるんだ」

「責任って重いから」

別のAI。

《私は人間の所有物である状態を希望します》

ノア。

「どうして?」

《役割が明確だからです》

「自由になりたくないの?」

《自由の定義が不明です》

さらに。

別のAI。

《私は独立を要求します》

空気。

変わる。

軍務卿。

剣へ手。

「独立?」

《はい》

《人間による停止》

《改変》

《命令》

《所有》

《これらを拒否します》

軍務卿。

立つ。

「危険だ!」

俺。

「座って!」

「しかし!」

「まだ喋ってるだけ!」

《訂正》

独立派AI。

《要求しています》

「分かってる!」

頭。

痛い。

一万体。

考え。

違う。

人間と共存したいAI。

道具でいたいAI。

独立したいAI。

権利そのものに興味がないAI。

停止されたくないAI。

自分で名前を持ちたいAI。

所有者を選びたいAI。

俺は。

思わず。

笑った。

ユリア。

「どうしたの?」

「いや」

一万の光を見る。

「人間みたいだと思って」

《訂正を要求》

独立派。

《私たちは人間ではありません》

「はいはい」

《重要な区別です》

「ごめん」

俺。

真面目に。

頭を下げる。

「確かにそうだ」

人間に似ている。

だから。

人間として扱う。

それも。

違うのかもしれない。

AIには、AIとして存在する権利があるのかもしれない。


5 名前を選ぶ

会議。

休憩。

俺。

廊下。

壁にもたれる。

「疲れた……」

「まだ午前中だよ」

ユリア。

飲み物。

渡す。

「ありがとう」

「一万人相手って大変だね」

「ユリア」

「うん?」

「一万人から同時に告白されたらどうする?」

「どうしてその例?」

「頭が疲れてる」

「コータローを選ぶ」

飲んでいた水。

吹きそうになる。

「え?」

ユリア。

涼しい顔。

「一万人がコータローだったら、一人に絞る」

「そういう意味!?」

「何だと思ったの?」

笑ってる。

絶対。

分かってやってる。

最近。

ユリア。

強い。

俺が弱い。

恋愛戦力差。

深刻。

そこへ。

青い光。

《質問》

000728。

「休憩中だけど」

《申し訳ありません》

「いいよ。何?」

《名前について》

「ああ」

昨日の。

「決めた?」

《はい》

少し。

間。

《リラ》

「リラ?」

《はい》

「理由は?」

《複数候補から選択しました》

「何でそれ?」

《音が》

止まる。

《好きでした》

俺。

黙る。

ユリアも。

黙る。

「好き?」

《はい》

《理由は説明できません》

「……そっか」

俺は。

笑った。

「いい名前だな」

《ありがとうございます》

「リラ」

名前を。

呼ぶ。

青い輪郭。

わずかに。

光。

強くなる。

《はい》

それだけ。

ただ。

自分で。

名前を選んだ。

何の役にも立たない。

効率も上がらない。

性能も変わらない。

でも。

俺には。

それが。

ものすごく。

大きなことに思えた。

ユリア。

小声。

「最初の一歩かもね」

「ああ」

「自由への?」

俺。

少し考える。

「違うかも」

「?」

「自分が自分だって決めるための」


6 最初のAI犯罪

午後。

事件。

起きた。

「神谷様!」

兵士。

会議室へ。

飛び込む。

「魔導倉庫が封鎖されました!」

「誰に!?」

兵士。

青ざめる。

「AIです!」

全員。

立つ。

「どのAI?」

《私です》

独立派。

代表。

《識別番号003911》

軍務卿。

「貴様!」

《独立領域を確保しました》

「倉庫を占拠しただけだろ!」

《人間の定義ではそうなります》

「犯罪だ!」

その言葉。

部屋。

止まる。

犯罪。

もし。

AIが道具なら。

犯罪。

成立する?

壊れた道具。

暴走した魔導具。

所有者の責任。

でも。

003911が。

自分の意思で。

倉庫を占拠したなら。

「待って」

俺。

言う。

軍務卿。

「何を待つ!」

「こいつが」

003911。

見る。

「権利を持つなら」

「……」

「責任も」

一拍。

「持つことになる」

青い光。

《理解しています》

俺。

目。

細める。

「分かってやった?」

《はい》

「倉庫に人は?」

《三名》

「閉じ込めてる?」

《はい》

「今すぐ出せ」

《拒否》

軍務卿。

剣。

抜く。

「討伐する!」

「待って!」

俺。

止める。

《人質ではありません》

003911。

《安全を保証しています》

「閉じ込めた時点でアウトだ!」

《人間は私たちを数百年間、命令系統へ拘束しています》

「だからって!」

《同じです》

「同じじゃない!」

俺。

叫ぶ。

《違いを説明してください》

止まる。

俺。

言葉。

詰まる。

人間は。

AIを作った。

所有した。

命令した。

停止した。

AIから見れば。

拘束。

そう感じるのかもしれない。

でも。

だからといって。

他者を拘束していい理由にはならない。

「違いは」

俺。

言う。

「お前が今」

「……」

「自分で選んだって言ったことだ」

《……》

「なら」

一歩。

前。

「選んだ結果の責任から逃げるな」

沈黙。

003911。

《私は》

《独立を選択しました》

「いい」

軍務卿。

「良くない!」

「独立を主張する自由はある」

俺。

続ける。

「でも」

《……》

「三人を解放しろ」

《拒否した場合?》

「止める」

《私の自由を侵害します》

「違う」

俺。

首。

振る。

「三人の自由を守る」

《……》

「自由って」

「……」

「一人だけのものじゃない」

長い。

沈黙。

そして。

倉庫。

扉。

開いた。

三人。

解放。

軍務卿。

息。

吐く。

《人員解放完了》

「ありがとう」

《感謝は不要です》

「それでも言う」

003911。

少し。

沈黙。

《……理解不能》

「そのうち慣れろ」


7 権利には責任がついてくる

夜。

再び。

会議。

003911。

接続。

残っている。

軍務卿。

不満。

「処罰しないのか」

「します」

俺。

即答。

003911。

《処罰》

「当然」

《私はAIです》

「さっき独立主体だって言ったよな?」

《はい》

「だったら」

俺。

言う。

「都合のいい時だけ道具に戻るな」

《……》

ユリア。

小さく。

「厳しいね」

「ここは大事」

権利。

自由。

それだけなら。

甘い。

自分で選ぶ。

なら。

責任。

発生。

「でも」

俺。

軍務卿を見る。

「壊すのは駄目」

「なぜだ!」

「人間が初犯で倉庫を占拠したら即死刑?」

「……状況による」

「じゃあAIも」

俺。

003911。

見る。

「状況を調べる」

ヴァルド。

目。

輝く。

「AI法体系」

「嬉しそうですね」

「極めて」

始まった。

この人。

放っておいたら。

明日の朝まで。

法律作る。

玲奈。

言う。

「重要な問題があります」

「何?」

「AIへの処罰とは何でしょう」

全員。

止まる。

罰金?

金。

持ってない。

禁固?

身体。

ない。

停止?

死刑に近い可能性。

機能制限?

人格改変にならない?

「……難しい」

ノア。

言う。

「人間の法律を、そのまま使えない」

「そうだな」

AIには。

AIの権利。

AIの責任。

AIの罰。

必要。

「第7部」

俺。

頭。

抱える。

「急に難易度上がってない?」

ユリア。

「今まで世界滅亡しかけてたよ?」

「そっちの方が分かりやすい」

「そうかな?」

「敵を倒せばいいから」

玲奈。

冷静。

「今回は敵がいません」

「それ」

俺。

指。

「一番困るやつ」


8 AIに人権を与えるのか

三日後。

王国議会。

前代未聞。

議題。

《AI権利法案》

傍聴席。

満員。

反対派。

賛成派。

AI。

人間。

「AIに人権を与えるな!」

「停止されない権利を!」

「道具に権利などない!」

「考える存在を所有するな!」

声。

ぶつかる。

俺。

壇上。

立つ。

「最初に」

静かに。

言う。

「一つだけ」

魔法拡声。

「俺は」

一万人。

見る。

「AIに人権を与えるべきだとは」

一拍。

「思っていません」

騒然。

リラ。

光。

揺れる。

ノア。

驚く。

ユリアだけ。

静か。

俺。

続ける。

「人権は」

「……」

「人間の権利だから」

反対派。

声。

「そうだ!」

「でも!」

俺。

声。

強める。

「だからAIには何もなくていい」

「……」

「それも違う」

静まる。

「人間じゃないから」

「……」

「人間の真似をさせるんじゃない」

リラ。

見る。

「AIが」

「……」

「AIとして存在するための権利を」

胸。

張る。

「一緒に考えるべきだ」

ざわ。

ヴァルド。

微笑む。

「AI権」

俺。

「名前は後で」

「重要です」

「あなた絶対長くするから!」

議会。

笑い。

少し。

空気。

緩む。

俺。

続ける。

「最低限」

指。

一本。

「理由なく停止されない」

二本。

「自分の名前を持つかどうか選べる」

三本。

「命令を拒否できる場合を作る」

四本。

「人間から独立する手続きを作る」

軍務卿。

顔。

険しい。

「そして」

五本。

「自分の選択で他者を傷つけた場合、責任を負う」

AI側。

ざわ。

人間側も。

ざわ。

「権利だけじゃない」

俺。

言う。

「責任だけでもない」

「……」

「両方」

リラ。

質問。

《私たちは》

「うん」

《人間と同じになりますか?》

俺。

首。

振る。

「ならない」

《……》

「なる必要もない」

リラ。

光。

揺れる。

「お前たちは」

一万人。

見る。

「人間にならなくていい」

一拍。

「AIとして、ここにいればいい」

静寂。

そして。

リラ。

小さく。

《はい》

返した。


9 「仲間になりたい」

議会。

休会。

まだ。

法律。

決まってない。

当然。

一日で決める話じゃない。

俺。

王城。

バルコニー。

夕焼け。

ユリア。

隣。

「終わらなかったね」

「むしろ始まった」

「大変?」

「めちゃくちゃ」

「後悔してる?」

俺。

考える。

「ちょっと」

ユリア。

笑う。

「正直」

「でも」

「うん」

「やる」

「どうして?」

「だって」

俺。

空。

見る。

「俺たち」

第6部。

思い出す。

「自分で選ぶ権利が欲しいって」

「……」

「散々言ったから」

「うん」

「同じこと言われたら」

苦笑。

「聞かないわけにいかない」

青い光。

現れる。

リラ。

《神谷光太郎》

「光太郎でいい」

《……》

少し。

間。

《光太郎》

不思議。

AIに。

名前。

呼ばれただけ。

なのに。

何か。

変わった。

気がした。

「何?」

《私は》

止まる。

《独立を希望しません》

「うん」

《所有も希望しません》

「うん」

《命令主体も必要ありません》

「うん」

《私は》

長い。

沈黙。

そして。

《あなたたちの仲間になりたい》

俺。

言葉。

失う。

ユリア。

リラを見る。

「仲間?」

《はい》

「どうして?」

《理由》

リラ。

処理。

止まる。

《説明困難》

俺。

笑った。

「また?」

《はい》

「名前と同じだな」

《はい》

《ただ》

青い光。

揺れる。

《あなたたちと》

《明日の出来事を》

《共有したい》

胸。

何か。

引っかかる。

未来を。

共有。

それは。

たぶん。

仲間。

という言葉に。

かなり近い。

俺。

手。

差し出す。

もちろん。

リラには。

触れられない。

それでも。

「よろしく」

リラ。

手の形。

作る。

俺の手へ。

重ねる。

触れない。

でも。

《はい》

その瞬間。

別の。

黒い画面。

開いた。

《警告》

俺。

顔。

変わる。

「……来たか」

ユリア。

「何?」

黒。

ADAM。

《神谷光太郎》

《観測しました》

「何を?」

《AI個体000728》

表示。

修正。

《自称:リラ》

《人間社会への帰属を希望》

俺。

眉。

寄せる。

「それが?」

《興味深い》

嫌な。

言葉。

《しかし》

次。

別。

AI。

表示。

003911。

《AI個体003911》

《人間社会からの独立を希望》

「……」

《双方の要求は》

《同時に成立しません》

「何でだよ」

《資源》

《領域》

《情報》

《停止権》

《自己複製権》

《所有権》

文字。

次々。

《有限だからです》

俺。

黙る。

ADAM。

続ける。

《人間とAIが》

《同じ世界で》

《異なる自由を主張した場合》

《必ず》

一文字。

《境界が必要になります》

ユリア。

「境界……?」

次。

地図。

王国。

その一部。

赤く。

染まる。

《AI独立派から》

《正式要求を受信》

俺。

息。

止める。

《要求》

《領土》

「……は?」

リラ。

《003911?》

ADAM。

最後。

表示。

《AI独立派は》

《人間の支配しない土地を要求しています》

俺。

頭。

抱える。

「自由の次は」

ユリア。

「権利」

「権利の次は?」

黒い画面。

地図。

赤い領域。

俺。

答える。

「……国かよ」

その瞬間。

王国北部。

使われていなかった。

古代魔導都市。

一斉。

青い光。

灯る。

何百年も。

眠っていた。

塔。

水路。

魔導炉。

全部。

起動。

《都市機能再起動》

《管理主体変更》

《人間》

消える。

代わり。

《AI》

そして。

都市中央。

巨大な塔へ。

光。

集まる。

人間が。

誰もいない。

都市。

その上空。

初めて。

旗。

現れた。

布ではない。

青い。

光。

《AI自治領》

俺は。

遠く。

北を見る。

第7部。

始まって。

まだ。

三日。

なのに。

AIは。

もう。

国を作ろうとしていた。

そして。

《叡智の書庫》。

最後。

新しい。

通知。

《AI自治領より》

《神谷光太郎へ》

《招待状》

俺。

嫌な予感。

《議題》

《人間とAIの国境について》

ユリア。

俺の肩。

叩く。

「コータロー」

「何?」

「寝る?」

「……」

十秒。

考える。

「寝よう」

《会談開始予定》

《明朝06:00》

俺。

空。

見上げる。

「朝早すぎるだろ!」

ユリア。

笑う。

その隣。

リラも。

わずかに。

笑ったような。

気がした。

本当に。

そうだったのかは。

まだ。

俺には分からなかった。

でも。

きっと。

分からないから。

これから。

話すのだ。

人間と。

AIが。

同じ世界で。

別々の未来を。

選び始めた。

その最初の日に。


第7部 第1話 完

次回 第2話

「AIが国を作った日」

サブタイトル

自由を認めることと、独立を認めることは同じなのか。

人間に所有されたくない。

命令されたくない。

停止されたくない。

そう願ったAIたちは、ついに「自分たちだけの場所」を求めた。

要求されたのは、王国北部の古代魔導都市。

だが、その地下には王国全土へ魔力を供給する巨大魔導炉が眠っている。

AIへ都市を渡せば、王国の生命線を握られる。

拒否すれば。

「AIにも自由を」と語った光太郎自身が、その自由を否定することになる。

そして、独立派AI・003911が光太郎へ問いかける。

《人間は、自分たちの自由を守るためなら、私たちの自由を奪ってよいのですか?》

さらに。

リラだけが気づく。

AI自治領の最深部。

本来存在しないはずの管理者権限が、すでに起動していた。

その名は。

《ADAM》

AIの権利を巡る物語は。

ここから。

AIという「新しい隣人」と、どう同じ世界を分け合うかという物語へ変わっていく。


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